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真鍮建築金物ブランド「MATUREWARE by FUTAGAMI」商品展示説明会

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無垢の真鍮の建築金物ブランド MATUREWARE by FUTAGAMI(以下、MATUREWARE)の展示説明会を見学。
MATUREWAREは、1897年(明治30年)創業の富山県高岡市の真鍮鋳物メーカー(株)二上が2009年に立ち上げた、真鍮の生活用品ブランド FUTAGAMIから派生した新ブランド。 ディレクターはFUTAGAMI出身で鋳物の性質についてよく知るデザイナー山崎義樹氏BLOCK DESIGN、監修はOji & Designの大治将典氏が務める。

FUTAGAMIが製造・販売するプロダクトは、輪灯(りんとう)と呼ばれる仏具専用の真鍮灯火具の製造分野で培ってきた鋳造技術を活かしたもの。栓抜き、ステーショナリー、箸置きやカトラリー、ランプシェードなど、現代空間にマッチした製品を提供してきた。
真鍮の素地=鋳肌(いはだ)の美しさを生かし、使ってもらえる領域を拡げようと、建築金物(hardware)に特化して展開するのがMATUREWAREである。ブランド名は"熟成した"を意味するmature"に"ware"を掛け合わせた造語で、使い込んでいくと経年変化で味が出てくる真鍮製品が、使い手に長く愛され、"熟成する金物"であれという願いが込められている(鋳肌の概要は、会場で撮影した上の画から判読できるが、本文は後述)

会場は東神田1丁目にある[組む 東京]の2階。今春のオープン当初から、FUTAGAMIおよび MATUREWAREの商品群を1階の店舗で取り扱っているが、2階はこのようなイベントや企画展などに使われている。(参考:当ブログ/オープニングの様子)

5日の建築関係者向け説明会には、(株)二上の代表取締役二上利博氏と、デザイナーの山崎氏も会場に詰め、直に説明を聞くことができた。

展開中の建築金物は、ネームプレート、レバーハンドル、スイッチパネル、棚受けの4アイテム。
上の画、左側:鋳肌仕上げのネームプレート(台座は3種類、書体は明朝とゴシックから、文字加工は浮き文字と彫り文字から選べる)。右側:棚受け3種(一番上の穴あきタイプは別売りの真鍮パイプを通した状態、棚板は販売価格に含まれない)。サイズやオプションなどの詳細は MATUREWARE公式サイト参照を。
各種スイッチパネルとレバーハンドル。スイッチはトグルもネジも真鍮鋳物。ネジ頭はプラスではなくマイナスにこだわった。これら真鍮鋳物のプロダクトはどれも"同じ色"に見えたが、聞けば、最適な鋳造方法によって8種類ほどの色味の幅が実は存在するとのこと。全く判らないようにつくるのが、驚きべきニッポンの製造技術である。

会場には、真鍮鋳物の製造過程を説明する資料として、貴重な砂型の現物も持ち込まれた。2つで25kgもある。
18/1000という金属の収縮率を計算して造られた原型を、湯道(ゆみち)や注ぎ穴との距離を考えたうえで、型枠の中にレイアウトし、珪砂に粘土分であるベントナイトと水を加えて
混練した鋳造用の砂を、職人が勘所だけで手作業で詰め込んでいく。完成した砂型の空洞に約1100℃の真鍮が流し込まれ、その際に砂型の表面が高温で焼け、生じる砂目が鋳肌となる。FUTAGAMIではこれを敢えて研磨せずに、自然な美しさとして生かしている。

ネームプレートでは、真鍮鋳肌のほか、表面に酸化処理を施した「黒染め」もあり。会場[組む 東京]の1階エントランスにも展示会用に表示されていた。
今のところはネームプレート、レバーハンドル、スイッチパネル、棚受けの計4つのアイテムだが、玄関から入って家の中に一歩ずつ進んでいくのと同じイメージで、さらなるアイテムを今後追加予定とのこと。

MATUREWARE by FUTAGAMI
www.matureware.jp/

組む 東京
www.kumu-tokyo.jp/




+飲食のメモ。
前回はパイセットをいただいた近所のカフェ[イズマイ]にて「珈琲カキ氷」を初オーダー(消費税込¥700)。今夏最後のかき氷になるかもしれぬと思いながら。

どっかりと鎮座ましますミルクアイスに、糖分なしでほろ苦い濃ぃいコーヒーのかき氷がかかったオトナの味。シロップはお好みで(2回ほどかけた)
美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

イズマイ
http://ismy.jp/

公式facebook
https://www.facebook.com/ismy.bakurocho

前川國男設計《埼玉会館》建築セミナー&ミニコンサート

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前川國男の設計で、1966年(昭和41)に大小2つのホールを有してオープンした《埼玉会館》。施設の老朽化に伴い、今年10月1日から1年半の間、大規模な改修工事に入り、休館となる。その前に、"木のホール"と称される大ホールを使って「ホールの響き体感・建築セミナー&ミニコンサート」が5日土曜日に無料で開催された(要事前申し込み)
立地はJR浦和駅西口から歩いて5-6分、駅前の商業施設コルソ館内を通り抜け、浦和レッズの赤い応援旗を左右にはためくさくら草通りをそのまま真っすぐ進むと、目の前に茶色(以下、配布資料表記に準じて黄褐色)の建物が現われる。

今回のイベントは、昨年9月に開催された建築セミナー「埼玉会館の建築-Architecture Art-」に続く第二弾(主催:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団)。前回「埼玉会館を通して前川建築を読み解く〜打ち込みタイルとエスプラナード〜」と題して講演した、現・前川建築設計事務所の橋本功代表取締役が連続登壇。子どもでも楽しめた音響実験に加え、建物のパンフレットと講演資料も配布されるなど、手厚い内容であった(以下、当日の見聞メモを加えて備忘録とする)
講演によれば、建物へのアプローチ動線は、この桜草通り側(東)からと、県庁通り(南、後述)からの2つ用意されている。
建物に沿って北側に進むと、今年3月末で閉館した《県立浦和図書館》の手前に幅の広い階段があり、昇ると、屋上庭園[エスプラナード2]が広がり、左手の低層棟が大ホール、右手奥の高い建物が管理棟。
後に入る大ホールホワイエ空間に掲示されていた資料、平面図と立面図を参考まで。

後記の画で判るが、大ホール、小ホールなど主要施設の60%は地下に潜っている。小ホールは[エスプラナード2]からは塀越しに屋根がかろうじて見えるのみ。敷地内の高低差を活かした2つの[エスプラナード]を踏まえて、メインとなる大ホールでのイベント開催前後の動線計画も考えられている。
なお、"エスプラナード"とは、スペイン語とフランス語を組み合わせた造語で、広場、湖畔の散策路の意。もうひとつの[エスプラナード1]は2棟の間にある階段を下った下、県庁通りからのアプローチ側にある。大ホールへのアクセスはそちらがいわば"正式"。
コンクリート+陶器製のベンチも前川國男デザイン。上の画の奥には同仕様によるテーブルを備えた屋外喫煙スペースもあり、約50年前の時代性を感じる。
エスプラナードに敷き詰められた煉瓦(資料にはタイルとの表記も)と、円形の植栽ゾーンとの取り合い(=せり上がっている部分)が実に細やか。上から俯瞰すると、花が咲いたような絵柄が浮かび上がるらしい。この模様は、足下に位置する館内ホワイエのフロアデザインとも連動している。
前述の階段を下り、県庁通りに向かう。階段と街路を繋ぐエクステリア、視覚障害者誘導用ブロックが黄色ではなく、色調を合わせているのも、おそらく指定と思われる。
建物を印象づけている黄褐色の外装も前川作品ならでは。この日のセミナーでも説明があったが、自然な焼き色を残したタイルで、施工は打ち込み工法。タイルの表面ところどころに見られる小さな丸孔はその名残り。
打ち込みタイル工法はについては、同じ前川作品で2012年にリニューアルオープンした《東京都美術館》の開示資料:トビカンみどころマップの絵解き(PDF)が解りやすい。タイルの色味は1964年竣工の書店、新宿の《紀伊國屋ビル》のほうが近いか。
昔のウルトラマンに出てくる怪獣を彷彿とさせる、なにやらユーモラスな外灯だが、灯る夜間の外観はそれは美しいとのこと。
県庁通りより、[エスプラナード1]を正面に据えた位置からの大ホール棟の見上げ。下の画は同じ立ち位置からの管理棟の見上げ。
左に管理棟、右に大ホール棟。その間の階段を昇った先の空間が[エスプラナード1]、さらに大小ホールの入口であるエントランスへと続く。
道路からあえて長く、緩やかなアクセスとすることで、これからコンサートを聴こう、イベントに参加しようという気持ちを盛り上げる心理的効果を狙っているとのこと。
エントランス正面左手の当日券売場は現在は使われていない。
前川國男は内外に置かれたベンチや照明のほか、館内共有スペースのゴミ箱までデザインしている。
エントランスロビーから階段を下りると、大ホールの出入口であるホワイエに辿り着く。此の空間に至るまでのアプローチを前川國男は大事にした。公演終了後は階上のガラス扉を開放し、最大で約1,500人もの観客をそちらから館外に出すこともできる。
ちなみにエントランスから左に進むと504名収容の小ホールがあるが、大ホールの二階席と含めてこの日は見学対象外(他の団体の予約利用もアリ)で見られず。
ホワイエの天井見上げ。北側にある中庭のドライエリアから入る安定した光と相まって、美しい。
照明が埋め込まれた柱まわりの"木の胴巻き"だが、竣工時のデザインではなく、1995年の大ホール大改修の際、"木のホール"の内部空間のイメージにあわせて付加されたもの。違和感はない。
階上[エスプラナード]と連動しているという床のタイルパターン。
ガラスの観音式中扉が3カ所にアリ。
ホワイエ奥、配布資料によれば[ワインコーナー]とのこと。カウンターの裏手に男女トイレがある。
ホワイエ最深部から、フロアの見返り。
大ホール、右側の扉まわり。消火栓の色が赤ではなく、壁と同じクリームイエローで塗装されている。
開館当時は1,514人、現在は1,315人収容の大ホール(上の画はイベント終了後、1995年に取り替えられた緞帳「さくら元年彩の国」が降りた状態)
この大ホールの最大の特長は、壁から天井にかけて難然合板材で仕上げられていること。講演によれば、下地にも杉の合板を使っており(現法規では認可されない)、全てが「木」であればこそ、ホール全体がひとつの楽器であるかのような、温もりのある理想的な音響効果を実現しているとのこと(同ホールは、日本音響家協会による「音響家が選ぶ優良ホール100選」のひとつに選ばれている)
ちなみに小ホールは扇形で、左右の壁はグレー。
左右の壁面の"ひだ"も音響のための造作だが、実は左右対称ではナイ。フラッターエコー防止のため、位置を微妙にズラしている、と橋本所長が解説した際には聴衆から「ほぉぉ」と感嘆の息が。音がこもりやすい最後部の壁には、小さな穴が無数に空いた吸音板が張られている。
前川國男デザインの照明器具。
オリジナルの照明はホールの外、館内あちらこちらにも。
大ホールの外、地下2階通路の天井照明。
同地下2階、壁の窪みに埋設された照明。公共のホールでこの造作はスゴい。
右手、壁沿いの階段を上がっていくと、地下のホワイエに出る。奥はトイレ(和便器が殆どだったので、改修で洋便器を増やすのかも)
  大ホール、上手側の側面出口付近も見どころギッシリ。
モザイクの石は座席側にも貼られている。
さて、この日は前述した通り、前川事務所の橋本所長によるホール解説の後、埼玉大学管弦楽団によるミニコンサートも開催された。その間に用意された音響実験が面白かった。通常の演奏会ではありえない位置ーー客席後方、中間通路、ステージの左右端などに、トランペット、ホルン、フルート奏者が立ち、それぞれ音を出し、音の響きを比較(ステージ後方の壁にある反響板に向かって鳴らされた音を聴く機会など、今日を除いて無いだろう)。楽器から発せられた音がホール内の空気を伝わって観客の耳に届くという物理的な流れがわかるようにと、来場者には風船が1個渡され、膨らませたそれを両手で抱え、実験演奏を聴く、というスタイルをとった。手厚い。
13:30に始まったイベントは休憩を挟んで15:35に終了。その後もホールとホワイエ、そしてふだんは閉まっているドライエリアの中庭も見学用に開放された。
ホール後方、開かれた観音扉からホワイエの眺め。正面に造作シャンデリアが見える。
ディテールがわかりやすいように、上の画は露出を調整しての撮影。
同じく。1階エントランスロビーの照明(天井見上げ)
1階エントランスロビーからホワイエにはスロープでも出入りできる。奥に見えているのが中庭のドライエリア。壁はコンクリート打ち放し。
ドライエリア側のホワイエ壁面。ところどころ塗装されている。
壁取り付けの換気扇を露出させず、アクセントカラーで揃えたカバーがかかっているのがまたオシャレ。
中庭。左側が閉館中の県立浦和図書館、右側が大ホールのホアイエ。
昨年のセミナーを聴講していれば、このコンクリートの型枠についても教授があったのだろうか。
中庭にて。足下も油断ならない前川作品。
ところで、この《埼玉会館》は"二代目"である。前身は1926年(大正15)に竣工した《御成婚記念埼玉會舘》。設計は岡田新一郎(埼玉会館公式サイト〜会館の歴史・建築。公共ホールの先駆け的存在という歴史性、何よりも今ではもうつくれないという"木のホール"を、県が大事にしているのがうかがえる。

改修工事期間にも関わらず、来年3月下旬にも橋本所長が登壇しての建築セミナーが開催されると告知あり。会場は前川國男が設計した《埼玉県立歴史と民俗の博物館》講堂。詳細は財団の《埼玉会館》公式ウェブサイトで後日公示される。




+飲食のメモ。
管理棟1階にあるレストラン[シンフォニー]で昼食。
天井の仕様は当時のママと思われる。埼玉県が発表した館の改修計画予定には入っていないので、1年半後もママ残されると思いたい。
ランチはパスタセットが950円から。サラダバーとドリンク(ホットのコーヒーまたは紅茶、セルフ)、デザートバーまで付いてのお値段なので超リーズナボー。 さすが公共施設。
本日の肉または魚料理もあったが、ビーフカレーセットをオーダー。消費税込みで¥1,030とこちらもおトク。昔の洋食屋でよく見かける古風な給仕服でサーブされるのでなにやら気分も良かったです。おいしゅうございました。
コーヒーゼリーとロールケーキとプリンもいただきまして、ごちそうさまでした。
改修工事後もますますステキになって営業再開されますように。

埼玉会館
www.saf.or.jp/saitama/

「teamLab Exhibition, Walk Through the Crystal Universe」@銀座 POLA MUSEUM ANNEX

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銀座1丁目のポーラ ミュージアム アネックスにて、先月22日から開催中の「teamLab Exhibition, Walk Through the Crystal Universe」を観る。
天井から吊り下げられている光の粒は約7万4,000個のLED。来場者が手元のスマートフォン画面から好きな"宇宙"をスワイプすると、展示全体の光が反応するインタラクティブなチーム☆ラボらしい作品。

