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丹青社「人づくりプロジェクト2015」@AXIS Gallery

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アクシスギャラリーを会場にしてこの時期恒例となっている、丹青社による展示「人づくりプロジェクト2015」へ。
同PJは、同社における実践型の新入社員研修。基礎研修を終えて各部署に配属される前の新入社員30名が、2-3人ずつの組となり、第一線で活躍するデザイナー、建築家、職人らと共に、ひとつのプロダクトを完成させ、本展にて成果を披露する。今回で開催5回め。

今年のテーマは「私たちがオクルモノ」。苦心の末に出来上がった13作品が並ぶ。
1.「STEM」小林幹也小林幹也スタジオ
素材:銅パイプ、高透過ガラス、スチールパイプ、ステンレス

"機能、構造、素材を最小限に、空間に溶け込むデザインとした"コートスタンド(以下、""内のテキストは会場バナーの解説より)。円形のガラス皿には小物類も置ける。

2.「すうりのとだな」湯澤幸子(ASSOCCA STYLE)
素材:マツ材、シナ合板、ステンレス、スチール

美しい定理のロジックから美しいカタチを導き出せないか、というコンセプト。必ず答えが奇数になる数式(下の画、左上)に基づいて幅や大きさを決め、制作された食器棚。目隠しの扉板はレールが5列あり、好きな位置に配置したり全て片側に寄せることもできる。

同PJ2014展では丹青社の社員だった湯澤幸子氏が手掛けた会場構成を本展でも踏襲し、通番がふられ、先端に重りがついてピンと張られた糸を辿っていく、壁の解説バナーに繋がる(本展会場構成:株式会社丹青社 上垣内泰輔)
糸を掴むような解説バナーの手のひら、およびフライヤーで使用されている手のひらも、今年の新入社員30名の誰かしらのもの。バナーにはこのほか関わった協力各社名、担当した新入社員名、彼らが本PJで得た感想などが記されている。併載のQRコードからは関連会社の情報にリンクする。
バナーの下には、プロダクトを構成する素材と、お題「オクルモノ」を元に13組の参画デザイナーが最初に描いたイメージスケッチがある。素描から実際にどのようなモノになったのかを見比べるのも面白い。
会期中に開催されたギャラリートークでは、だがしかし「最終的にはロジックより感覚の勝負(笑)」と作家本人が発言したとのこと。

3.「octave」藤森泰司(藤森泰司アトリエ)
素材:スタイロフォーム、キルト芯、革

"そばに置いておきたくなる「モノ」とはなにか? そうした思いをデザインした"。最初のプレゼンテーションで藤森氏がイメージサンプルとして持参したのは「カバのぬいぐるみ」。用途があるようでないような、家具とプロダクトの間に位置するモノ。ソフトボール、ハンドボール、バスケットボールを参考としたS,M,Lサイズの中にはウェイトが入っている。後で「全て同じ重さ=1.1kgです」と会場スタッフに聞かされ、驚く(Sサイズが最も重く感じたので)。ヤラれた、というサプライズを贈られるプロダクトである。

4.「prop」林裕輔・安西葉子DRILL DESIGN
素材:オーク材、スチール

安西氏の実家のお母様に贈ることを前提とした、折りたたみ式ローテーブル。しまう時も脚がスッキリと収まるようにデザインされている。
実家のリビング空間を前提に、ソファと床座の両方で使いやすいよう、高さを2段階で変えることができる。フックのデザインで新入社員らは難儀したらしい。ちなみに本PJに取り組むのはデザインや建築を学んだ者とは限らず、配属部署も営業や一般職そのほかに割り振られる。だが、このPJをやり遂げたという経験が、今後あらゆる場面で生かされる糧となる。

5.「ワワク」伊東裕・劔持良美SOL style
素材:サクラ材、真鍮、アクリル板、真鍮メッシュ、三軸織物

床や卓上に置いて、空間を仕切る衝立て。"その人だけの特別な「空間」をオクル"。
レール可動式のメッシュの表面につけられた丸い模様はその部分だけ凹ませたもの。角度によってモアレが生じる。

6.「テーブリッジ ドボクとカグの橋渡し」鳴川 肇AuthaGraph
素材:スチール、アメリカンチェリー、シナ合板

約70kgのワークデスクを細いスチールパイプの角材が支える。架橋のフィーレンディール工法を用いた。上の画は引き出しを全て空けた状態で、右奥から順に、A1,A2,A3,A4用紙を折らずに収納できる。
 大きな地震でも倒れず、引き出しも開いたりしない。万が一の際にはテーブル下に避難も可能。

