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IFFT/インテリア ライフスタイル リビング@東京ビッグサイト

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東京ビッグサイト 西ホール1・2ホール+アトリウムで開催中の「IFFT/インテリア ライフスタイル リビング」へ。
「IFFT/インテリア ライフスタイル リビング」は、東京から世界へ向けて「ライフスタイルを提案する」インテリア・デザイン市場のための国際見本市(主催:一般社団法人日本家具産業振興会、メサゴ・メッセフランクフルト株式会社)。19の国と地域から432社(うち国内378社)が出展。B to Bの商談見本市につき、一般の入場は不可となっている。場内はプレス以外は撮影も不可。
注記.本稿に掲出している会場写真は、主催者側に事前申請したうえで、各出展者の許諾を得て撮影したものに限る

毎回話題となるアトリウム特別企画。昨年に続いてのテーマは「THE HOTTEL」 、サブタイトルは「旅館とおもてなしJAPAN」。日本の多くの旅館にみられる「おもてなしの心」にフィーチャー(ディレクター:株式会社t.c.k.w 代表取締役 立川裕大氏)。ブースの数は30。
11月25日,26日,27日の会期中、アトリウム裏手の「LIFE STYLE SALON 2015」では、橋本夕紀夫氏や「THE HOTEL」ディレクターの立川氏も登壇するトークショーも開催される。

アトリウム会場を見学中、トラフ建築設計事務所の鈴野浩一氏と遭遇。来年の「Interior Lifestyle Tokyo」アトリウム企画のコラボレーションディレクターを同事務所が務めるとのこと(Interior Lifestyle Tokyo facebook 6月22日掲出情報→主催者リリース.PDF)。
アトリウムA-14市川織布工場
愛知県蒲郡市で創業50年の織布メーカー。ブースの平台に置かれているのは柔らかいガーゼケット、その上に下げられたストライプの商品は「イチオリシェード」。ベーシックと遮光の2タイプあり。ケットとは異なる織り方なので硬質。
壁側に並んだ木枠に張られたものは参考商品。室内の間仕切りとして使えそう。
これまでホテル関連の見本市には出展しているが、インテリア系は今回が初めてとのこと。

A-20 YAMAGIWA
「影と光のデザイン」をテーマに、インテリアスタイリストの中林友紀氏がスタイリング。上の画、右端から、ブラックバージョンの〈TALIESIN BLACK EDITION〉、伊東豊雄〈MAYUHANA MA BLACK〉、driade〈NEMO〉。
上の画の〈MAYUHANA MA BLACK〉はやや赤みがかってみえるが、本来の"真っ黒"さは、下の画が正しい。
西1ホール1-001 特別企画展「黒の世界 by 芦沢啓治 with CONFORT」
漆、モルタル、大理石、いぶし瓦、焼き杉、和紙、ステンレスなど、各種マテリアルにみられる"黒"に特化した展示。

1-006光洋製瓦のいぶし瓦による壁材、1-007ユタカ建商 木楽、1-021平田タイル、1-036モメンタムファクトリー・Oriiなど出展23社がまとめられた[CREATIVE RESOURCE] 会場を見て後、以下、西1ホールの端から、グルリと"コの字"に会場を駆け足で巡る。
西1ホール1-155石巻工房
天板がグレーのテーブルと、天板が黒いシェルフは、芦沢啓治氏デザインによる新作。脚はスチール、床との設置面に木材を補強して面積を広くしている。
展示されているそのほかの新作家具誕生の経緯は、別稿:インターオフィスの2015新作発表イベント「inter.office EVENT 2015 BACK TO THE OFFICE」の備忘録にまとめている。
上の画右:ニ俣公一〈ラウンジチェア〉+オットマン付き、その左:トラフ/鈴野氏デザインの〈リトル ピクニックテーブル〉。

西1ホール1-184センプレデザイン
MOSS、SAND、LEAFなど、センプレがコーディネートした7つのテーマカラーに基づいた展示。上の画・手前の淡いグレーとピンク色のチェアは、センプレオリジナルのカフェチェア・ベントの無塗装ビーチ材を、天然素材90%+水にもこだわってつくられた日本製の木材用塗料「mizu color」で塗装したもの(センプレのT社長自ら刷毛を握ってDIYを実践)