「Crystal Universe / クリスタル ユニバース βVer.」(再生時間:1分27秒、配信元:TEAMLABNET)

teanLab猪子寿之代表インタビュー動画(再生時間:2分50秒、配信元:Spotwright)

スマホ必須の表現手法は、六本木で今春開催された「六本木アートナイト2015」での展示作品「Crystal Fireworks of Wishes / 願いのクリスタル花火」と同様。
あの時は毛利庭園の池の中だったので近寄れなかったが、アップで見ると「京都土産の豆平糖みたい」というのが第一印象。

「teamLab Exhibition, Walk Through the Crystal Universe」会期は9月27日まで、会期中無休。開廊は11-20時(入場は30分前まで)、入場無料。

ポーラ ミュージアム アネックス(POLA MUSEUM ANNEX)
www.po-holdings.co.jp/m-annex/




+飲食のメモ。
近隣での食いログをリンクにて
HIGASHIYA GINZA」@同館2F
ハワイアンカジュアルレストラン「Eggs'n Things」@銀座1丁目
俺のイタリアン TOKYO」@銀座1丁目
カフェ「雪ノ下」@銀座1丁目
G.Itoya 12Fカフェ [Cafe Stylo] @銀座2丁目
CENTRE THE BAKERY」@京橋3丁目
うどんすき「美々卯」@京橋3丁目
フレンチ「La Bonne Nouvelle」@京橋2丁目

「オスカー・ニーマイヤー展」@ MOT

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同展の会場構成はSANAAが担当。同時期開催の「きかんしゃトーマス」展、同館単独の自主企画展も何かと話題で、やたら混んでいるという噂しか聞こえなかったが、夏休みが終わったせいか、平日金曜の午後はゆったりと観賞できた。会場内は数点(二川幸夫氏の写真など)を除いて撮影可。

最初の展示は建築ではなく家具。曲線が特徴的な「ロッキングチェア」(天童木工のプライベートコレクション、1974)
プロローグ会場でループ上映されている約2分強の編集動画のなかで、オスカー・ニーマイヤー(1907-2012)が「私の名は"Oscar Ribeiro de Almeida Niemeyer Soares Filho"、だが人はなぜか私のことをOscar Niemeyerと呼ぶ」と語るのを聞いて、長い本名を初めて知る人も少なくないのでは。会場中盤で上映中のドキュメンタリーによれば、オスカーの祖父は公正明大な最高裁判事、そしてメスティーソの家系で、それを生涯の誇りにしていた。 60才の時にフランスに亡命するが、故郷忘れ難く、18年後に舞い戻った生粋のリオっ子でもある。104才の生涯を閉じて約3年、日本国内では初の大回顧展である。
 

会場は7つの展示室に分かれ、本展のために制作された模型10点(模型企画・製作:野口直人建築設計事務所、同事務所のTwitterに制作・搬入の様子が掲出されている)、ニーマイヤー自身のドローイングなど9点、家具が3点、6名の写真家による大小の写真が55点、映像6点、そのほかで構成されている。
2つめの展示室、パンプーリャ・コンプレックスに建てられた作品群を含む模型5点の展示。
パンプーリャ・コンプレックスとは、当時のベロオリゾンテ市長で、後にブラジル大統領となり新首都ブラジリア構想を立ち上げるクビチェク大統領(1902-1976)の発案で、同市パンプーリャ地区の再開発エリアに建設された美術館をはじめとする作品群を指す。竣工は1943年、ブラジルが連合国陣営に加わった翌年のことである。声がかかった時、ニーマイヤーは33才。映像資料によれば「若かったので、云われるままに翌日プランを提出した」という。
1943《サンフランシスコ・デ・アシス教会》模型(縮尺1/50|MDF、紙)
ニーマイヤーが黒いペンですいすいすい〜っと描いた山なりの曲線が、合成でそのまま屋根のラインになる動画に思わず「おおっ」。構造設計はホアキム・カルドーソ。
奥の模型:1943《パンプーリャ・ヨットクラブ》(縮尺1/50|MDF、紙)
同教会の南西側の壁は、カンディド・ポルチナーリ(駐日ブラジル大使館サイトでのルビはカンジド・ポルチナリ、Candido Portinari|1903-1962)のモザイク画。同じ展示室内に、ニーマイヤーがコルビュジエと手掛ける《国連本部ビル》の模型があるが、ニューヨークに建つ同本部の内部にもポルチナリは「戦争と平和」と題した壁画を描いている。
1943《ダンスホール》模型(縮尺1/50|MDF、紙)
ニーマイヤー作品の特徴ともいうべき曲線は女性のボディラインから。女性たちへの愛の証でもある。
1943《カノアスの邸宅》模型(縮尺1/20|MDF、紙)
敷地内の巨大な岩をそのまま残して住宅とプールをつくった、ニーマイヤーの自邸である。模型を取り囲むように壁に掲示されている8点の大判写真は、ホンマタカシ氏撮影による「カノアスの邸宅」(2002)。本展ではそのほかイワン・バーンらが撮影したニーマイヤー作品も見られる。
手前:ニーマイヤー自邸の模型、奥:《国連本部ビル》模型(縮尺1/200|MDF、紙)、その後ろの写真は4点ともレオナルド・フィノッティの撮影。左3点はパンプーリャ・コンプレックスの写真(2007)、模型に隠れているのが「国連本部ビル、ニューヨーク」(2008)

第3室はブラジリアの都市計画の展示。
号令は時の大統領クビチェク、都市計画はルシオ・コスタ(1902-1998)、主要施設の設計をニーマイヤーが担当。高地を切り開き、わずか3年でイチから都市をつくりあげた。1960年に開かれ、1987年に世界遺産登録。
構造体は1960年に完成していたが、諸事情で竣工が1970年まで遅れた《ブラジリア大聖堂》の模型(縮尺1/10|木材)。
「アウヴォラーダ宮(大統領官邸)の柱」模型(縮尺1/2.67|木材)
解説パネルに付いていたニーマイヤーの素描によれば、この柱のルーツはギリシャ建築にあるという。
続く第4室では60分のドキュメンタリー映像「20世紀最後の巨匠 オスカー・ニーマイヤー」(2001|マーク=アンリ・ウォンバーグ監督)をスクリーンで上映中。最初から全篇を観るなら予め上映時間を押さえておきたい(場内のモニターで流れている2分強の動画の幾つかは、このウォンバーグ監督作品の一部)
プロローグの展示室でも流れていた、オスカー・ニーマイヤー操縦する"宇宙船"が、リオデジャネイロ上空を飛び、コルコバードのキリスト像をかすめ、断崖絶壁の上に"着陸"する冒頭のシーンは笑える。宇宙船とは1996年竣工の《ニテロイ現代美術館》で、上映室を出ると目の前に縮尺1/100の模型が"着陸"している(アクリル、スタイロフォーム)。
件のシーンはいわばセルフのパロディだろう。ニーマイヤーは「人はこれを宇宙船と呼ぶが、地に咲く花である」と言いながら、スケッチを描いて説明するシーンも映る(上の画、モニター内でもドローイング風景をループ再生)
壁の大判写真2点:ホンマタカシ作品「ニテロイ現代美術館」(2002)
手前:1972《コンスタンティーヌ大学》模型(縮尺1/300|アクリル、スタイロフォーム)
アルジェリアに竣工した同作品は、共産党員でもあったニーマイヤーがフランスに亡命している時期(1967-1985)のもの。
奥の写真3点:レオナルド・フィノッティ「コンスタンティーヌ大学」(2007)


オスカー・ニーマイヤー展 西沢立衛氏インタビュー
(短縮板2分27秒、配信元:motmuseum

ニーマイヤー作品との出逢い、作品の魅力などについて、西沢立衛、安藤忠雄、藤本壮介、石上純也氏らが語る「5人のクリエイターへのインタビュー」(ループ上映17分、2015)を観た後に、企画展オープン当初から、見学者がSNSなどに写真を投稿して話題の展示室がある。《イビラプエラ公園》の縮尺1/30模型である(企画・製作:野口直人建築設計事務所)
高さ14mの巨大吹き抜けをどのように扱うか、毎回注目が集まるアトリウムを、今回は"平たく"使い、約500平米というフロアの中に来場者が足を踏み入れられるようにした(土足厳禁、模型を跨いで移動するのは不可)。地を這うようなニーマイヤー建築の特徴、大地との一体感、西沢氏がインタビューで何度も繰り返していた「生命的」なものがより一層、強調されている。西沢氏はニーマイヤーを「建築に情熱を持ち込んだ人」と言い表し、彼の作品のなかで「一番、感動した」というのがこの《イビラプエラ公園》。
会場解説板によれば、サンパウロ市創設400年を記念して1954年にオープンした《イビラプエラ公園》は、元は古い市民公園だった敷地。産業館、講堂、展覧会場(オカ)など5つの施設をニーマイヤーが設計した。
"撮影スポット"と化していると聞いていたが、平日の夕刻はご覧の通り。
秋の気配を感じさせる西日の下、公園に寝転んでいる気分を味わえる。
2005年に竣工した《講堂》の縮尺1/30模型。
エントランス上部の曲線の庇は日系人アーティストであるトミオ・オータケのデザイン。最後の展示室には、同氏の関連資料と、ニーマイヤーと恊働したパウロ・ヴェルネックの素案資料、そして約16mにおよぶニーマイヤーのドローイング(撮影不可)が展示され、エピローグとなる(巨大な絵巻物のようなドローイングのなかには、巨匠がサラサラっと描いた、苦笑を禁じ得ないアングルのARTな素描がある)
竣工から何十年も経過し、おそらく現地では老朽化した部分に目がいってしまうだろう。だが本展では、ニーマイヤー作品の曲線の美しさ、設計思想がシンプルに際立つ。
画面左のドーム状の建物模型:1951《展覧会場(オカ)
そして誰もいなくなった《イビラプエラ公園》の模型展示会場。別の企画展「ここは誰の場所?」会場を移動する途中の1階から、地下2階アトリウム空間の見下ろし、金曜17時頃。

東京都現代美術館オスカー・ニーマイヤー展 ブラジルの世界遺産をつくった男」は10月12日まで。休館日は月曜(9月21日、10月12日は開館)と9月24日。開館は10-18時(7-9月の金曜は21時まで)、入場は閉館の30分前まで。
なお、本展は日伯外交樹立120周年記念展でもある。





+飲食のメモ。
同館2Fの Càfê Hai(カフェ・ハイ)にて「バインミーのプレートランチ」(¥1,000)
モセリナ粉を使ったフランスパンと思われ、美味しい。ランチ時はベトナムコーヒーやジャスミンティーなどから選べるドリンクを+300円で付けられる。
毎回パクチーを抜いてもらうクセに、スナックもクセになる味で、未だに地下2階のレストランで食したことがナイ。
今回も美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

Càfê Hai(カフェ・ハイ)
www.mot-art-museum.jp/museuminfo/shop.html
通常の営業時間は11-18時(L.Oは17:30)、今年7-9月の金曜は20時まで(L.Oは19時)。

「the SAKAN」展 @ Gallery A4

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東陽町の竹中工務店東京本店1階にある Gallery A4(ギャラリー エー クワッド)にて、公益財団法人竹中大工道具館主催による企画展「the SAKAN 継承と革新」が開催されている。
土壁の魅力、左官職人の手技などを紹介する展示。東京会場に続き、来年の秋には神戸市にある《竹中大具道具館》でも開催される予定。

東京展会場入口に聳える「土の門」は、左官職人の久住有生氏左官株式会社親方)らがつくりあげた作品。会期初日に「美を創る匠の技」と題して行なわれたオープニングイベントで、中塗りの公開制作が行なわれた。木の下地+金網+モルタルで下地が出来ている状態から、職人4-5人による中塗りが2回、所要は予定通りの2時間ほどであった。
上と下の画、立っている人物が久住有生さん(8月17日撮影)
塗りの材は、久住氏の出身地でアトリエも構える淡路の土に藁を混ぜ、荒壁に適したオリジナルの中塗土。
上が会期初日の16時半頃の画。未だ完成形ではない。水分を含んで表面にテカりがみえる「土の門」に、人工灯下で四方から扇風機で風を送り、3日ほど乾燥させてやっと作品として完成(会期が短いための処置,本来は自然乾燥が望ましい)。下の画は25日が経過した現在の姿。
乾燥して表面に細かい亀裂が入った「ひび割れ仕上げ」。ヒビが入るように塗り材を調合してある。表面は硬化し、色味も変化。後ろに建ち上がっている版築作品「土の造形」の色も同様に。
版築とは、木で型枠を組んで、その中に土を入れて上から突き固めながら仕上げていく工法。フライヤーのテキストに説明を借りると「土の粒子が崩壊寸前の状態で維持される様」である。久住氏によるこの「土の造形」は、中央部を裂き、片側の表面も荒々しく削り取り、静寂な層との対比を観る作品となっている(上の画は9月11日,以降は8月17日の撮影)
時間経過で風合も変化するのが土壁の魅力のひとつ。つくり出すのは人の力と技。驚くほど多彩な左官壁について、そのごく一部となるが、本展では学び取ることができる。
右のパネル:「京錆土投げ苆引き摺り仕上げ」奥田信雄作品
現代最古とされる土壁、京都大徳寺玉林院蓑庵(さあん)が、300年前に竣工した当時の仕上げを想定して再現したもの。表面に苆(スサ)の稲藁が確認できる。

土による建物は大昔から世界中にあるが、日本では貴族文化の熟成に従い、土壁の上から別の土や漆喰を上塗りして仕上げる「左官」の職分が独立し、京都を中心に発展してきた。時代が下り、火事が多かった江戸では、耐火の面から土蔵造りの技術が進んだ。"小江戸"と呼ばれる川越の一部の地域において、当時の町並みを留めている。
註.上の2枚は今年5月に川越"蔵づくりゾーン"で撮影したもの

会場では「左官小史ー東京編ー」と題して、安土桃山時代後期の城郭建築の壁づくりから、江戸、近代の東京にいたる流れを辿る資料も展示されている。木鏝を経て金鏝の製法も進化し、江戸の末から明示初期にかけて現在主流の「中首鏝」が使われるようになり、道具としてほぼ完成形をみる。この頃にやっと土で平らな壁を塗れるようになり、漆喰による細かな造形も可能になったと考えられている(漆喰鏝絵で知られる伊豆の長八が活躍したのもこの頃)。文明開化後は洋風建築の装飾に用いられ、文字通りの華に。西洋風に不慣れな職人は『和洋左官雛形』などの見本帳を手引きとした(見開きで会場展示中)
註.上の2枚は洋風の漆喰左官のイメージ、共に復原後のもの
(旧《朝香宮邸》大客室天井の装飾,《東京駅丸の内駅舎》ドーム/黄卵色の壁と干支レリーフは漆喰)