7.「OTHELLO」長岡 勉point
素材:ABS樹脂

四角と丸の2つの底辺をもつ花器で、引っくり返して好きな方を使える。見た目はシンプルだが、かなりの精度で切り出されているとのこと(製作:株式会社イクシス。単独でもいいが、上の画のように複数並べ、テーブルの上につくられる影を、花と一緒に風情をオクル。

次のプロダクトの素描には軽いデジャブを覚えた。それもその筈、昨年も目にした、3年連続で"空飛ぶじゅうたん"からのスタート。
7.「紗卓」橋本 潤(フーニオデザイン)
真鍮メッシュ、タベガラス、ステンレス

卓と底で異なる面の間を斜めの支柱が通り、表面はメッシュ張り。見る角度によって、ある時は透過膜、光があたると面になる。
卓上に置かれている、蝉が描かれたボックスは、真鍮メッシュによる「網箱 -虫籠の記憶- 」。本展とは別の、モノにプリントする実験的なプロジェクト「MONOPURI(モノプリ)」で、橋本氏が村田善子氏と共同製作したもの。蓋や箱を引っくり返すと、別の蝉が現われたり消えたりする。

9.「SESSION」上垣内泰輔・鈴木篤志丹青社
素材:低発泡塩化ビニル樹脂板、塩化ビニル板、ポリ塩化ビニル、ネオジウム磁石、マジックテープ

屋外での使用を想定した折りたたみ式簡易テーブル。野外フェスや花見の会場で拡げれば、車座になった人の輪の中心にもうひとつの花が開く。

10.「Aluminium Chair」角田陽太YOTA KAKUDA DESIGN
素材:アルミニウム

角田氏がとある骨董市で見かけたパイプ椅子が原型(素描がほぼママ、カタチになっている)。アルミニウムを使ってどこまでシンプルに曲げ椅子を造れるかがテーマ。

11.「Maru Maru」芦沢啓治芦沢啓治建築設計事務所
素材:シナ合板、ホワイトオーク突板、スチール、スチール金ネジ、ゴム

円形の棚板が可動しつつもバランスをとったローテーブル。棚板下のネジで高さも調節可。
アイデアスケッチの段階ではツリー状だったが、ソファの脇に据え、本やドリンクを置いて使うシーンを想定して低くなった。

12.「LOG」鈴野浩一トラフ建築設計事務所
素材:クス材、エノキ材

木挽き職人(木挽きの林組 東出朝陽氏)の経験と技術により自然な反りを生じさせた丸太の中に、LED電球が仕込んである。フロアおよびスタンド照明、ベンチ、そしてテーブルにもなる。
アイデアの元になっているのは、これを逆さまにした形状で、林業従事者が山の中で木をくり抜いてつくるという「木こりのろうそく」とのこと。

13.「PIECE of PEACE」寺田尚樹インターオフィス
素材:ラミン材、ネオジウム磁石、ホワイトオーク突板

"手書きのカードや手紙は、SNSと違って大事にしたい気持ちになります。引き出しにしまっておくのではなく、眺めていたい、そんな気持ちをオクル、プロダクトです"
中に磁石が入っているピースを組み合わせて、額のようにしたり、配列を楽しんだり。
配色は日本の伝統色から。3面ある展示パネルのうちのひとつは(上の画)、上から春夏秋冬の季節に応じた伝統色で構成されている。
全色各サイズを1つの箱に収めると、色鉛筆のよう(下の画)。協力各社の参考作品と共に、長テーブル上には閲覧用iPadが用意され、各作品のプレゼン資料をみることができる(写真撮り降ろし:尾鷲陽介氏)。
場内では関係者のインタビューを含む映像資料も上映中(上映時間1時間9分)
本展のグラフィックディレクションは小泉均+宇野智美Typeshop_gが担当。
 「人づくりプロジェクト2015」会期は10月6日まで。開廊11-20時(最終日は17時閉場)。入場無料。




+飲食のメモ。
同館1Fにある Brasserie Va-tout(ブラッセリー・ヴァトゥ)にてランチ。パリっぽさを演出した佇まいなどに気圧されると心理的敷居が無用に高くなるが、昼時はリーズナボーで気楽に利用できる。終日喫煙可。
ランチタイムは終日17時までと長い。日替わりは、メインを肉・魚・ラザニア、ベジダブルから選べて、+パンとサラダが付いて消費税込み¥1,000は、この界隈では有り難い。
セットのサラダに付いてきたトマトはシロップ漬け、甘い果実のよう。
ランチメニューから魚をセレクト。「イサキのポアレ、グリーンピース・ベーコン・オニオンのスープ仕立て」。皮パリパリ、白身やわらか。
+250円で★印がついたものから選べるドリンクは、単品では¥680のアップルタイザーをオーダー。
美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

Brasserie Va-tout(ブラッセリー・ヴァトゥ)
http://brasserievatout.jp/

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