西ホール1-187 カリモク家具
代官山T-SITE ガーデンギャラリーで先月開催された「KARIMOKU NEW STANDARD Exhibition 2015 Tokyo」で発表された新作の数々。
加えて、ブースの反対側では、新ブランド「KITONO」の披露も(11.24発表同社リリース|敷かれているラグを除く)。ネーミングは"KITONO(木との+"暮らし")という意。購入者が自分で組み立てる、同社の既製品にはなかった家具シリーズ。上の画のソファとテーブルのほか、チェア、ベンチなど。マルチボードは好みの把手や扉にカスタマイズも可能。

さて、今回の「IFFT/インテリア ライフスタイル リビング」は、北海道旭川、山形、岐阜県飛騨、広島県府中、佐賀県大川などの国内主要産地のメーカー、各団体が多数出展し、秋田杉など国内材を使った家具も見られるのが大きな特色。西1・2ホールにまたがり、全体の1/3強のスペースを占める。
西ホール1-190マルケイ木工
同社が手掛けるブランド[M-CRAFT]から新作「dual(デュアル)」を発表。デザイナーは松岡智之氏。

西ホール1-191若葉家具
小泉誠氏がデザインした仏壇「Siu(思浮)」は、2つの宗派、2つの家の先祖が祀れるようにデザインされた、現代のライフスタイルにふさわしいかたちをしている。
このほか、小泉氏、関 洋氏ら数名のデザイナーが名を連ね、府中と大川の家具メーカー数社が共同で立ち上げたエコ・デザイン・ファニチャー・プロジェクト「kitoki」を出展。

府中家具ではほかにA-193松創が、倉本仁氏らと立ち上げたブランド「MEETEE」を発表(昨秋の「Any Tokyo 2014」で見たときのブランド名は「MATUSO T」だったが、改名したらしい)
西1ホール1-204 大川市インテリア課のカウンター前板部分の装飾。1-222に出展中の生松工芸による見事な組子細工。

西2ホール2-173と2-183旭川家具工業協同組合
今年6月に旭川で開催された「ASAHIKAWA DESIGN WEEK 2015」のメイン会場にて、藤本壮介氏がスペシャルインスタレーションを担当した「ASAHIKAWA Forest」が再現された。
短冊が連なった木の下端は床面に設置しておらず、ゆらゆらと揺れている。

西2ホール2-162天童木工のブースでは、新作2点:安積伸氏デザイン〈Rall〉と、小林幹也氏デザイン〈DAN〉の発表のほか、アクシスギャラリーでの「愛のコンティニュアスデザイン」展で発表された〈ラケットチェア〉の展示も。
西2ホール2-128 日本の木 ニッポンの家具
主催は一般社団法人日本家具産業振興会、林野庁の補助事業。国内の広葉・針葉樹をつかったライフスタイル提案型展示。天童木工、飛騨産業、ワイスワイス、オークヴィレッジなど協力企業のほか、27組41名のデザイナーが作品を発表。会期中は各種セミナーやプレゼンも。
この遠くからでも一目をひく空間インスタレーションは、秋田県産杉材突き板によるもの(資材提供:丸松銘木店、デザイン:(株)ATMOSMITH時園 勇)

西2ホール2-139溝川
京都の家具・建具メーカーによる、京都府産の杉・桧を使ったブランド「KIKOE」。

毎年注目の若手デザイナーの作品が見られる[TALENTS]のエリアでは、T-03 MUTEが、会期初日に出展者らによって選出されるYOUNG DESINER AWARDを受賞。出展作品は〈KIOSK〉と〈TARTAN〉、現時点で共に参考作品。
西2ホール[NEXT]N-26 24d-studio
神戸を拠点に活動すているデザインスタジオ。雲からインスピレーションが沸いたという照明器具のシリーズ〈Airy〉の素材は強化和紙

西2ホール[NEXT]N-29 CONSENTABLE
W1600×D900の桧のマルチテーブル〈CONSENTABLE/MT〉に格納された6つの抽斗(ひきだし)は、ランチョンマット、ノートパソコン、外付けHDなど外部端末、A4サイズ書類などが収まるサイズ。それぞれ電気配線も可能。テーブル中央部にはコード配線用の穴もアリ、使わないときは付属品を使って花瓶にも。
デスクではなく食卓でパソコン操作やノマド的に仕事をする人が増えている、現代のライフスタイルにあわせたデザイン。ブランド第一弾のプロダクトであるワークテーブル〈CONSENTABLE/WT〉の進化形。