さて、「職人が鏝ひとつで」とはよく云うが、会場に出展されている鏝の多いこと! 塗る材、配合、工程、塗る面の下地や大きさ、表面の仕上げを「押さえる」か「撫でる」かによっても使い分ける必要があるからだ。さらに鏝鍛冶と左官職人(所有者)、京と江戸でも呼称が違うというからややこしい。
会場には、幕末から明治にかけて京都で使われていた鏝のほか、久住有生氏の父である章氏所有の鏝が600丁が並ぶ。会場では、日本の伝統空間で例えられる「真・行・草」の3つの土壁を例に、それぞれで必要な鏝が共に展示されている。
「真・行・草」のひとつ、最もくだけた仕様の「草」の土壁。引き摺り痕をつけている。用いられる鏝は、所有者の呼称では4種類。微妙に金属部分の大きさなどが違う。
こちらも久住章氏所有の鏝。元首、中首あわせて漆喰で用いる鏝がまとめられている。
「磨き」と呼ばれる仕上げで使われる鏝。久住章氏が若い頃に使っていたもの。
"カリスマ左官"として著名な章氏は、現場に最も適した鏝をイチからつくる。鍛冶職人とのマンツーマンの制作風景を、会場で上映中の「魂の継承と革新の技 ー左官職人・久住章氏の世界ー」のなかに垣間見ることができる(2015,再生時間約16分)。実務的な映像資料はもうひとつ、「京錆土投げ苆切り摺り仕上げ」もループ上映中(2015,再生時間22分)
多彩な仕上げの事例集として、壁一面には、久住章、有生、誠氏(章氏の御二男)による左官サンプルコラージュの展示も。『壁の遊び人=左官・久住章の仕事(2004,世織書房)の記述、および後述・講演会での有生氏の発言によれば、淡路の久住家では、息子さんは二人とも小学校の頃から夕食までの1時間、毎日必ず左官の練習を課せられ、壁塗りが終わらないと晩ゴハン抜きに。
上の画、中央上に写っている波状のサンプルは、伊東豊雄建築設計事務所がシンガポールのラッフルズプレイスで手掛けたオフィスビル《キャピタグリーン(施工・管理:竹中工務店)のエレベーターホールの壁(下の画、右下)を、久住有生氏が仕上げた左官作品に似ている。この上方には京都の輪違屋の1室「もみじの間」で手掛けた左官のサンプルも。
11日の夜には竹中工務店東京本店2階のホールに、久住有生、伊東豊雄の両氏を招き、「現代建築と土」と題して講演会も開催された。対談ではなく、持ち時間半々のプレゼンテーション。
久住氏は保育園や小学校、ホテル、飲食店の壁を多数、仕上げており、初めて東京で手掛けた公共施設事例である《港区立芝浦小学校・幼稚園》エントランスの大壁、常滑のINAXライブミュージアム《土・どろんこ館》の版築の外壁と館内ホールの壁、橋本夕紀夫デザインスタジオが内装設計を手掛けたショコラ専門店 [PATISSIER eS KOYAMA]の壁のほか、かなりのスライドが用意されていたが、終盤は早送りに。解説するには時間が足りず。
「the SAKAN」東京展に備忘録を戻す。会場は二部構成。「榎本新吉 東京鏝の粋」と題して、2年前に逝去した左官職人のストレートな語録と共に、生み出された技法、技を支えた鏝の数々を紹介。磨きの技法を昇華させたのが、会場にも展示されている「泥ダンゴ」である。
「左官とは環境をつくること。誰も気付かないような細部にこだわり、壁も床もそれぞれが決して出しゃばらない、それが日本建築本来の美」と久住有生氏が講演の席で語っていたが、本展は左官が堂々の主役を務める。
受付では東京展のパンフレットも販売(¥100)

Gallery A4(ギャラリー エー クワッド)THE SAKAN 継承と革新」会期は9月26日まで。日曜祝日休館、開館は10-18時(最終日は17時まで)、入場無料。

Gallery A4(ギャラリー エー クワッド)
www.a-quad.jp/




+飲食のメモ。
数年前まで東陽町に勤務していたOさんから教わった中華屋 [好好] へ。

聞いていた通り、皮むっちりの手づくりギョーザ(5個で¥380+税)と、手うち麺がおいしい。しかも安い。下の画は豚肉の細切り麺(¥800)
平日はランチ営業もあり。

おいしゅうございました。ごちそうさまでした。

好好(ハオハオ)
www.gyoza-haohao.jp/

tupera tupera「イラストレーションの世界」@ムサビ gFAL

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小平市にある武蔵野美術大学で開催中の「tupera tuperaイラストレーションの世界展ILLUSTRATION WORKS」を観る。
会場はムサビ校内、2号館1階にあるギャラリーgFAL(ジーファル)

tupera tupera(ツペラ ツペラ)の創作活動の基本は、紙を切って貼ってつくりあげるいわゆる"切り絵"である。イラストレーター、絵本作家、NHK Eテレ番組「ノージーのひらめき工房」のアートディレクター、近年では舞台美術や映像の分野にも活動の場を拡げ、呼称はいろいろ。ワークショップも各地で数多くこなしている。
のっけに会場入口の扉、その並びのガラス壁面に貼られた切り絵作品が来場者を迎える(後で聞いたところによると、設営中に追加の装飾を思いつき、学内の世界堂でカッティングシートを購入、その場で切り貼りしたとのこと)。これらの絵の大元は、記帳台に閲覧用に置かれている著書『Pooka+ How to play? tupera tuperaのあそびかた』(2012,学研教育出版)の表4と表1。表1の二人の肖像画は公式TwitterFBにも使われている。原画の切り絵も展示されているので、before/after も比較できる。
tupera tuperaは亀山達矢氏と中川敦子氏によるユニット。前述の著書および公式サイト記載のプロフィールをまとめると、二人が出逢ったのは美大専門予備校に通っていた頃。1976年生まれの亀山氏は武蔵野美術大学短期大学部(当時)のグラフィックから学部の油絵学科に編入して版画を専攻。78年生まれの中川氏は多摩美術大学で染織デザインを学ぶ。2003年に初めて二人で共作し、オリジナルのマフラーを展示販売したのが活動の原点。翌年にユニット名を tupera tupera とする。
今回出展されているのは、広告のビジュアル、書籍の表紙や挿画、CDのジャケット、Tシャツなどで展開されてきたイラストレーションの原画の数々(平台に置かれているのは絵本の現物展示、閲覧可)。前述書籍に制作場面の一端が紹介されているが、使用するのは市販のタント紙のほか、ふだんから収集に努めているというさまざまな種類の紙。さらに上から色を塗るなど手を加えたり、作品にあわせてオリジナルの素材をイチから作っていく。ふだん我々が目にすることのないこれらの原画には、プロの技が濃密に詰まっている。但し、近寄ってみても、切り絵だと俄にわからないほどの超微細な仕事である。
左側の2点、プラネタリウム番組アートワーク「ぼくとクジラのものがたり」(2009,山梨県立科学館)、シルクスクリーン「ANIMALCIRCUS」(2009)
切り絵による原画がどのようにビジュアル化されれたのか、キャプションで確認できる。
下:宇野千代著『生きていく私』および佐藤愛子著『こんな言い方もある』(2009,角川書店)
上:田辺聖子『光源氏ものがたり』(2009,角川書店)
これらの書籍やCDを実際に手にしたり、街中に貼られたポスターや車内の吊り広告などで会場内のビジュアルを目にしたことがある人も多いのでは。
中央の3点:教科書挿画「中学国語1,2,3」(2012,池村書店)
見切れている左端:「東急百貨店 クリスマス」(2010)
同右:コラボレーション企画アートワーク,トートバックやYシャツなどで展開「PETIT BATEAU」(2011)
2013年のイベント「もみじ市 カラフル!」のメインビジュアルとして使われたイラストレーションの原画(註.切り貼りのニュアンスが判るように作品の一部を接写しています/作家諒承済)
壁の絵本作品は海外翻訳版。『しろくまのパンツ』はカタルーニャ語を含む8つの言葉に訳されている。台湾版と韓国版が出ている『パンダ銭湯』はシュールで「むふふ」と笑えるストーリー。国内の書店員が選ぶ数々の賞に輝いている。
絵本作家としてのデビューは2004年。自費出版で1,000部限定で刷った『木がずらり』(上の画、左下。但し会場の書籍は後年出版されたカバー付きのもの)、両面をフルに使える蛇腹ページならではの構成。
これら絵本のうち、『うんこしりとり』(2013,白泉社)を作家自ら子どもらに読み聞かせる場に居合わせたことがあるが、いつもは口にすると親にたしなめられるキーワードを、何ら憚りなく、嬉しそうに連呼する子らの姿は実に微笑ましく、同時にオトナの価値観がアッサリと突き崩された(下の画はそのイベント会場にて、校内2号館のトイレではありません)

会場のgFALは、ムサビ卒業生を中心とした若手作家の作品発表および情報発信の場として2002年に発足、2008年に2号館が建て直されたのを機に1階にスペースが設けられた。
この日は校門脇の守衛室にひと声かけたが、何ら支障なく、誰でも観賞できる。

tupera tupera「イラストレーションの世界 ILLUSTRATION WORKS」の会期は10月2日まで。休廊は日曜祝日、開廊は11-17時、入場無料。

武蔵野美術大学 gFAL(gallery of The Fine Art Laboratory)
www.musabi.ac.jp/topics/exhibition/gfal/




+飲食のメモ。
会場隣りの4号館1階の売店[ブーランジェリーエミュウ 武蔵野美術大学店(Boulangerie EMU)]にて、ホットコーヒー(¥100)と総菜パンを購入。鷹の台駅前の[しょう'sベーカリ]で予め買っておいたデニッシュ類とともにテラス席でいただく。

[エミュウ 武蔵野美術大学店]の「フライドフィッシュのコッペパン」(¥240+消費税)は購買感あふれるキャベツの盛り。

駅前「しょう'sベーカリー」の菓子パン(合計で¥515)はアーモンドクリームデニッシュと抹茶大納言デニッシュがたいそう美味しく、復路も立ち寄り、閉店直前のセット売りをゲット(食パン3枚+クロワッサン+デニッシュ=1袋 ¥450)

[しょう'sベーカリー]は今年でオープン5年め(ホームページやFBは開設していないとのこと)。鷹の台駅の改札を出て、線路に沿って左手に進むと、すぐ右側に看板が見える。
美味しゅうございました。ごちそうさまでした。
現役生がうらやましい。

「空間を色で着せ替えよう!展」@CS デザインセンター

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東日本橋にある(株)中川ケミカルのショールーム・CSデザインセンターで開催中の企画展「空間を色で着せ替えよう!展」を見学。
会場構成にインテリアデザイナーの五十嵐久枝氏を迎えた本展は、中川ケミカルが先月5日に発売を開始したカッティングシートの新色を、ごく身近な空間でもって展開し、空間提案する。先月27日から10月末までは先ず「問屋街カフェ」としてオープン、11月にオフィス空間、来年2月にはキッズルームへと、新色を使っての"着せ替え"がある。

空間デザイン:イガラシデザインスタジオ / 五十嵐久枝
照明デザイン: Y2 Lighting Design(ワイ・ツー・ライティングデザイン)/ 山下裕子

ネーミングは、この会場の立地、そして中川ケミカル創業の地でもある馬喰町一帯が、江戸時代から続く衣類の卸問屋街であることから(参考:東京日本橋横山町馬喰町問屋街・新道通り会サイト〜新道通りの歴史
左に6枚、右に7枚たてられたガラスのパーテーションには、江戸小紋のひとつ"分銅繫ぎ"をあしらった、新色のニュートラルグレースケールで構成されている。スタッフのオフィスルーム側の廊下は路地感を演出。
分銅繫ぎは縁起の良いいわゆる吉祥紋のひとつであり、波形状が同社の"川"の字をもイメージさせる。
五十嵐さんが配したこの分銅違い、パーテーションに沿って左右のそれぞれ端まで進んでいくと、線がだんだん太くなって線と柄が逆転する。
本展のもうひとつの見どころは、山下さんによるライティング。例えば、会場入口正面にある受付の背面。会場に足を運んだことがある人なら見覚えがあると思うが、正面右側はふだんは棚什器となっている。行灯のような光の演出は本展オリジナル。左側のキャビネットのツラ位置がやや出っ張っていることを逆手にとって、同じツラ位置で什器の表面にポリ合板を張り、さらに新色のペールトーンを貼って仕上げた。内側から光をあてた時に影が出ないよう、什器の板の縦のラインに照明配線を通している。
EVを出てパッと入ってくる視界の中に、今回の新色が全て収まっている。前述・ファサードのニュートラルグレースケール、ペールトーン、そしてセレクティッドホワイトだ。受付カウンター前板のボーダーがそれ。同じボーダー仕様はカフェ空間に置かれた長テーブルの装飾にも使われているのだが、(18日夜に開催されたレセプションの際、会場で五十嵐さんに教わるまで気付かなかったことに)垂直に立っている前板と、水平に置いたテーブル天板とでは光のあたり方(=あて方)が異なるので、同じボーダー仕様にも関わらず同じシートに見えない。これは偶然などではなく、原研哉氏監修によって生み出された、繊細な色味の違いで展開するセレクティドホワイトの「白」を、より美しくみせ、使い方によって豊かなバリエーションがあることを感じてもらいやすくするためのデザイン。

長テーブルの席でアイスの宇治抹茶ラテをいただきましたの画(ピンボケご容赦)。江戸情緒漂う「問屋街カフェ」らしく、お茶請けに「雷おこし」まで(今はキャンディー梱包があるのですね)。おいしゅうございました。ごちそうさまでした。

閑話休題。
こちらのテーブル、表面は新色シート、しかもマット仕様なのでわかりくいが、裏面をヒョイと覗いてみると、素材はガラス板。4枚の天板を連結し、ボーダーに紛れさせて、1枚の長いテーブルにみせている。
見上げたそこに、五十嵐さんデザインによるオリジナル照明が3つ(多面体ドームは昨年12月にデザイン・ハブで開催されたムサビの「いろは展」にも出展)。素材はダンボールで、内側に新色のシートをランダム貼りした(手前:ベールトーン、中央:ニュートラルグレースケール)。シェードのドームは3パターンの三角形で形成されている。照明が眩しいと新色を美しくみせる妨げとなるので、電球は上半分だけを照らすグレアレスなシルバーボールを採用。レセプション開催時にはフィラメントがゆっくりと明滅するパーティ演出になっていた。
ピアノ塗装の扉に貼られたペールトーンの数々。会場スタッフによれば、パステル調の淡い色のシートは、これまで「ありそうで無かった」とのこと。
実は3連のペンダントだけでは明るさが足りていないという長テーブル、そしてペールトーンによるカフェ壁面を照らす照明器具は、表立っては見えないようになっている(あら、こんなところにトカゲが一匹。これも新色? と思えば、さにあらず。7年くらい前から"棲み"ついているとのスタッフ談。会場内にまだ何匹か居るらしい)
ライティングで照らされたペールトーンが、分銅違いのガラスファサード越しに透けてみえるという演出効果。通りに面したガラス開口から入る自然光と、人工照明による計算された光が溶け込んだ会場となっている。
これもレセプション時に山下さんに教わったのだが、シートをガラスの表面に貼り、貼った側から光をあてると、ガラス自体に何ミリかの厚みがあるため、文字の影が裏側に落ちてしまい、シートの文字と影が重なって読みづらくなってしまう。それを避けるため、ライティングは裏側(スタッフオフィスルーム側)からとなる。
一角には青海波(せいがんは)の紋様も(意味やら由来をネットでググると、奥が深くて止まらなくなる)

空間を色で着せ替えよう!展」"問屋街カフェ"の会期は10月30日まで(土日祝休館)。開館は10:30〜18:30、入場無料。

CSデザインセンター
http://www.csdc.jp/

「PAPER MOVEMENT 紙が動く、心が動く展」@ヒカリエ8/ CUBE

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渋谷ヒカリエ 8階のギャラリースペース[8/] CUBE1,2,3を会場に、かみの工作所の新製品展示会「PAPER MOVEMENT 紙が動く、心が動く展」が始まった。
出展デザイナー:switch design(プロダクトデザイナー)、POINT/長岡 勉(建築家)、村越 淳(プロダクトデザイナー)、原田祐馬(アートディレクター/デザイナー)
会場構成:長岡 勉
グラフィックデザイン: UMA / design farm


今回のテーマは"動き"。何も作用しない状態であれば紙は静止しているが、人の手が触れたり、風がそよいだり、物理的な要素が付加されれば動きが生まれ、見るものの心も揺り動かす。文章にすると当たり前だが、いざオリジナルで創るとなると難しい。平凡な発想では紙のモビールになりそうなところ、4名のデザイナーあるいは建築家がどんな紙を選び、紙それぞれの特質を生かして、どんな動きをデザインによって与えたのか?

