奈良に本社をおく株式会社中川政七商店が、来年で創業三百周年を迎えるにあたり、11日に都内で記者会見をひらき、複数展開する記念事業や今後のビジョンを発表した(同社公式サイト内でも同日にリリースを配信)。
三百周年記念オブジェ「新旧の鹿」に挟まれ、フォトセッションに応じる中川政七商店代表取締役 第十三代 中川淳氏
質疑応答を含めて約1時間におよんだ記者会見の席上、中川社長は日本の工芸の危機的状況を淡々と訴えた。「日本の工芸を元気にする!」というスローガンのもと、職人たちの経済的自立、彼らの家族も含めてものづくりへの誇りを取り戻すこと、このふたつを主な目標に、同社の取り組みと現状報告、今後強化していく業界特化型の経営コンサル業についても説明、メディア各社からの質問にも自ら応じた。
同社を牽引する中川淳氏は1974年生まれ、京都大学法学部卒。2008年に第十三代社長に就任後、SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)事業を推し進める。現在は6ブランド、3業態、全国に43店舗を展開(詳細:同社サイト会社概要、沿革)。今年2月の売上高は42億8千万円を計上している。
建築関連としては、奈良市東九条町に2010年に竣工した《中川政七商店新社屋》は吉村靖孝建築設計事務所の設計、2年後に同事務所の設計で《同 旧社屋増築棟》を拡充したのも記憶に新しい。
建築関連としては、奈良市東九条町に2010年に竣工した《中川政七商店新社屋》は吉村靖孝建築設計事務所の設計、2年後に同事務所の設計で《同 旧社屋増築棟》を拡充したのも記憶に新しい。
中川政七商店の創業は1716年(享保元年)、徳川吉宗が江戸幕府第八代将軍の座に就いた年である。初代中屋喜兵衛が、当時の武士が着用した裃として使われていた麻の奈良晒(ならざらし)の商いを始めたことに端を発する(詳細:同社サイト〜歴史/上の展示は製造卸業に転換した明治以降の同社の様子を伝える写真)。
三周年記念制作物および進行中のプロジェクトは以下の通り。
1.水野学氏(good design campany)がデザインした三百周年記念ロゴ(記者会見バックパネルでも使用)
2.同記念オブジェ「新旧の鹿」披露(後述)
3.同記念イベント「第日本市博覧会」を来年1月13日から東京でスタート、岩手、長崎、新潟、奈良に巡回。展示企画の一例:松岡正剛 編集工学研究所所長監修による「工芸クロニクル屏風」
4.同第一回東京博覧会にて、西畠清順氏と立ち上げる植物ブランド「花園樹斎」を披露、限定ショップ出店
5.スキーマ建築計画/長坂常氏設計による《中川政七商店 表参道店》が来年1月13日にオープン
6.「日本工芸板モノポリー」や「新郷土玩具」などの三百周年記念商品を販売予定
1.水野学氏(good design campany)がデザインした三百周年記念ロゴ(記者会見バックパネルでも使用)
2.同記念オブジェ「新旧の鹿」披露(後述)
3.同記念イベント「第日本市博覧会」を来年1月13日から東京でスタート、岩手、長崎、新潟、奈良に巡回。展示企画の一例:松岡正剛 編集工学研究所所長監修による「工芸クロニクル屏風」
4.同第一回東京博覧会にて、西畠清順氏と立ち上げる植物ブランド「花園樹斎」を披露、限定ショップ出店
5.スキーマ建築計画/長坂常氏設計による《中川政七商店 表参道店》が来年1月13日にオープン
6.「日本工芸板モノポリー」や「新郷土玩具」などの三百周年記念商品を販売予定
西畠清順氏は今夏、銀座で開催された「ウルトラ植物博覧会」が話題を集めたプラントハンター。"お持ち帰り"したくなるような極上の植物との一期一会を創出するとのこと。
