「ブルーボトルコーヒー 清澄白河 ロースタリー&カフェ」にて、今月17日から約1か月の期間限定で開催される「Vitra x Blue Bottle Coffee」の内覧会へ。
今回の展示イベント期間中に限り、オープン時より店舗内で使われていたテーブルやチェアが、スイスの家具メーカーVitra社(ヴィトラ)の新作家具と入れ替わる。会場構成は同店の設計者でもあるスキーマ建築計画の長坂常氏。
駐車場側の壁面には、今回のイベントのためにビジュアルも描き加えられた。
云わずと知れた同店は、米国オークランド生まれのブルーボトルコーヒーの日本進出第1号店。今年2月のオープン以来、行列のできるサードウェーブコーヒーの筆頭として話題を集め、今でも休日になると入店待ちの行列ができる。イベント前日の内覧会(事前予約制)では待ち時間なし。ありがたし。
入口の右脇には1m×1mのパレットが積まれ、Vitraのコレクションより、ブルーボトルコヒーのブルーでコーディネートされたチェアが展示されている(木製パレットについては後述)。
倉庫だった建物をコンバージョンして、1階がカフェ、焙煎所、突き当たりは生豆の袋などが積まれた倉庫となっている。空間を隔てる間仕切りはなく、完全に丸見えの状態。2階はスタッフオンリーのオフィスおよびキッチンが置かれている。
コーヒー豆の状態をスタッフが確認するカッピングルームとして、床から天井まで続くガラスの大扉で仕切られていた空間が様変わり。Vitraが取り扱うパントンチェア、ハル チューブ、イームズエレファント、ティップトンが、既存のLSL(: Laminated Strand Lumber、厨房カウンターの前板にも使われいる、米国産の木質ボード)の上に敷かれたパレットをステージにして並ぶ。さらにその上がイベント期間限定のカフェスペースとなっている。昇降用のスチール階段も向かって左脇に設置された。
仮設のカフェスペースからの眺め。今春のミラノサローネで発表された最新コレクション「ベルヴィルファミリー(Belleville Familly)」(ベルヴィルチェア・アームチェア、テーブル)が配置されている。コレクションのデザインを担当したのは、ロナン&エルワン・ブルック(Ronan & Erwan Bouroullec)のふたり。パリ市内北東部の高台にある、フランス語で"美しい街"を意味するBelleville地区からその名がとられた。同兄弟がデザインスタジオを構える地区であり、クリエイティブな人々が集まるエリアとして知られているとのこと。
ベルヴィルテーブル(Belleville Table)は天板の素材が2種、かたちは円と角、角形は小さなビストロテーブルから大きめのダイニングと数種類のサイズあり。用途に応じて選べる。チェア(Billeville chair)のシートシェルも、成形合板、ポリプロピレン、レザー張り、ファブリック張りから選ぶことができる。国内でのお披露目として、ただ並べて終わるのではなく、カフェ空間で実際に使ってもらい、使うシーンのイメージをさまざまに膨らませてほしいと実現したのが今回のコラボイベント。
これらのコレクションが発表されたミラノサローネのVitra会場を手掛けたのが、ブルーボトルコーヒー清澄白河店、続く表参道店の設計を担当し、米国ニューヨーク市ブルックリン地区ほかでも新店が進行中という、スキーマ建築計画代表の長坂常氏。16日の夜には、Vitraホームコレクションのチェアに腰掛けながら、長坂氏のレクチャーを聴くという趣向のトークイベントも開催された(進行役は、ミラノ会場やスキーマ建築計画のリノベーション住宅も取材で訪れたことのあるフリーライターの猪飼尚司氏)。
トークイベント参加者にはブルーボトルコーヒーのホットがふるまわれた。ごちそうさまでした。
Vitraが今年のミラノサローネのテーマに掲げたのが、反復を意味する"repeat"から派生した"リピテーション"。そこで、長坂氏が商品のステージとして考えたのが、入店前にも目にした、木製の正方形荷役用パレット(日本で使われている1m×1mのサイズが国際規格と思いきや、現地のパレットは長方形だったため、オリジナルで製作している)。正方形にこだわったのは、長方形のステージでは見せたいプロダクトの並びに制約をかけ、見る側の視点や場内の動線に方向性が生まれてしまうため。「プロダクトから受け取る印象は、人によって異なるのが自然。見せ方を一定にせず、プロダクトを眺める方向を来場者に自由に選択させ、なおかつどこからでも入ってきやすい会場にしたかった」と長坂氏。
Vitra at Salone del Mobile 2015(再生時間 4分41秒)
見本市での展示では、自社ブースを壁で囲いこみ、来場者には自社の製品にのみ集中してもらうのがセオリーだが、Vitraのブースは長坂氏の意向を反映して壁をたてなかった(Vitra社による会場写真付き英文ニュース.pdf)。これにより、とても大きな"透け"、"抜け"感が生まれたものの、他社の出展ブースやロゴまで見渡せてしまう事態に。だが逆に、現地では新鮮と受け止められて話題を集め、高評価にも繋がったらしい。「広場のよう」とも形容されたそうだが、長坂氏としては広場をイメージしたものではなく、あくまで「ウエルカムな空間にしたかったから」。
トークの後半は、長坂氏が今年手掛けた住宅リノベ事例《つつじが丘の家》と《鳩ヶ谷の家》に関するレクチャー。どちらも必要な耐震補強を施しながら、住まい手にとって心地良い空間とはなにかを考えて設計されている。「細かなシーンを想定して設計すると、却って空間が複雑化して使いづらくなる。空間とは生長・成長していくものであり、初めから完成形は想定しない。建築家として何か"きっかけ"をつくってやり、使い手の自由度を拡げられるようにしている」という言葉は、今回のミラノでの会場構成に通じるものである。
展示イベント「Vitra x Blue Bottle Coffee」は11月23日まで。期間中に会場で撮影した「ここちよい時間」の写真にハッシュタグを付けて投稿すると、「いいね!」の獲得数を参考に選出された上位3名にスペシャルギフトを贈呈する「インスタグラムフォトコンテスト#VitraxBlueBottleCoffee」も実施中(詳細:Vitra x Blue Bottle Coffee Facebook)。
Vitra 公式サイト
www.vitra.com/
Vitra 公式サイト
www.vitra.com/
ブルーボトルコーヒー 清澄白河 ロースタリー&カフェ
https://bluebottlecoffee.jp/cafes/kiyosumi
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