POIN/長岡 勉「風海月(かぜくらげ)Wind Jelly Fish」
それぞれ異なる動きをする"ゆらゆら"と"くるくる"の2種類。上の画・左手前の長い方が"くるくる"。クラゲの口腕のように伸びている部分を下に引っ張ると"くるくる"回転する。無数に浮いているようにみえるのは壁に落ちた影の効果。下の画はスタディ模型。
エビクラゲ、ウチュウクラゲ、ツリガネクラゲ、エダクラゲなど。

原田祐馬「CMY(シミィ)
「CMY/POT」はポットカバー、「CMY/YAMA」は山型の立体オブジェ。共に水の浸透性を利用したプロダクト。POTはカバーの下の縁に網点で色インクが印刷されており、水遣りで皿に残った水を紙が吸い上げ、その際に色が染み出す。色は徐々に上へ上へと上がっていき、POT全体を染めてゆく。なお、CMYはシアン、マゼンダ、イエローの頭文字で、ルビの"シミィ"は"染みる"と掛けている。
貴船神社の水占いなど、さまざまなサンプル収集とスタディなどを経て、最もイメージに合う紙として選ばれたのは、一般にも馴染みのある紙。喫茶店でコールドドリンクのコースターとして使われているSSコースター。微妙なグラデーションを生じさせる色の網点模様は、昔の「水ぬりえ」がヒントになったとのこと。
なお、原田氏は本展のフライヤーのデザインも手掛けている。
上の画・左側が平らの状態、右側が折り畳まれた状態。折りをいろいろ変えていくと出展者情報が表示される。

村越 淳「霧の蓋(Cover of Mist)」miniサイズあり。
村越氏は昨春の「Interior Lifestyle Tokyo 2014」のTALENT部門、続いて秋の「Any Tokyo 2014」にも出展して注目を集めていたプロダクトデザイナー。
大小あわせてテーブル上に配置されると、まるで都市のようである。こちらもポピュラーな紙・トレーシングペーパーによる作品。薄くて柔い紙だが、水で霧吹きをして、乾いてから手で揉むと、強度が出るという特長を応用させたもの。
四角い"受け皿"ではなく、引っくり返して使うというコンセプト。「霧で包み隠すように、モノの存在を柔らかく抑える紙の蓋」(フライヤーより一部転載)

大畑友則氏と瀧ひろみ氏による switch design(スイッチデザイン)は、2年前の展示会「PAPER GAME CENTER」で「センコウハナビシ」を発表しているデザインユニット。新作「格子虫(こうしむし)」は、4面それぞれ色を変えたカク(sui-sui、sowa-sowa /上の画・左側)と、2色のマル(monyo-monyo,moco-moco /上の画・右側)のバリエーションがある。
見る角度によって色が変わるカクがモビールのように吊られていたが、平らな面に置くのが正しい。作品の一部に触れると"ぐにょーん"と動く。
上と下の画の右下の2点を見比べてもらえば、多少は動きが伝わるだろうか。
あまりにスムーズな動きをするので、何ら予備知識なく触るとビックリすることうけあい(ネタバレ:台の上に落ちている影でわかるかもしれないが、設置面の側に緩やかなカーブがつけられていて、中心に頂点がある
これらの新製品は10月13日発売開始。会場内にて先行発売中

PAPER MOVEMENT 紙が動く、心が動く展」は会期10月11日まで。開場は11-20時(最終日のみ18時まで)。入場無料。9月26日にはワークショップも開催。

主催:かみの工作所/福永印刷
www.kaminokousakujo.jp/




+飲食のメモ。
見学したのは出展作家による製品説明も行なわれたオープニングレセプション開催日(土曜日)の夜。平日の昼時であれば、11階のレストラン[ THE THEATRE TABLE ] がおススメ(下の画は昨秋の飲食時のもの)
青山界隈にある複数のインテリアショップが参加し、今年も11月26日から開催されるイベント「MAIN」を昨秋巡った際、イタリアの家具ブランド GERVASONI(ジョルバゾーニ)のソファで食事が味わえるテラス席「THE THEATRE TERRACE by GERVASONI」の存在を知り、ヒカリエに行ったついでに堪能した平日ランチがこちら。
こちらのランチは前菜ビュッフェが食材豊富で美味しい。平日はホットコーヒーなどのドリンクも付く。サーブされるのが水ではなくアイスティーというのも素晴らしい。
本日のスープランチ「完熟トマトとパンの濃厚な温かいスープ」(¥1,300+消費税)
とっても美味しゅうございました。ごちそうさまでした。
ほか、2種類のパスタランチ、肉、魚系もお値段それぞれにあり。土日はドリンクが+¥300になる。
店内のダイニングの雰囲気も良いが、日中の日差しが和らぐこれからのシーズン、ゆったりランチも魅力的。秋でも帽子と日焼け止めが欲しくなるくらい燦々なテラスである。

THE THEATRE TABLE
www.transit-web.com/shop/theatre-table/

スパイラル30周年記念事業展「スペクトラム ―いまを見つめ未来を探す」始まる

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青山のスパイラルにて、開館30周年記念展「スペクトラム ―いまを見つめ未来を探す」が始まった。

出展作家は4名。そのうちの一人、《十和田市現代美術館》などのライティングプロジェクトで知られる髙橋匡太氏によるセレブレーション作品を見るのであれば、照明が灯く18時以降が良い。


《スパイラル》は槇文彦氏槇総合計画事務所代表)の設計(本展終了後の11月8日には、同事務所創立50周年とスパイラル開館30周年を記念してシンポジウムが同館ホールで開催される。聴講申込は過日に締切)
青山通りに面したエスプラナードを使って表現される髙橋匡太作品《いつかみる夢「散華」》は、日本流行色協会(JAFCA)が選定、発信しているカラートレンド情報から、各時代色の流行色を抽出、約12分間で展開する。
「展覧会メインビジュアルともイメージぴったり」と髙橋氏談(同会場)

テーマの「spectrum(スペクトラム)」からは多様な意味がとれる(参考:weblio。「思想、生命、宗教など、作品を通じてそれまで見えなかったものが見えてくる。我々は皆、spectrum の上に乗って生きている、ということを本展を通じて表現したい」と主催側(出展作家4名ら関係者が出席して開催されたオープニングトークより。本テキストはトークでの各氏発言や作品説明、会場配布物に拠る)
「30周年のお祝い(セレブレーション)を軸に、光学的要素をもつ"スペクトラム"というテーマを、自分なりにどう解釈するかを考えた。単純でデフォルトなレインボーに陥らずに、各時代の気分を光の色、色の帯で表現した」(作家髙橋氏談)
エスプラナードの髙橋匡太作品会場には、腰くらいの高さでiPadが複数設置されている。映し出されるのは、同空間で花びらをまく女性の姿。髙橋氏自らiPadで撮影した映像で、設置された"場"における過去の状態。時空間を旅する私たち自身のメタファーであり、花びらには祝福の意が込められている。
機材提供は本展協力社としてクレジッとされているカラーキネティクス・ジャパン(株)(髙橋氏とは「道後オンセナート」や「スマートイルミ横浜2014」でのPJなど、これまで何度も恊働している)

毛利悠子《アーバン・マイニング:多島海》2015
カフェからの眺めも意識して設置された3つの街路灯。昨年まで東京都内で実際に使用され、LED照明への切り替えで廃品となったもの。自治体ごと、また道路の何処に置かれていたかによって、大きさや色などに"個性"がみられるという。
作家いわく、「博物館に展示されたクジラの標本や、首長竜にも自分には見えて、古びた感じが生き物の肌のよう」。
3つの電灯の光の明滅の元となっているのが、展示台の上に置かれた"発電機"。「廃品になるものに興味がある」という作家は、スパイラルカフェから提供された空き缶などで制作したもの。ギャラリー会場を海原に見たて、彫刻群による作品名は多島群(アーキペラゴ)と命名された。

会場奥のアトリウム空間での作品発表は栗林隆氏。
《重いフレコンバックの社で、見えないものと向き合う》2015
フレコンバックとは、土嚢(どのう)を詰める軽量の袋のこと。作家によれば、3年程度しかもたない素材でできているにも関わらず、4年前の原子力発電所事故で大量に発生した、半減期30年といわれる汚染土の保管にも使われている。
会場では、黒いフレコンバックを横に7袋、縦に6袋、合計145袋で壁をたて、作家いわく「イスラム教のカアバ神殿のよう」な立方体を出現させた。
中は四角い空洞で、1カ所だけ設けられた隙間から、もうひとつの展示空間に入る。
初日18時に点灯したガラスのシャンデリア(上)。下は点灯前。
美しいと、おそらく誰しもが先ず感じるであろうこのシャンデリア、こちらのモチーフも原子力に関連する。
吊られているのは小さなガラス文字。全て鏡文字で、A.アインシュタインが当時の米国合衆国F.ルーズベルト大統領に送った、原爆の開発許可を求めた手紙のテキストから。

点灯後の場内は文字の影で満たされ、見学者の身の上にも降ってくる。
影の文字は読めるようで読めない。何を読み取るかは見学者次第。

「自作で扱う素材は時間」と語っていた榊原澄人氏の展示は館内5階にて。
会場に向かうエレベーターを待つ時から既に作品世界が始まっている。
エレベーターボックスの内部。2台とも中も外も違う仕様(上は向かって左のボックス、下の画は右側のボックス内観)
これらのイラスト各場面が動画となり、5階に2室用意されている会場のひとつで、iPadを使って流されている。
それら複数の映像がひとつながりになった作品が、もうひとつの会場にて、半球ドームに投影されている。ドームは人間の頭蓋のメタファーでもある。
榊原澄人《大きな世界の、無数の私たちのあり方を思わせる、天球のスクリーン》2015
上の画は2方の暗幕が開けられた状態(日中はクローズ)。また、5階の榊原作品会場は、10月末から会期終了までの木曜から日曜(祝日)の17時以降はバータイムにもなる。営業時間や詳細は下記企画展公式サイトを参照のこと。

スパイラル開館30周年記念展「スペクトラム ―いまを見つめ未来を探す」の会期は10月18日まで、会期中無休。オープンは11-20時、入場無料。会場は1階のスパイラルガーデン、および榊原作品は5階にて展示。会期中はワークショップやアーティストトークも開催される。

スパイラル
www.spiral.co.jp/




+飲食のメモ。
会場近くの焼き菓子専門店「A.R.I(エー・アール・アイ)」に直行。18時以降は店内での飲食は終了、火曜-土曜は19時(日祝日は18時)まで商品が残っていればテイクアウト可。
手前下から時計回りに、たまねぎのマフィン、シュガーレーズンビスケット、オートミールスパイスクッキー袋入り、レモンのパウンドケーキ。締めて1,425円+消費税。
翌日冷めててもしっとりとおいしい。シナモンとジンジャーがきいたクッキーは夜食のお供に。今回も美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

A.R.I 公式Twitter,ブログ
https://twitter.com/arimuffin
http://ariaoyama.blog36.fc2.com/

東大本郷《ダイワユビキタス学術研究館》+カフェ

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昨年5月にオープンしている《東京大学大学院 情報学環 ダイワユビキタス学術研究館》を見に行く。設計は同大学院教授である隈研吾氏隈研吾建築都市設計事務所代表)
既にあちらこちらのメディアで紹介され、隈事務所サイトの作品アーカイブにも情報が掲出されている作品。1階に入っているカフェがスゴイと聞き及び、釣られる(飲食メモは後述)

本郷キャンパスといえば赤門が有名だが、最短アクセスは春日通り沿いにひっそりと開いている春日門。通りからも見える。14時前に到着したが、既に順光の時間帯を過ぎていた。
春日門寄りの一角に高級和菓子カフェ「厨 菓子 くろぎ」がある。先ずは全景を確認。
館内にあるトイレを拝借した際に目にした掲示によれば、こちらは大和ハウス工業(株)の寄贈で建物(2012.10.3公示 同社リリース
棟の入口付近、見上げ。
構内通路側のファサードをリズミカルに覆っているのは不燃処理された薄い杉板。
北側からの眺め。カフェがある南側から北まで、館内は構道に沿って真っすぐ通路が走っており、自転車が停められていたり、土間のような使われ方をしていた。隣接する産学連携プラザとの間を通って建物の反対側にまわりたかったが、西側にある端から首を伸ばすのみ。懐徳館庭園懐徳園には通常は入れない。
構内通路側とは異なる外観。緑豊かで野趣あふれる懐徳園側からの眺めを意識している。スチールのメッシュに土を吹き付けた、挟土秀平(はさど しゅうへい)氏による左官仕事「透明な土壁」である。
(挟土氏の公式サイトの作品アーカイブに遠景写真3点あり。同氏のブログ「遠笛」の今年4月1日掲出「建築家・隈研吾」と題した記述によれば、隈氏との初コラボは3-4年前、現場は《mesh/earth》と思われる)
来た道を戻ってカフェを目指す。