中川社長の会見に先立って流れたムービーで、制作過程の一部がラッシュで映し出された、三百周年記念オブジェ「新旧の鹿」。モデルは京都《細見美術館》所蔵の「金銅春日神鹿御正体」。中川政七商店が掲げる「日本文化の"温故知新"の精神」をもって、数々の「新旧の対比」をテーマに制作された。
中川社長の会見に先立って流れたムービーで、制作過程の一部がラッシュで映し出された、三百周年記念オブジェ「新旧の鹿」。モデルは京都《細見美術館》所蔵の「金銅春日神鹿御正体」。中川政七商店が掲げる「日本文化の"温故知新"の精神」をもって、数々の「新旧の対比」をテーマに制作された。
鉄骨とミクストメディアを素材に用いた「新」の鹿。
彫刻家の名和晃平氏がディレクターを務める「SANDWITCH(サンドイッチ)」による制作。「旧」の鹿をスキャンしたデータをもとに造形している。
彫刻家の名和晃平氏がディレクターを務める「SANDWITCH(サンドイッチ)」による制作。「旧」の鹿をスキャンしたデータをもとに造形している。
一刀彫による「旧」の鹿。
そのほか象牙べっ甲細工、漆芸鞍螺など、奈良の伝統工芸の技が結集。手績み手織り麻はもちろん中川政七商店のもの。
そのほか象牙べっ甲細工、漆芸鞍螺など、奈良の伝統工芸の技が結集。手績み手織り麻はもちろん中川政七商店のもの。
三百周年記念オブジェ「新旧の鹿」は、前述「大日本市博覧会」の5会場でも展示される。
中川政七商店
http://www.yu-nakagawa.co.jp/
中川政七商店
http://www.yu-nakagawa.co.jp/
+飲食のメモ。
会見後の懇談会で供された軽食とドリンクをおいしくいただいたが、今回は中川政七商店に関係する飲食情報を付加したい。昨年2月に「しあわせ廻廊 なら瑠璃絵」を観に行った際、[遊 中川本店]に立ち寄り、併設の[中川政七茶房]での飲食記録をアーカイブとして(2014年3月末より茶房は一時休業中 / 同社リリース)。
会見後の懇談会で供された軽食とドリンクをおいしくいただいたが、今回は中川政七商店に関係する飲食情報を付加したい。昨年2月に「しあわせ廻廊 なら瑠璃絵」を観に行った際、[遊 中川本店]に立ち寄り、併設の[中川政七茶房]での飲食記録をアーカイブとして(2014年3月末より茶房は一時休業中 / 同社リリース)。
[遊 中川本店]の営業時間は10時から18時半(奈良の店じまいは早い)。
店舗設計:宮澤一彦(宮澤一彦建築設計事務所)
アートディレクター:水野学(good design campany)
VMD(Visual Merchandising):山田遊(Method)
リニューアルオープン:2013年4月
アートディレクター:水野学(good design campany)
VMD(Visual Merchandising):山田遊(Method)
リニューアルオープン:2013年4月
物販販売店舗の奥で営業していた[中川政七茶房]は、平日火曜の昼でもランチ時は順番待ちに(それゆえか、地元奈良でさえ、中川政七商店よりも[遊 中川]という名の方が知られているとのこと:会見時の中川社長談)。
さらに奥にある座敷席の人気が高く、土間空間の席であれば待ち時間がなかったため、暫しの間、貸し切り気分。
麻のお手拭きを使っていると、座敷からの庭の眺めが素敵らしいらしく、感嘆の声が何度か洩れ聞こえた。
超・濃厚「栗のお汁粉」とお茶のセット(消費税込¥800+¥450)。身体もあったまって、とっても美味しゅうございました。ごちそうさまでした。
この1ヶ月半後に一時休業になっていたとは知らなんだ。営業再開を願うばかりなり。
[遊 中川 本店]
www.yu-nakagawa.co.jp/p/honten
この1ヶ月半後に一時休業になっていたとは知らなんだ。営業再開を願うばかりなり。
[遊 中川 本店]
www.yu-nakagawa.co.jp/p/honten