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「プラド美術館展 スペイン宮廷 美への情熱」@三菱一号館美術館

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丸の内2丁目の《三菱一号館美術館》で先月から始まっている「プラド美術館展 スペイン宮廷 美への情熱」特別内覧会に参加(注.11月11日内覧会参加者のみ、場内撮影およびネット掲出が特別に許可された。通常は記念撮影スポットを除き不可)
本展は三菱一号館美術館開館5周年記念展であると同時に、スペイン国立プラド美術館で2013年に開催され、翌年にバルセロナに巡回した、プラド美術館所蔵品による展覧会「La belleza encerrada(Captive Beauty)」を再構成したもの。内覧会に出席した同館の担当学芸員は「小さな作品を観賞する空間として、本国の2館よりもむしろ適しているのでは」と胸を張る。

本展の見どころは、スペイン三大画家といわれるエル・グレコ、ベラスケス、ゴヤの作品が見られるほか、これまで真筆が20点しか確認されていないヒエロニムス・ボス(1450年頃-1516年)の絵画の国内初展示も話題。102作品中、輸送が難しい板絵が35点、銅板15点を含んでいるのも異例とのこと。そして"キャブネット・ペインティング"(後述)と呼ばれるサイズの小さな作品が多いのが特徴だ。
上の画・右側:ルイス・デ・モラーレス《聖母子》、その奥にエル・グレコ《受胎告知》の展示。
本展では、102の作品ごとに添えられたキャプションの情報が厚いのも"見どころ"のひとつ。絵の来歴や、前述の通り何の素材に描かれているか、作家の生年・没年などが記されている。同等の情報量の展示リストを会場入口でゲットしてから観るべし。
例えば、上の画・左から、ドメニコ/ティントレット《胸をはだける婦人》、グイド・レーニ《花をもつ若い女》、ディエゴ・ベラスケス《フランシスコ・バチェーコ》の3点はいずれも王室コレクションからプラドの所蔵になった。
うち、ベラスケス以外の2点は、前述"キャビネット・ペインティング"に分類される絵画である。所有者が私的にコレクションし、自邸の1室のような小規模な空間に、時にはその手にとって、筆のタッチや質感などをきわめて近い距離から観賞していたと思われる。
上の画・左:マドリード不詳の画家による作品《スペイン王妃、マリアナ・デ・アウストリア》(油彩、銅板)。この小型肖像画は 7.28×5.32cm というサイズ。

最も広い中盤の展示室には大きな作品も数点あり。下の画は、フランドル出身の画家コルネリス・デ・フォスによる《アポロンと大蛇ピュトン》(油彩,カンヴァス 188×265cm)
解説によれば、トーレ・デ・ラ・パラーダ(Torre de la Parada : 狩猟休憩塔)の一室を飾っていたもので、どんな絵を飾るかなど全体の監修を任されていたのがペーテル・パウル・ルーベンス(1577-1640年)。会場には装飾用下絵(ボツェット)も展示されており、いわばbefore/afterを比較できる。なお、同塔のための装飾用下絵は上の画のほか2点展示中、それぞれの来歴は異なる。この種の下絵は貴族階級が私蔵する場合が多いとのこと。
キャビネット・ペインティングの主題は、静物画やいわゆる"風俗画"と呼ばれるものが多い。左から銅板、カンヴァス、板に描かれた油彩。何に描いたかによって発色や筆のタッチの味わいが微妙に異なる。これが、デジタル処理あるいは紙面で再現されると、のっぺりと均等化してしまう(図録は部分拡大が見られるという楽しみもあるが)。関係者いわく、美は絵の大小で決まるものではない。本展を機に美とは何かを考えてみてほしいとのこと。
<IV 17世紀の主題:現実と生活の詩情>の展示室、マントルピースの上の作品が、本展図録の表紙に使われている、現存するベラスケス作品では珍しいという風景画《ローマ、ヴィラ・メディチの庭園》。
ピーテル・ブリューゲル(2世)(1564-1637/38年)《バベルの塔の建設》。父親が描いた同名作品(ウィーン美術史美術館蔵)の同題異作。
3階から2階に降り、二重のガラス戸の向こうに、フランシスコ・バイェウ・イ・スビアス《オリュンポス、巨人族の戦い》が見えた時は気分が高揚した。マドリード王宮 王太子夫妻の間の前室における天井フラスコ画のための下絵=ボツェットというサイズながら。
中央:アントン・ラファエル・メングス《マリア・ルイサ・デ・パルマ》は、大型肖像画のための習作と思われる作品。本展フライヤーに使われている絵画でもあり、成る程、綺麗な女性だなで観賞を終えるところ、左下にゴヤが描いた"問題作"《カルロス4世の家族》が添えられていたので、後の王妃と同一人物と判る。
額縁だけ見てもいろいろと面白い。2点ともビセンテ・ロペス・ポルターニャ画のボツェットで、某伯爵未亡人からプラドに寄贈されたもの。
期待した"おどろおどろ系"はなかったが、ゴヤ(本名はフランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテスと長い)の6作品のために1室があてられている。
主な出展作品の主題あるいは隠しテーマになっている、欧州キリスト教観については、展示の途中に用意されているタッチパネル式資料が助けになってくれる。

三菱一号館美術館 開館5周年記念「プラド美術館展 スペイン宮廷 美への情熱」は来年1月31日まで。開館は10-18時(金曜、会期最終週平日は20時まで)。12月31日と1月1日、毎週月曜休館(但し12月28日、1月25日は開館)。詳細は公式サイトで確認を。

三菱一号館美術館
http://mimt.jp/




+飲食のメモ。
丸の内仲通りに店を構える[パリアッチョ]はKIWAグループが経営するトラットリアで、青山の[トラットリア・フィレンツェ・サンタマリア]同様にリーズナブル。
休日でも¥1,000代のランチが8種類ほどから選べる。下の画は過日土曜日のオーダー。
野菜スープとパンと「いろいろ部位の肉と秋キャベツのビアンコラグーパスタ」。食後のドリンクは付けず、これで消費税込み¥1,000なり。
いろいろ部位にはトリッパも入ってコスパ高し。美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

[パリアッチョ 丸の内仲通り店]
http://www.kiwa-group.co.jp/restaurant/100/


なお、三菱一号館ミュージアムカフェ「Café 1894」、および敷地内に隣接する[MIKUNI MARUNOUCHI ]では、プラド美術館展会期中のタイアップまたはコラボメニューを用意している。王様的お値段を覚悟すべし。

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