+飲食のメモ。
「湯島121」としてオープンしていた際、ランチで絶品の「鯛茶漬け」を食べたことがあるが、現在は店主の名を冠した「くろぎ」として看板を出している日本料理店の姉妹店「厨 菓子 くろぎ」。
懐徳園に面して四角く開口が切りとられ、借景になっている。
スゴいなぁ、という言葉しか出てこない見上げ。
ふと、足下を見やると白い煙が。各テーブルに蚊取り線香が置かれている(夏場は猛襲されるのであろう)
ユビキタス棟入口側を向いて着席。
今月いっぱい期間限定の「和栗のかき氷」をセットでいただく。すぐきと落雁、猿田彦珈琲のドリンクから選んだカフェオレがなみなみとつく。シロップは黒蜜と練乳の2種。
アルミ製スプーンには「茂作」と刻印が。京都にある鍛金工房 WESTSIDE33 のものと知る(過日に2代目の仕事風景をテレビで見たが、湯豆腐用の穴あきお玉のカーブを、地金の曲面にあわせた強弱だけで一カ所につき一発叩きで作り上げていた。このスプーンもきっとそうだろう)
美味しゅうございました。ごちそうさまでした。
ガラスで三角形に囲われた店内にもカウンター席あり。できれば時間をとってゆったり 過ごしたい。これからの季節は特に。

東京大学大学院 情報学環 ダイワユビキタス学術研究館
1階「厨菓子くろぎ」
www.wagashi-kurogi.co.jp/

「手塚貴晴+手塚由比の建築106作展」@ セラトレーディング 東京ショールーム

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乃木坂のセラトレーディング東京ショールーム(ギャラ間のビルの地下1階)にて「手塚貴晴+手塚由比の建築106作展」を見学。今夏にTOTO出版から発行された作品集『手塚貴晴+手塚由比 建築カタログ3』の刊行記念展で、地下のショールームの壁は書籍の見開きページで埋め尽くされている。

地下と1階に分かれている会場には、最新刊に収録されている作品の模型も展示されている(29日の時点では2フロアあわせて以下の6点)
手前:2013《茅ヶ崎シオン・キリスト教会/聖鳩幼稚園》S=1/100模型
上の画奥および下:2015《ひろばの角のバルコニーハウス》S=1/50模型
記憶違いかもしれないが、手塚建築研究所のサイトなどに掲出されている模型写真は目にしたことがあるが、こうして会場で複数の模型が展示されるのは珍しいのではないだろうか。
2014《寄棟の家》模型と最新刊。
最新刊の数字の色は緑で、2は黄色=お子さんふたりのキーカラーとリンクしている。
29日の夜には、「よもやま話」と題して手塚夫妻によるレクチャーが行なわれた。同書1,2,3=合計106作品、時系列で並んだ159枚のスライドを早送りしながら全て表示、要所で止めて作品解説。記念すべき第一作の《副島病院》から作品集3巻末に収録されているマニラで進行中の最新PJまで、あっという間に90分が過ぎる。
最新刊にも収録されている、2013年春に開業した《チャイルド・ケモ・ハウス》を手掛けたあたりから、手塚両氏は「建築には社会を変える力がある」という手応えを感じるようになったという(2014年に移転オープンした沖縄の《空の森クリニック》に関連した「空の森シンポジウム」でも同様の発言あり)。手塚建築研究所の名を一気に高めた《ふじようちえん》(2007)が内外の賞を多数受賞し、それらの実績が行政の幼稚園基準の見直しにも影響を与えていることも実感の背景としてあるようだ。
その一方で、武蔵工業大学時代から大学で建築を教授している手塚貴晴氏は「最近の学生はモノをつくらなくなった。建てることが罪悪であるかのように思っている」と指摘し、断じてそうではないのだという思いを、『手塚貴晴+手塚由比 建築カタログ3』の巻頭に寄せた「私は建築を信じている」に自身いわく「火を噴く文章」で吐露している。

「建築家になるということは、人の人生をつくり、社会を編むということである。」ーー作品集『手塚貴晴+手塚由比 建築カタログ3』手塚貴晴氏寄稿の序文より一部を引用
2014《軒の教会 東八幡キリスト教会》S=1/50模型
2012《山元町ふじ幼稚園》S=1/50模型
作品概要の参考:日本ユニセフ協会 緊急支援情報ニュース(2012.8.24)
2013《Ring Around a Tree》模型
「手塚貴晴+手塚由比の建築106作展」会期は12月22日まで(但し、10月11日-19日はショールーム改装工事につきクローズ、10月20日に再オープン)。入場無料。休館日および営業時間はセラトレーディング公式サイト参照。

セラトレーディング 東京ショールーム
www.cera.co.jp/showroom/




+飲食のメモ。
会場近くの蕎麦屋「乃木坂長寿庵」にて夕食。
「鴨せいろ」は消費税込みで¥1,100ナリ。

そば湯をお願いしたら、湯桶ではなく湯呑みで出てきました。コレ、良い。飲むのに適量 & 蕎麦と一緒にお盆の端に付いてきた小匙で濃度を調整できるのでありがたい。

おいしゅうございました。ごちそうさまでした。

乃木坂長寿庵
www.nogizaka-chohjuan.com/

「キュッパのびじゅつかん」@東京都美術館

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東京都美術館で開催中の「キュッパのびじゅつかん」を観る。

"キュッパ"とは、ノルウェーの作家オーシル・カンスタ・ヨンセン氏が生み出したキャラクターで、集めることが大好きな丸太の男の子。デビュー作の絵本『KUBBE LAGER MUSEUM』は世界数カ国語に翻訳、発売され、国内では福音館書店から『キュッパのはくぶつかん』として2012年に刊行。日本語版公式サイトもある。

"キュッパの読み聞かせ絵本"を展示第1室の導入部に据えた本展は、絵本で描かれているストーリー:好きなもの、気になるものを集めるという行為は、"人間の根源的な喜びに通じている"のと同時に、さらに、収集したものをナンバリングして整理し、自分以外の誰かに見せる、+集客のために広告をうつ、来場者に満足してもらうための施策を用意する、という領域に達した場合、それらは博物館や美術館の日常業務に等しいのだと感じさせる。
会場デザインはフジワラテッペイアーキテクツラボが担当。

会場入口からエスカレーターを下っていくと視界に入ってくるのが、地下3階ギャラリーAに展示された、日比野克彦氏による巨大インスタレーション作品《bigdatana -たなはもののすみか》。三重県尾鷲産のヒノキの間伐材で作られた"巨大な収蔵棚"が会場に組み上げられていく様子が、youtube上に限定公開動画としてアップされている(施工:株式会社ムラヤマ)
会場内の動線は先ず地下3階まで下り、ギャラリーB(撮影不可/「キュッパのびじゅつかん」公式Twitterには写真が掲出されている)から。前述・キュッパの読み聞かせ、栗田宏一《SOIL LIBRARY/JAPAN》2015、岩田とも子《ひろってはたどるような部屋》2015、竹中大工道具館所蔵の墨壷コレクション、《木村蒹葭堂貝石標本》や《宮澤賢治採集の石》、大阪市立自然史博物館所蔵の植物の種やキノコの標本の展示に続き、この日比野作品会場となる。
テーブルの上にはガラクタと云っては失礼だがいろいろなモノが並んでいる。それらを参加者のセンスでピックアップし、1つの標本箱にまとめていく。ラベルをつけたらそのまま場内に展示される、という参加型のインスタレーション作品。
展示第のどこかにオーシル・ヨンセン氏がつくった標本箱もある。また、岐阜県産の銘木「東濃桧(とうのうひのき)」も一部に使われているらしいのだが、確認できず。
"巨大所蔵棚"の内部には階段から入場できる(時間制、毎回10名限定、内部は撮影不可=誤って下にカメラを落とすとキケンというのがその理由)
場内を通り抜け、ギャラリーCとDに繋がっている地下1階フロアに到着。反対側から眺めると、日比野氏がワークショップで制作した6つの標本箱が確認できる。キュッパ的な緑や黄色の紙箱はポーターズペイントで塗装したもの(公式Twitterの記述より)
地下2階のこちら側までまわってくると、前川國男が設計した同館のかまぼこ天井、照明も近い距離で眺められる(参考:大改修工事後のトビカン見どころマップ.pdf)
ギャラリーCの作品も日比野克彦によるもの。

アラン・ケイン《Home for Orphaned Dishes 忘れられた器たちの棲み家》2015
棚に並んだ陶磁器は、1960-70年代の英国庶民の間で流行した復古調の工芸品。今や"格好よくない地味なもの"として、家庭の片隅で埃を被った状態だという(自由が丘あたりの雑貨店で売られていたら買ってしまいそうだが)
この作品も参加型インスタレーションで、会場ではニッポンの家庭で眠っている「一番要らない器」の寄付を会期中に限って募り、展示に加えている(持ち込み規定あり)

最後は美術家の小山田徹氏による展示。「巡礼」をはじめとするこちらの作品群が最も個人的ツボにきて、見飽きなかった。
天井から吊り下げられているのは、上野界隈の一般家庭の押し入れや天井裏に眠っていたモノたち。題して《浮遊博物館 2015》。貸し出しの懐中電灯で照らして観察する。
平台に置かれているのは石、石、石。触れたり握ったりヨイショと抱えたりもできる「握り石」。
総合研究大学院大学の成瀬清氏との共同制作標本《Diversity Maniacs》では、メダカの顔を正面からどアップを"観賞"できる。ズラリと並んだ標本と拡大鏡を覗き込むと、確かに、個体ごとに顔つきが異なる。へーえ。
こちらも本展で初めて見て知った。実測図なるもの。
実際に人が現地に赴き、身をもって計ることで出来あがる「洞窟図面」と模型。
滋賀県米原市で採集されたデータを元に方眼紙にまとめられた「実測による洞窟図面各種」および立体模型。
キュッパのびじゅつかん」会期は10月4日まで(10月1日は都民の日で無料入場できる)。なお、同館では「モネ展」を12月13日まで開催中。ゆえに館内は混んでいる。

東京都美術館
http://www.tobikan.jp/




+飲食のメモ。
2012年春のリニューアルオープンで、館内1,2階には、抹茶パフェがおいしい[M cafe]やレストランが入り、展覧会にあわせてコラボメニューも用意されているが、今回は館外へ。ハスのジャングルと化している不忍池を右手に眺めながら、湯島の交差点付近にある喫茶「舞い鶴」でぶどうぱんをテイクアウト。
「天然酵母のぶどうぱん」は火・木曜限定販売(消費税込み¥850)。上の写真では小さく見えるが、全長約20cmある。天然酵母以外のぶどうぱんは曜日を問わずに大小アリ。白ワイン漬けの干しぶどうがギッシリと詰まっていることが持った瞬間に判るズッシリ感。こちらのぶどうパンを一度でも味わうと、ヨソのでは物足りなくなってしまう。
美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

「nendo 1/3 ヒト モノ スキマ」@ EYE OF GYRE

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「モノとその周辺との関係性」から生まれたデザインをテーマに3つの展示を3週間ずつに分けて行なう、nendoの展覧会の第一部「nendo 1/3 ヒト モノ スキマ」は明日まで。会場は原宿 GYRE 3Fの [ EYE OF GYRE ]。
展示第一弾「nendo 1/3 ヒト モノ スキマ」は、高い技術力で優れた陶芸、木工、ガラス工芸品を生み出す日本の職人ー伝統工芸師たちとコラボして生み出された、食にまつわる16種類のプロダクトが、うねうねとした白い展示台に並び、会場の奥へと続く。

これらは今年の「ミラノ国際博覧会」日本館 クールジャパン・デザインギャラリーにも出品された品々で、黒いダイニング空間をモチーフにした会場構成「colourful shadows」が話題となった。出展作品については「cs collection」と題してnendoの公式サイトにアーカイブがある。
常滑焼 愛知県 鴻陽「和菓子のようなコースター」
展示台には世に知られた工芸品名称、産地、製作者、スケッチ、作品タイトル、説明文、作業工程のモノクロ写真に続いて、プロダクトが置かれている。
薩摩焼 鹿児島県 御茶碗屋つきの虫「タマゴのヒビから黒がにじむ器 」
高岡銅器 富山県 高田製作所「単純形態のカトラリー」
大洲和紙 愛媛県 五十崎社中「プレス成型された紙の皿」
江戸切子 東京 木本硝子「一筋で表す江戸切子」
伊万里・有田焼 佐賀県 源右衛門窯「手で柄を楽しむ器」

ミラノの展示台は真っ黒だったが、本展は白。会場配布物に拠れば「人の手によってでしか生まれることのできない微細な表情の違いを強調するために、全て作品が黒一色に統一され、幅200mm、全長33mの細長い展示台が部屋同士を柔らかく繋ぎながら鑑賞者を誘導」する。
前掲・適当に抜粋した会場写真に写っている出展作品の製作者としてクレジットされている先にはリンクを設定したが、本展についてNewsやFBで告知されていない。そういった広報・企画力も含めて、クリエイター集団nendoと日本各地で知るひとぞ知る状態になって眠っている地場産業とコラボする意義は大きいと思われる。

会期は2015年9月11日-11月22日(3部構成:「nendo 1/3 ヒト モノ スキマ」9月11日-10月4日/「nendo 2/3 ヘヤ モノ スキマ」10月6日-10月28日/「nendo 3/3 モノ モノ スキマ」10月30日-11月22日)、開廊11:00-20:00(休廊:10月5日 月曜)、10月29日 木曜)
会場:EYE OF GYRE/GYRE 3F

GYRE
http://gyre-omotesando.com/




+過日の飲食のメモ。
伊藤病院の脇道から外苑前方面へ抜ける道の途中にある神宮前3丁目[パンとエスプレソと]にて、パニーニランチ(土日はお茶菓子付き、ドリンクをセットで付けてだいたい¥1,000+消費税。この日はおゴチになったので料金を失念しました
美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

こちらはフレンチトーストが有名。平日は8-10時に3種類用意されているモーニングセットのひとつ。以降は15時以降のオーダーとなる。イートイン席もテイクアウトのレジも混雑する人気店。

パンとエスプレッソと
www.bread-espresso.jp/

丹青社「人づくりプロジェクト2015」@AXIS Gallery

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アクシスギャラリーを会場にしてこの時期恒例となっている、丹青社による展示「人づくりプロジェクト2015」へ。
同PJは、同社における実践型の新入社員研修。基礎研修を終えて各部署に配属される前の新入社員30名が、2-3人ずつの組となり、第一線で活躍するデザイナー、建築家、職人らと共に、ひとつのプロダクトを完成させ、本展にて成果を披露する。今回で開催5回め。

今年のテーマは「私たちがオクルモノ」。苦心の末に出来上がった13作品が並ぶ。
1.「STEM」小林幹也小林幹也スタジオ
素材:銅パイプ、高透過ガラス、スチールパイプ、ステンレス

"機能、構造、素材を最小限に、空間に溶け込むデザインとした"コートスタンド(以下、""内のテキストは会場バナーの解説より)。円形のガラス皿には小物類も置ける。

2.「すうりのとだな」湯澤幸子(ASSOCCA STYLE)
素材:マツ材、シナ合板、ステンレス、スチール

美しい定理のロジックから美しいカタチを導き出せないか、というコンセプト。必ず答えが奇数になる数式(下の画、左上)に基づいて幅や大きさを決め、制作された食器棚。目隠しの扉板はレールが5列あり、好きな位置に配置したり全て片側に寄せることもできる。

同PJ2014展では丹青社の社員だった湯澤幸子氏が手掛けた会場構成を本展でも踏襲し、通番がふられ、先端に重りがついてピンと張られた糸を辿っていく、壁の解説バナーに繋がる(本展会場構成:株式会社丹青社 上垣内泰輔)
糸を掴むような解説バナーの手のひら、およびフライヤーで使用されている手のひらも、今年の新入社員30名の誰かしらのもの。バナーにはこのほか関わった協力各社名、担当した新入社員名、彼らが本PJで得た感想などが記されている。併載のQRコードからは関連会社の情報にリンクする。
バナーの下には、プロダクトを構成する素材と、お題「オクルモノ」を元に13組の参画デザイナーが最初に描いたイメージスケッチがある。素描から実際にどのようなモノになったのかを見比べるのも面白い。
会期中に開催されたギャラリートークでは、だがしかし「最終的にはロジックより感覚の勝負(笑)」と作家本人が発言したとのこと。

3.「octave」藤森泰司(藤森泰司アトリエ)
素材:スタイロフォーム、キルト芯、革

"そばに置いておきたくなる「モノ」とはなにか? そうした思いをデザインした"。最初のプレゼンテーションで藤森氏がイメージサンプルとして持参したのは「カバのぬいぐるみ」。用途があるようでないような、家具とプロダクトの間に位置するモノ。ソフトボール、ハンドボール、バスケットボールを参考としたS,M,Lサイズの中にはウェイトが入っている。後で「全て同じ重さ=1.1kgです」と会場スタッフに聞かされ、驚く(Sサイズが最も重く感じたので)。ヤラれた、というサプライズを贈られるプロダクトである。

4.「prop」林裕輔・安西葉子DRILL DESIGN
素材:オーク材、スチール

安西氏の実家のお母様に贈ることを前提とした、折りたたみ式ローテーブル。しまう時も脚がスッキリと収まるようにデザインされている。
実家のリビング空間を前提に、ソファと床座の両方で使いやすいよう、高さを2段階で変えることができる。フックのデザインで新入社員らは難儀したらしい。ちなみに本PJに取り組むのはデザインや建築を学んだ者とは限らず、配属部署も営業や一般職そのほかに割り振られる。だが、このPJをやり遂げたという経験が、今後あらゆる場面で生かされる糧となる。

5.「ワワク」伊東裕・劔持良美SOL style
素材:サクラ材、真鍮、アクリル板、真鍮メッシュ、三軸織物

床や卓上に置いて、空間を仕切る衝立て。"その人だけの特別な「空間」をオクル"。
レール可動式のメッシュの表面につけられた丸い模様はその部分だけ凹ませたもの。角度によってモアレが生じる。

6.「テーブリッジ ドボクとカグの橋渡し」鳴川 肇AuthaGraph
素材:スチール、アメリカンチェリー、シナ合板

約70kgのワークデスクを細いスチールパイプの角材が支える。架橋のフィーレンディール工法を用いた。上の画は引き出しを全て空けた状態で、右奥から順に、A1,A2,A3,A4用紙を折らずに収納できる。
 大きな地震でも倒れず、引き出しも開いたりしない。万が一の際にはテーブル下に避難も可能。

7.「OTHELLO」長岡 勉point
素材:ABS樹脂

四角と丸の2つの底辺をもつ花器で、引っくり返して好きな方を使える。見た目はシンプルだが、かなりの精度で切り出されているとのこと(製作:株式会社イクシス。単独でもいいが、上の画のように複数並べ、テーブルの上につくられる影を、花と一緒に風情をオクル。

次のプロダクトの素描には軽いデジャブを覚えた。それもその筈、昨年も目にした、3年連続で"空飛ぶじゅうたん"からのスタート。
7.「紗卓」橋本 潤(フーニオデザイン)
真鍮メッシュ、タベガラス、ステンレス

卓と底で異なる面の間を斜めの支柱が通り、表面はメッシュ張り。見る角度によって、ある時は透過膜、光があたると面になる。
卓上に置かれている、蝉が描かれたボックスは、真鍮メッシュによる「網箱 -虫籠の記憶- 」。本展とは別の、モノにプリントする実験的なプロジェクト「MONOPURI(モノプリ)」で、橋本氏が村田善子氏と共同製作したもの。蓋や箱を引っくり返すと、別の蝉が現われたり消えたりする。

9.「SESSION」上垣内泰輔・鈴木篤志丹青社
素材:低発泡塩化ビニル樹脂板、塩化ビニル板、ポリ塩化ビニル、ネオジウム磁石、マジックテープ

屋外での使用を想定した折りたたみ式簡易テーブル。野外フェスや花見の会場で拡げれば、車座になった人の輪の中心にもうひとつの花が開く。

10.「Aluminium Chair」角田陽太YOTA KAKUDA DESIGN
素材:アルミニウム

角田氏がとある骨董市で見かけたパイプ椅子が原型(素描がほぼママ、カタチになっている)。アルミニウムを使ってどこまでシンプルに曲げ椅子を造れるかがテーマ。

11.「Maru Maru」芦沢啓治芦沢啓治建築設計事務所
素材:シナ合板、ホワイトオーク突板、スチール、スチール金ネジ、ゴム

円形の棚板が可動しつつもバランスをとったローテーブル。棚板下のネジで高さも調節可。
アイデアスケッチの段階ではツリー状だったが、ソファの脇に据え、本やドリンクを置いて使うシーンを想定して低くなった。

12.「LOG」鈴野浩一トラフ建築設計事務所
素材:クス材、エノキ材

木挽き職人(木挽きの林組 東出朝陽氏)の経験と技術により自然な反りを生じさせた丸太の中に、LED電球が仕込んである。フロアおよびスタンド照明、ベンチ、そしてテーブルにもなる。
アイデアの元になっているのは、これを逆さまにした形状で、林業従事者が山の中で木をくり抜いてつくるという「木こりのろうそく」とのこと。

13.「PIECE of PEACE」寺田尚樹インターオフィス
素材:ラミン材、ネオジウム磁石、ホワイトオーク突板

"手書きのカードや手紙は、SNSと違って大事にしたい気持ちになります。引き出しにしまっておくのではなく、眺めていたい、そんな気持ちをオクル、プロダクトです"
中に磁石が入っているピースを組み合わせて、額のようにしたり、配列を楽しんだり。
配色は日本の伝統色から。3面ある展示パネルのうちのひとつは(上の画)、上から春夏秋冬の季節に応じた伝統色で構成されている。
全色各サイズを1つの箱に収めると、色鉛筆のよう(下の画)。協力各社の参考作品と共に、長テーブル上には閲覧用iPadが用意され、各作品のプレゼン資料をみることができる(写真撮り降ろし:尾鷲陽介氏)。
場内では関係者のインタビューを含む映像資料も上映中(上映時間1時間9分)
本展のグラフィックディレクションは小泉均+宇野智美Typeshop_gが担当。
 「人づくりプロジェクト2015」会期は10月6日まで。開廊11-20時(最終日は17時閉場)。入場無料。




+飲食のメモ。
同館1Fにある Brasserie Va-tout(ブラッセリー・ヴァトゥ)にてランチ。パリっぽさを演出した佇まいなどに気圧されると心理的敷居が無用に高くなるが、昼時はリーズナボーで気楽に利用できる。終日喫煙可。
ランチタイムは終日17時までと長い。日替わりは、メインを肉・魚・ラザニア、ベジダブルから選べて、+パンとサラダが付いて消費税込み¥1,000は、この界隈では有り難い。
セットのサラダに付いてきたトマトはシロップ漬け、甘い果実のよう。
ランチメニューから魚をセレクト。「イサキのポアレ、グリーンピース・ベーコン・オニオンのスープ仕立て」。皮パリパリ、白身やわらか。
+250円で★印がついたものから選べるドリンクは、単品では¥680のアップルタイザーをオーダー。
美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

Brasserie Va-tout(ブラッセリー・ヴァトゥ)
http://brasserievatout.jp/

「nendo 2/3 ヘヤ モノ スキマ」@ EYE OF GYRE

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「モノとその周辺との関係性」から生まれたデザインをテーマに、3つの展示を3回に分けて行なう、nendoの展覧会の第ニ部「nendo 2/3 ヘヤ モノ スキマ」が6日から始まった。会場は同じく原宿 GYRE 3F [ EYE OF GYRE ] にて。

前回の英訳タイトルは「nendo 1/3 between hands and objects」、今回は「nendo 2/3 between space and objects」。
ギャラリー会場の入隅、出隅、丸柱など(註.住居空間にも同様にある)、"通常は「邪魔」な要素からイメージを膨らまし、空間に置かれた際のバランスと、家具じたいのプロポーションの検証を交互に行なうという特殊なデザインプロセスにより"、空間の「キワ」から派生した小さなテーブルのコレクション「border table」が初めて披露されている。
テーブルは5mm角の黒い金属棒+直径100mmの丸い天板から成る。
金属棒の一端は黒から白にグラデーション塗装されており、その部分から白い壁の中に消失していくようにも、突出してきているようにも見てとれる。
前回の「nendo 1/3 ヒト モノ スキマ」での会場構成とはガラリと雰囲気が変わった。
最後の2/3展「モノ モノ スキマ」ではどうなるのか、会場配布のフライヤーのデザインも含めて今から楽しみ。
会期は2015年9月11日-11月22日(3部構成:「nendo 1/3 ヒト モノ スキマ」9月11日-10月4日(終了)/「nendo 2/3 ヘヤ モノ スキマ」10月6日-10月28日/「nendo 3/3 モノ モノ スキマ」10月30日-11月22日)、開廊11:00-20:00(休廊:10月29日 木曜) 
会場:EYE OF GYRE/GYRE 3F

GYRE
http://gyre-omotesando.com/




+飲食のメモ。
同館地下1Fの飲食店フロア、エム・ドゥジュール アトリエ内 ピカソル 表参道店にて休憩。
フロア内で購入したスコーンやケーキ、ドリンク類であれば、飲食店営業時間(ピカソルの場合は11-20時)を超えても、イートインスペースを利用して食べることができる。
代官山に本店があるピカソルといえば、チーズケーキが有名。フェア中でセットドリンクのコーヒーが¥200だったので、あわせていただく。
しっとりと美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

picassol(ピカソル)
www.picassol.com/

「森と木の国あきた展2015 ”私が見せる、秋田”」@新宿パークタワー

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新宿パークタワー1階のアトリウムを会場に「森と木の国あきた展2015 ”私が見せる、秋田”」が 10月7日に始まり、9日まで3日間の会期で開催されている。
吹き抜けの大空間の下、約400平米の広さに、4tトラック3台で搬入された秋田県の角材を格子状に組み上げたブースが8個並び、壮観。これほど大掛かりな展示は開館以来初めてとのこと。会場構成は納谷建築設計事務所

参加企業は秋田県で製材、合板、集成材の加工や、木工品、家具、建具などの製作をしている、秋田の木材産業を支える17社。

秋田県、秋田県木材産業協同組合連合会主催によるPR展示は、昨年はサブタイトルを「曲げわっぱから住宅まで」として同じアナトリウムで開催。今回は首都圏のハウスメーカーやデザイナーがセレクトおよびアレンジを施し、建築家やデザイナーの来場をさらに意識した展示となっている。
ブースは大小8つ、南北に縦に並ぶ。ブースを構成する角材は秋田県で加工され、4tトラック3台に積んで会場まで輸送された。
意外なことに、納谷建築設計事務所が展示会の会場構成を手掛けるのは本展が初。とはいえ、同事務所の所長、副所長を務める納谷学氏、新氏のご兄弟は、秋田県能代市の出身。最髙の人選といえる。白地に文字だけという、雪国をイメージしたフライヤービジュアルづくりから同事務所が参画し、デザインした。
平日の夕方にも関わらず、補助席も追加されて満場となった「森と木の国あきた展2015 情報発信セミナー」の第一部には納谷学、新の両氏が登壇。今回の本展のみどころ、地元の材を要所に配した《トヨタカローラ秋田 秋田南店》(スライド表示中の写真、2011年グッドデザイン賞受賞)、《センティール・ラ・セゾン千秋公園》についてレクチャー。進行中の「秋田トヨペット 角館店」では天井面を秋田杉の突き板で、同能代店では秋田の木材を構造として使うプランが進行中とのこと。
「会場では秋田の木材の魅力をどう伝えるか。木による仮設パビリオンという造形的な面白さではなく、来場者の五感に訴えられるような展示にしたかった」(セミナーにて、納谷両氏談)。成る程、外から館内に入ると、木の香りがした。「ホール全体に秋田杉の香りが漂わせたかったので、表面積ができるだけ大きくなるように角材を組んだ」とのこと。
固定方法はシンプル。建設資材足場で用いる単管パイプ四隅にたて、角材の端に丸孔を開けて、上から落として交互に組んでいる。構造計算は千葉工業大学 多田脩二研究室が担当し、事前にモックアップも組んで納谷事務所と恊働で検証。強度の安全性だけでなく、規定の時間内に設営および撤収が終わるか、鳶職を含めて何人必要かなどを事前に算出している。「今回の会場構成では、料理でいうところの"仕込み"に時間をかけ、結果的に説得力のある建築になった」と納谷両氏がその出来映えを語っていたが、周到な準備のかいあって、設営は約1日で済み、予定の3時間前に終えている。
大理石の床にベニヤ板を敷き、四隅に足場の座を設置してから、高所を除いて人力での施工。2mの高さまでは学生が手伝い、それ以上は専門の鳶職人が担当した。メインタイトルを掲示した中央のブースが高さも最大で、総重量は約3.1tある。
こうして完成した箱型のブースに8社、壁側のパネルブースに9社が出展。納谷さんに会場で教わるまで、遠目には気付かなかったが、角材は同じではなく、無垢材や集成材、また秋田杉のほか県下の広葉樹も使われている。
ブースの角にあらわれている面を見ると、違いがわかりやすい。
集成材にもさまざまな製材方法がある。上の画はフィンガージョイント。ノコギリの歯が合わさったような接続部分が判るだろうか。
上の画、左右にわたされているのが並行合板、直角に交わっているのは無垢材。
上の画、社名がシートの切り文字で入っている材は広葉樹。
本展が終了し、解体した後、孔を開けた端の部分を切り落とせば、廃棄せずに角材として再び利用できるのも、納谷事務所が考えた重要な展示コンセプトのひとつ。
「8つのブース全ての香りを変えるのはさすがにできないまでも、秋田の木材に関するさまざまな資料やサンプルも置いてあるので、ブースの中も自由に回遊して、木がもっている魅力を五感で味わってもらえたら」(納谷兄弟談)

「森と木の国あきた展2015 ”私が見せる、秋田”」は新宿パークタワー1階アトリウムにて、入場無料。最終日の9日は17時に閉場。

秋田県公式サイト「美の国あきたネット」リリース
www.pref.akita.lg.jp/www/contents/1438606468224/index.html




+飲食予定のメモ。
セミナー開催日に会場で来場者アンケートに答えたら、先着順で「あきたこまち」の新米をいただいた。
このブランド米の名前の由来が、平安期の歌人・小野小町であることは容易に推察できるが、小野小町生誕の地が秋田であるとの仮設は初めて知った(パッケージ裏面記載の情報より)。 おいしく炊いて、いただきます。

「inter.office EVENT 2015 BACK TO THE OFFICE」@SHIBAURA HOUSE

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欧州一流家具ブランドの輸入販売をはじめ、オフィス空間や家具のデザインなども行なっている、(株)インターオフィスの2015新作発表イベント「inter.office EVENT 2015 BACK TO THE OFFICE」が、田町の《SHIBAURA HOUSE(設計:妹島和世建築設計事務所|外観写真は2011年9月夜間の撮影)で7日から3日間の会期で開催されている。

8日の夜には「"BACK TO THE OFFICE" SPECIAL TALK SHOW」と題したトークイベントも開催された。

趣旨を要約すると、スイスエンジニア・建築家協会(SIA)ほかの助成を受けて、日本とスイスのそれぞれ5組のデザイナー(スイス人デザイナーについては本稿では省略)による「DESIGN WORKSHOP JAPAN-SWITZERLAND」が、今年2月にスイスのバーデンで開催されている。受け皿となったのが、スイスのwogg.社と宮城県の石巻工房。2国のデザイナーが互いの国を訪れ、4日間のワークショップ(以下、WS) の期間中、それぞれのテーマにそったデザインに打ち込む。スイスではアルミニウム合板パネルによる新たなプロダクツの模型提案、日本では石巻工房としてのコンセプト枠内の家具を、都内の石巻東京ショールームおよび宮城の工房でプロトタイプまで制作した。wogg.社が取引先のひとつでもインターオフィスはこのWSを支援、10組10作品の写真が収録されたフライヤー制作でも協力している。
なお、8日のスペシャルトークショー聴講者には、A3図面などの資料がスッキリ収まって、機能的なポケットも付いた、しかもカッコ良く持ち運べるバッグがなかなか無い! そんなプロ的な不満を解消する「ARCHITECHTOTE」が配布された(デザイン:インターオフィス/寺田尚樹氏)
スペシャルトークショーは2部構成。第1部は寺田氏が進行役を務め、石巻工房参画デザイナーが4年間の活動を振り返った(投影写真は藤森泰司氏がデザインし、被災地の仮設住宅に納品された「EN TABLE」)。登壇者[★印は上記WS参加者]:左から、寺田尚樹氏、千葉隆博石巻工房工房長)藤城成貴shigeki Fujishiro design鈴野浩一トラフ建築設計事務所
第2部は石巻工房の代表を千葉氏と共に務める芦沢啓治氏芦沢啓治建築設計事務所の進行で、ニ俣公一KOICHI FUTATSUMATA STUDIO林裕輔、安西葉子DRILL DESIGNが登壇。スイスと日本でのWSの日々を回想、それぞれの感想を述べた。

宮城にある石巻工房にも足を運び、デザイナー自ら工具を握って制作されたプロトタイプの一部が先行披露された(作品名はトークイベント時の呼称より、仮とする)
上の画、右端(リンゴが載っている台):藤城成貴「フルーツトレイ」。 大きなテーブルはインターオフィスとしてのコントラクトユース向けの新作(WSとは無関係)。中央部分のレールに資料や小物類を仮置きできる小さい卓上収納が取り付けられる。
スイスのデザイナーディミトリ・ベレ氏がデザインした、持ち運び可能な照明器具。下の画・左端、木の枝に吊られているのは点灯していない同型。
石巻工房ではファブリックも展開している。枝に吊り下げられているのは、把手が付いたクッション。デザインはDRILL DESIGNのふたり。
ニ俣公一「ラウンジチェア」。オットマンは石巻でのディスカッションを経て、追加で制作されたもの(プロのデザイナー同士のWSなので、作ったそばから批評が始まるのが刺激的だったとのこと)。下の画のように、溝が走って窪んでいるところに足を投げ出してもいいし、90度回転させて、膝を折り曲げて置いてもいい。
懇親会でお寛ぎ中のところ ↑ 掲載許可いただきました
トラフの鈴野さんは「リトル ピクニックテーブル」を制作。このすぐ傍に並んで展示されていたが、人影が空くのを待っているうちにシャッターチャンスを逃す。
藤城成貴氏は上段がテーブルにもなるマガジンシェルフもデザインしている。

今回の「DESIGN WORKSHOP JAPAN-SWITZERLAND」から幾つかは商品化される見込み。また、石巻工房としても、秋のデザインウィーク期間中に改めて披露される予定とのこと(芦沢氏談、詳細は不明)。 石巻工房のプロダクトとして完成させるまでが実は難儀で、職人ではない者が工具を握っても、不揃いでなく、商品としての完成度をしっかりと備えたものが作れるデザインであることが第一に求められる。そこにデザインの難しさがあるようだ。

インターオフィスの新商品発表会「inter.office EVENT 2015 BACK TO THE OFFICE」では、Vitra、artec、USMなど海外ブランドの新商品も展示中。東京会場は9日(金)21時まで(最終日は「1日限りの“Furniture Cafe”」がオープン、JAZZ LIVEも)。同社大阪ショールームでも13日から16日まで開催予定。




+飲食のメモ。
8日のスペシャルトークイベント終了後、3階の展示会場で懇親会も開催され、宮城県産ササニシキで握った「秋のおむすびプレート」が供された(作成:ごはん同盟
笹かまぼこ、秋野菜のチップス、さんまの蒲焼きむすび、小豆と栗のおむすび、どれも美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

中村拓志×パネライ「Diving Bell」@ DESIGN TOUCH 2015

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東京ミッドタウンで16日から開催されるデザインイベント「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2015」。今年の「Salone in Roppongi」におけるインスタレーションは、建築家の中村拓志氏NAP建築設計事務所が会場デザインを手掛けた体験型展示。

写真は会期前日の内覧会時のもの。2日後の土曜日の午後に前を通りがかると、順番待ちの列ができていた。


「Salone in Roppongi」とは、毎年4月に行なわれる世界最大級の国際家具見本市「ミラノサローネ」で活躍する日本のデザイナーや企業を紹介するもので、今年で3回め(第1回はnendo×大塚家具、昨年は吉岡徳仁氏による「SPARKLE LOUNGE」)
今年の展示は春にミラノで展示されたものではなく、デザインタッチのテーマに沿ったオリジナル。特別協賛は、イタリアの高級時計メーカーであるOFFICINE PANERAI(オフィチーネ パネライ)のブランドイメージ、世界観を表現したもの(詳細:「六本木未来会議」クリエイターインタビューno.59: 中村拓志インタビュー
パネライの創業は1860年、フィレンツェの時計工房に遡る。その技術の良さからイタリア海軍特殊潜水部隊が使う精密機器類や深海用の機械式腕時計を開発、納品してきた歴史がある。会場には最新モデルの展示も(そのうちのひとつを中村氏が左腕にはめていた)
本展のタイトルはかつてDiving Bell(ダイビングベル)と呼ばれた潜水装置に由来する。会場に設置された5つの"潜水球"の中に潜りこむと、六本木に居ながらにして90秒の深海ダイブを疑似体験できる。
1つのブースの中に1名ずつ入って深海を探検する。高さが違うのは大人でも子どもでも、背丈にあわせて楽しめるように。
スチールの球体は川崎の町工場の職人が"へらしぼり"で削り出したもの(註.TV東京『和風総本家』の各種職人特集によく登場する驚異の塑性加工)
ブースに入り、背後のカーテンを締めて、スタート。上の画で赤く染まっている、半球状の投影スクリーンに360度囲まれて一人、不思議な視聴覚体験に"ダイブ"する。中村氏が前述インタビュー記事でもコメントしていたが、体験後に映画「グラン・ブルー」の映像美を想い出した。
Salone in Roppongi 2015」会場はガレリアB1F アトリウム。会期は10月25日まで(「DESIGN TOUCH 2015」の会期中盤で終了するので注意)、オープンは11-21時、入場無料。

Salone in Roppongi presented by OFFICINE PANERAI
www.tokyo-midtown.com/jp/designtouch/2015/entry/entry06.html




過去の飲食メモ。
・会場に面したアメリカンダイナー「Baker Bounce
・ガレリア1階 ベーカリー「浅野屋(この時期はかぼちゃや栗を使った秋メニューあり)
・ガレリア3階 イタリアン「KNOCK

「Vitra x Blue Bottle Coffee」@清澄白河

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ブルーボトルコーヒー 清澄白河 ロースタリー&カフェ」にて、今月17日から約1か月の期間限定で開催される「Vitra x Blue Bottle Coffee」の内覧会へ。
今回の展示イベント期間中に限り、オープン時より店舗内で使われていたテーブルやチェアが、スイスの家具メーカーVitra(ヴィトラ)の新作家具と入れ替わる。会場構成は同店の設計者でもあるスキーマ建築計画の長坂常氏。

駐車場側の壁面には、今回のイベントのためにビジュアルも描き加えられた。
云わずと知れた同店は、米国オークランド生まれのブルーボトルコーヒーの日本進出第1号店。今年2月のオープン以来、行列のできるサードウェーブコーヒーの筆頭として話題を集め、今でも休日になると入店待ちの行列ができる。イベント前日の内覧会(事前予約制)では待ち時間なし。ありがたし。
入口の右脇には1m×1mのパレットが積まれ、Vitraのコレクションより、ブルーボトルコヒーのブルーでコーディネートされたチェアが展示されている(木製パレットについては後述)
倉庫だった建物をコンバージョンして1階がカフェ、焙煎所、突き当たりは生豆の袋などが積まれた倉庫となっている。空間を隔てる間仕切りはなく、完全に丸見えの状態。2階はスタッフオンリーのオフィスおよびキッチンが置かれている。
コーヒー豆の状態をスタッフが確認するカッピングルームとして、床から天井まで続くガラスの大扉で仕切られていた空間が様変わり。Vitraが取り扱うパントンチェア、ハル チューブ、イームズエレファント、ティップトンが、既存のLSL(: Laminated Strand Lumber、厨房カウンターの前板にも使われいる、米国産の木質ボード)の上に敷かれたパレットをステージにして並ぶ。さらにその上がイベント期間限定のカフェスペースとなっている。昇降用のスチール階段も向かって左脇に設置された。
仮設のカフェスペースからの眺め。今春のミラノサローネで発表された最新コレクション「ベルヴィルファミリーBelleville Familly)」(ベルヴィルチェア・アームチェア、テーブル)が配置されている。コレクションのデザインを担当したのは、ロナン&エルワン・ブルックRonan & Erwan Bouroullecのふたり。パリ市内北東部の高台にある、フランス語で"美しい街"を意味するBelleville地区からその名がとられた。同兄弟がデザインスタジオを構える地区であり、クリエイティブな人々が集まるエリアとして知られているとのこと。
ベルヴィルテーブルBelleville Tableは天板の素材が2種、かたちは円と角、角形は小さなビストロテーブルから大きめのダイニングと数種類のサイズあり。用途に応じて選べる。チェアBilleville chairのシートシェルも、成形合板、ポリプロピレン、レザー張り、ファブリック張りから選ぶことができる。国内でのお披露目として、ただ並べて終わるのではなく、カフェ空間で実際に使ってもらい、使うシーンのイメージをさまざまに膨らませてほしいと実現したのが今回のコラボイベント。
これらのコレクションが発表されたミラノサローネのVitra会場を手掛けたのが、ブルーボトルコーヒー清澄白河店、続く表参道店の設計を担当し、米国ニューヨーク市ブルックリン地区ほかでも新店が進行中という、スキーマ建築計画代表の長坂常氏。16日の夜には、Vitraホームコレクションのチェアに腰掛けながら、長坂氏のレクチャーを聴くという趣向のトークイベントも開催された(進行役は、ミラノ会場やスキーマ建築計画のリノベーション住宅も取材で訪れたことのあるフリーライターの猪飼尚司氏)
トークイベント参加者にはブルーボトルコーヒーのホットがふるまわれた。ごちそうさまでした。
Vitraが今年のミラノサローネのテーマに掲げたのが、反復を意味する"repeat"から派生した"リピテーション"。そこで、長坂氏が商品のステージとして考えたのが、入店前にも目にした、木製の正方形荷役用パレット(日本で使われている1m×1mのサイズが国際規格と思いきや、現地のパレットは長方形だったため、オリジナルで製作している)。正方形にこだわったのは、長方形のステージでは見せたいプロダクトの並びに制約をかけ、見る側の視点や場内の動線に方向性が生まれてしまうため。「プロダクトから受け取る印象は、人によって異なるのが自然。見せ方を一定にせず、プロダクトを眺める方向を来場者に自由に選択させ、なおかつどこからでも入ってきやすい会場にしたかった」と長坂氏。


Vitra at Salone del Mobile 2015(再生時間 4分41秒)

見本市での展示では、自社ブースを壁で囲いこみ、来場者には自社の製品にのみ集中してもらうのがセオリーだが、Vitraのブースは長坂氏の意向を反映して壁をたてなかった(Vitra社による会場写真付き英文ニュース.pdf。これにより、とても大きな"透け"、"抜け"感が生まれたものの、他社の出展ブースやロゴまで見渡せてしまう事態に。だが逆に、現地では新鮮と受け止められて話題を集め、高評価にも繋がったらしい。「広場のよう」とも形容されたそうだが、長坂氏としては広場をイメージしたものではなく、あくまで「ウエルカムな空間にしたかったから」。
トークの後半は、長坂氏が今年手掛けた住宅リノベ事例《つつじが丘の家》と《鳩ヶ谷の家》に関するレクチャー。どちらも必要な耐震補強を施しながら、住まい手にとって心地良い空間とはなにかを考えて設計されている。「細かなシーンを想定して設計すると、却って空間が複雑化して使いづらくなる。空間とは生長・成長していくものであり、初めから完成形は想定しない。建築家として何か"きっかけ"をつくってやり、使い手の自由度を拡げられるようにしている」という言葉は、今回のミラノでの会場構成に通じるものである。
展示イベント「Vitra x Blue Bottle Coffee」は11月23日まで。期間中に会場で撮影した「ここちよい時間」の写真にハッシュタグを付けて投稿すると、「いいね!」の獲得数を参考に選出された上位3名にスペシャルギフトを贈呈する「インスタグラムフォトコンテスト#VitraxBlueBottleCoffee」も実施中(詳細:Vitra x Blue Bottle Coffee Facebook

Vitra 公式サイト
www.vitra.com/




+飲食のメモ。
ブルーボトルコーヒーのブレンドとともにいただいた、かぼちゃとシナモンのきいたパウンドケーキが濃いぃホットにぴったりで、美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

ブルーボトルコーヒー 清澄白河 ロースタリー&カフェ
https://bluebottlecoffee.jp/cafes/kiyosumi

21_21DESIGN SIGHT企画展「フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"」

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21_21DESIGN SIGHTで企画展「フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"」が16日から始まった。同館で大規模な建築展が開催されるのは、開館した2007年の特別企画「安藤忠雄 2006年の現場 悪戦苦闘」以来。
展覧会ディレクターを田根剛氏が務め、会場構成を田根氏が共同代表を務める設計事務所 DGT.DORELL.GHOTMEH.TANE/ARCHITECTSが手掛けていることでも話題。会期2日めの午後には、田根氏のレクチャー付きで会場を巡る、90分間のギャラリートークが開催された。

フランク・ゲーリー(Frank Gehry)は、1929年カナダはトロント生まれの建築家。現在は米国ロサンゼルスにスタジオを構える。建築界の巨匠をフィーチャーする本展の見どころは「I Have an Idea」に集約される多彩なアイデア、その数々の成果(参考:同展公式サイト「ディレクターズ・メッセージ」)

「会場には、いわゆる建築展にみられるような図面は一枚もない。デザインをテーマに掲げる美術館で開催するのだから、ゲーリーのアイデアをみせる展覧会にしたかった」と田根氏。さらには「昨今の建築界はネガティブな話題ばかり目立つが、ポジティブな思考から生み出されるのがアイデア。これからの社会や世界を変えていくものだ」と明快に語った。

受付前で無料展示されている縮尺1/50模型は後述。
地下にある展示会場は5つの章立てで、地下ロビー空間で展開されているのが「ゲーリーのマスターピース」。
スペイン、米国、フランスに建てられたゲーリーの代表的な3作品の内外観を撮影した映像が、ロビーの壁面に投影され、圧倒的な迫力で来場者を包み込む。
ループ上映される映像は、《ビルバオ・グッゲンハイム美術館》,《ウォルト・ディズニー・コンサートホール》,《ルイ・ヴィトン美術館》の内外観(撮影:LUFTZUG|facebook。「建築とは本来、その場で体感するもの。今回はLUFTZURGの遠藤豊さんの映像の力を借り、少しでもゲーリー空間を疑似体験してもらえれば」と田根氏。
セパ穴跡が残るコンクリート打ち放しの壁に、ゲーリー建築を覆う金属パネルが、またある時は別の内部空間が映し出される。本展と安藤建築との対話であり、かつ、建物の内部である壁にゲーリーの外壁が重なることで、建物は内部ありき、居心地の良い人々を安心させる空間をつくるために外部が存在するという、ゲーリーが訴求し続けている理念も同時に表現している。
21_21 DESIGN SIGHTのディレクターである三宅一生氏から今回のオファーを受けた田根氏は、2013年の暮れにゲーリーの事務所Gehry Partners, LLP.を訪問、その際にゲーリーは自身の"マニファスト"を目の前で読み上げてくれたのだという。「ゲーリー・ルーム」と題したギャラリー1会場でループ上映されているのがそのシーン(展覧会公式サイトでも同じ動画を公開中)。読み終えた後、チラと映る巨匠の笑顔がなんともチャーミング。
会場ではそのマニファストの原文と和訳の両方が並んでいる。
手で紙をクシャと丸めて伸ばしたようなものにマニフェストを記しているのは、ゲーリーが活動の拠点をおく米国で人気のTV漫画「シンプソンズ」の放送回のなかで、《ウォルト・ディズニーコンサートホール》の特徴的な外観を揶揄されているエピソードをリスペクトしたものだろう(ゲーリーを模したキャラクターの声を、なんとゲーリー自身があてている)
「シンプソンズ」のアニメ、映画やドキュメンタリーなどに登場するゲーリーの姿は、レトロなモニター画面に繰り返し映し出される。会場で腰掛けられるチェアは、ダンボールを素材とした「イージー・エッジ・シリーズ」。ゲーリーが注目されるきっかけとなったもので、1970年代前半の頃。建築家としての評価を高めたのはその後、1978年に49才で手掛けた自邸の増改築であった(参考:10+1web公開論考「魚座の建築家、フランク・ゲーリー」五十嵐太郎)
自邸の内部を映像で見ると拍子抜けするくらいフツーに感じられたが、模型をグルリとひと周りしてみると、ゲーリーだなぁと納得。
ギャラリー1での展示タイトルは「ゲーリー・ルーム」。彼のオフィシャルな側面とプライベートの面を1つの空間で比較している。ゲーリーの思想、信念、知られざる人間性の一端に触れる部屋だ。アイスホッケー好きを物語る名前入りユニフォームや、今日でも時おり手に取るという書籍が数冊(日本関連書もあり)、お気に入りの絵画、スケッチなどが壁を飾り、平台には(ギャラ間の「藤本壮介展」で目にしたような)スタディ模型が並ぶ。本展のテーマである"idea"の原石が、ゲーリーのスタジオには溢れているらしい。巨匠はこれら日々の"雑然としたものからインスピレーションを受ける"("カッコ"内は場内展示より一部引用)。次の展示室・ギャラリー2会場の5-6倍の床面積、天井高は約2倍というゲーリースタジオの様子は、大判写真と動画で紹介されている。
雑多なようでいて、プロジェクトチームごとの配置になっているスタジオでは、初期から最新に至る全ての模型が保管されている。変遷が一目でわかるように並んでおり、出所したゲーリーのチェックを受けるそうだ。本展で観られる模型は、約120名のスタッフが働くこの空間から生み出されたもの。上の画の模型は《ル・ルボ脳研究所》の最終形に近いもの。
人間・ゲーリーに触れる、暖かみのあるライティングのギャラリー1から一転、多数の模型をみせるギャラリー2の照明は白色が強め。ここ数年に竣工した、あるいは竣工予定の6つの作品にフィーチャーした展示。
導入部の壁に大きく掲出されているのが、田根氏が考えた、ゲーリー作品の要素を相関図で示した「アイデアグラム」。
ギャラリートークの場で田根氏が興味深い指摘をしていた。意訳すると、ゲーリーは自作を語る場面において、決して「自分の建築(architecture)は〜」と云わず、決まって"bulding"を使う。つくっているのは"building"であり、"architecture"とは後世の歴史が名付けるものだとゲーリーは考えているそうだ。
展示台の殆どはハコを積み重ねたような形状で、誘導矢印にそって一周すると、初期のアイデアにさまざまな検討と変更が重ねられて竣工に至ったのか、一連の流れをざっくりと追えるようになっている。2010年にラスベガスに建てられた《ル・ルボ脳研究所》の始まりは、ゲーリーが重視する内部空間のスタディから。
模型は高低差をもって展示されている。見上げたり見下ろしたり、さまざまな角度からゲーリー作品を眺めてほしいという田根氏のアイデア。各展示物の周辺には、その展示に最も近いと思われるゲーリーの言説が添えられている(企画協力:瀧口範子)。会場を周遊する歩みに呼応して、金属の外皮を思わせる銀の文字がキラリと光る。
オーストラリア・シドニー市に2014年に竣工した《UTS(シドニー工科大学)ドクター・チャウ・チャク・ウィング棟》の模型が並ぶ展示台。
キャプション:"流れるような自由な形状を外壁にしてみたアイデア"
目を惹く外壁に注目が集まるゲーリーだが、考え方としてはなによりも主は内部空間であり、外壁はあくまで従。場内に掲出された複数のテキストも語る。"内側から建築をつくる"、そして"内側と外側は互いに呼応するもの"だと。外装材が波うつ《UTS》の模型のひとつにも、"内部空間と家具の配置をこの模型で考える。"というキャプションが付く。

下の画は、注目されることが少ない、ゲーリー作品における「インテリアのスタディ」をまとめた展示。
ゲーリーは過去に家具のデザインも手掛けており、場内には実物展示もあり。前述したように、建築よりも家具が先に脚光を浴びたため、建築家と見なされなくなることを懸念したゲーリーは10年ほど家具のデザインから遠ざかった。
4点のうちひとつは、キービジュアルでゲーリーが座ってくつろいでいるチェア。
2012年竣工《メイク・イット・ライト》の展示は台1つに集約。2005年に米国ニューオリンズを襲ったハリケーン・カトリーナの猛威は未だ記憶に新しい。俳優のブラッド・ピットが立ち上げた、復興住宅の建設を支援する Make It Right 財団によって現在、目的の2/3である100軒が建ち、そのうちのひとつをゲーリーが設計している。
上の画、奥:2011年にニューヨーク市マンハッタン島南東部に、高さ76階で建てられた《エイト・スプルース・ストリート》の展示台。旧称「ビークマン・タワー(Beekman Tower)」。
旧《ビークマン・タワー》の外壁パネルの総数は10,272枚、にも関わらず使っているパネルは3種類だけ。このような超高層、複雑な"外皮"を纏うビルディング建設を可能にしているのは、ゲーリー・テクノロジーズGehry Technologiesと呼ばれる技術集団の存在だ。ギャラリー2会場の一角で流されている解説動画(製作:WOW)に拠れば、ゲーリーは1989年にヴィトラ・デザイン・ミュージアムで手掛けた作品で、転機となる"失敗"をしている。3Dソフトで作図した螺旋階段が図面通りに施工されたにも関わらず、現場で誤差が生じたのだ。似たような自由曲線の製造方法を調べたゲーリーは、航空宇宙工学の領域で使われていた3D-CADソフト「CATIA」に着目、これを応用させた。続く1992年のスペイン・バルセロナでは、魚を模した複雑な形状の作品を見事につくり上げている。頭の中で3Dで考えたものを→2Dの図面に書き直し→その2Dを元に3Dのビルディングをつくる=従来のプロセスから「2D」部分を無くすことによって、工期は大幅に短縮し、ミスの発生を抑えられる精密な現場管理が可能に。削減できた費用はデザインの価値へと転化される。
総床面積4万平米、端から端まで歩くと15分もかかるという《フェイスブック本社 西キャンパス》も、ゲーリー・テクノロジーズにより、設計依頼からわずか3年で今年竣工している。もちろん見積もった予算内である。一般的にBIMと呼ばれるこのシステムは、米国ではゲーリー事務所以外にも使われている(関連:NHK特番「ネクストワールド」視聴備忘録。どの部品がいつ耐久性能の限界を迎えるかまで事前に把握できるゲーリー・テクノロジーズは「未来を見据えたシステムである」と田根氏。前述の「アイデアグラム」の3大要素のひとつ"technology"は、ゲーリー作品を根本を支えるシステムであり、日本の今後の建築界、社会の行く末を占うものだろう(田根氏がナレーションを務め、場内で唯一撮影不可となっている映像資料を見ながら、今夏より物議を醸している2020年五輪大会の某競技施設もコレなら・・・と思った人は少なくないはず)
2012に設計を開始し、2018年にフランス・アルル市に竣工予定の「ルマ財団」の模型群。その奥のスクリーンでは、デジタル技術を駆使して設計された建物が、人間の手によって造り上げられていく光景が映し出される。
さて、ゲーリーといえば、やはり外壁を抜きには語れない。各種マテリアルの豊かな表情を切りとった写真パネル(撮影:アンドリュー・プロコス)と並んで、金属板「発色チタン」の実物展示がある。
中央のゴールドと向かって右端のピンクは、2006年竣工《ホテル・マルケス・デ・リスカス》で使用された発色チタン、青いものは2000年《コンデ・ナスト本社》にて。これら発色チタンは新日鉄住金株式会社製。ナノ単位で厚みの調整が可能なコーティング技術により、見る角度によって色味が変化し、独特な光の反射となる。
この3枚の金属板は、正面と斜めからの眺めを比較すべし。
「他の分野と比べて建築が持つ希有の特徴は、空間を包み込んでいるということだ。私が、外皮の操作に熱中するのも、多分そのためだろう。絵画や彫刻とは違うんだ。」
ギャラリートークの最後に、田根氏は参加者からの質疑にも応じた。ツアー冒頭で「ゲーリー作品が大好き」と述べ、そのきっかけを問われて、そもそもはガウディが大好きで建築を志した田根氏は、進んだ大学の洋書セールでゲーリー作品に出逢い、こんな建築があるのかと強いショックを受けたのだそうだ(ガウディとゲーリーが結びつくのかと、聞いたこちらも軽いショックを覚えた)
2013年12月から本展の準備に取りかかった田根氏によれば、ゲーリー作品を読み解く時、キーワードとして浮上するのが"魚"とのこと。ゲーリーが前述の階段施工で苦渋をなめた後、リカバリーに成功したのが《FLYING FISH》という名のオブジェ(そういえば、ティファニーのためにゲーリーがデザインしたアクセサリーにも"FISH"がある)
場内の年表によれば、これまでに発表されたゲーリー建築は約150。これを多いとみるか、少ないとみるか。遅咲きの巨匠の言説は会場の最後まで続く。
ゲーリー作品を書籍の見開きでみせる。
閲覧コーナーのテーブル天板はダンボール製。
見逃した言説や模型、ゲーリーの"idea"は多々あるに違いない。濃く、刺激的な時間を甘受し、疲労困憊気味に会場を辞す際には後ろ髪をひかれた。
1階受付前に展示された《ルイ・ヴィトン財団》縮尺1/50模型。上の画は日中、下の画は館内照明に照らされた日没後のもの。帆船のようであり、鯨のようでもある。
なお、表参道にあるエスパス ルイ・ヴィトン東京では、今月17日から来年1月31日までの会期で「パリ - フォンダシオン ルイ・ヴィトン建築展」が入場無料で開催されている(12月31日は18時閉場、元旦休み、開廊:12-20時)

21_21DESIGN SIGHT「フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"」は来年2月7日まで。開館は11-19時。地下の企画展会場は有料。休館日は火曜(但し、11月3日は開館)と年末年始(12月27日-2016年1月3日)
なお、本展が終了する2月の末日に、1929年生まれの巨匠は御年87才を迎える。

21_21DESIGN SIGHT
www.2121designsight.jp/




+飲食メモ。
東京ミッドタウン開館時よりガレリア地下1階に店を構える[パティスリー・サダハル・アオキ・パリ]。10月末までの期間限定で、"ラム酒が香る大人のアイス"「グラスキャラメルマロンラム」を販売(消費税込¥450ナリ)

店内でいただく場合は、ドリンクオーダーが必須。館内"食べ歩き"を選択、[とらや]前のベンチで撮影した左の画ではチラとしか写っていないが、中はマロンがゴロゴロ、これでもかと入っている。
下戸の口にも美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

パティスリー・サダハル・アオキ・パリ
www.sadaharuaoki.jp/
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