西2ホール2-032地域材オープンソースファーニチャープロジェクト
著作権を開放するオープンソースの理念に基づく、日本の森林保全と育成を促すことを目的とするプロジェクト。製作図面のダウンロードやカスタムは、国産木材を利用する場合に限る。デザイナーはNOSIGNERさん。計15アイテムと、昨年のIFFT出展よりもアイテムが拡充。

西2ホール2-047 KANAYA
高岡銅器の金属鋳造技術によるブランド(参画している複数のデザイナーの一人、小林幹也氏が昨年5月にOZONEで作品展を開催した際、コートスタンド〈MK+01〉やタオルスタンド〈MK+03〉(上の画奥)などを見たことがある)。上の画手前:新作のサイドテーブル(デザイン:紺野弘通氏)。800幅というサイズでアルミ鋳物が可能という。

会場の様子や付随情報は「Blend*Board」〜【家具・インテリア 最新画像】のまとめが詳しく、わかりやすい。

IFFT/インテリア ライフスタイル リビング
www.ifft-interiorlifestyleliving.com/





+飲食のメモ。
場内のカフェにて。池袋に1号店がある「寝かせ玄米おむすび いろは」が特別出店(テーブルとチェア提供:石巻工房
左の画は「おむすび弁当」にホットコーヒーとスコーンという取り合わせの画。宣伝文句通りの「もっちもち」玄米、美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

弁当に付いてきた割箸は岡山県西粟倉村の杉・ひのきの間伐材を使って、漂白剤や防カビ剤など無しで精製されたもの(割箸袋の裏に記載あり)。こういう細かなところまで行き届いているとは、なんと素晴らしき哉。

MAIN「夜のショールームへようこそ」@南青山

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南青山にショップを構えるインテリアブランド6社によるイベント「MAIN(:Minami Aoyama Inerior Netwark、メイン)」を昨年に続いてみてまわる。開催は今年で3回め。

会期中に限り、営業時間を21時まで延長し、各ストア・ショールームではシャンパンなどもふるまわれる。寛いだ雰囲気のなか、ふだんはなかなか近寄り難い高級ソファに座って、訪れた人々との会話も楽しめるのが「MAIN」の魅力。第1回(Minami Aoyama Inerior Night、メイン)からの発起人であるジョー スズキさんの尽力によるもの。

今年は26日(木)が外苑地区の4ブランド(:ACTUS、Wilkhahn、Carl Hansen & Son、Knoll、YAMAGIWA)、27日が南青山地区と、2晩に分けての開催。

「MAIN」南青山地区
開催日時:2015年11月27日(金)17-21時
会場:各ショールーム・ストア
参加ブランド:IOC(アイオーシー)、GERVASONI(ジェルバゾーニ)、FLEXFORM(フレックスフォーム)、LE STANZE(レ・スタンツェ)

上の画に写っているDM両面に、各日のコース案内と、各所の見どころも添えられている。
IOC(アイオーシー)
2006年設立。ふだんは予約制で、初参加となる「MAIN」に合わせて、ショールーム内に内外のインテリア木材サンプルを展示。
表面にフシやちょっとした亀裂が自然に入っている木材は、以前ならば製材の段階でハジかれていたが、カフェなど商標店舗のフロアにスタイリッシュに使われて流布した影響で、次第に住宅の中にも入ってきたという昨今の経緯を聞く。成る程。

IOC → GERVASONI(徒歩約2分)
GERVASONI(ジェルバゾーニ)
10月下旬から始まっているパオラ・ナヴォーネのスペシャルディレクション「GERVASONI NEW COLLECTION 2015」に新作アイテム数点を追加しての展示。
ストア2階の壁紙のアップ。

GERVASONI → FLEXFORM(徒歩約2分)
FLEXFORM(フレックスフォーム|注.リンク先のトップページは音楽が流れます)
ストア1階にて。2階のソファはさらに広々として大きかった(大人気)

LE STANZE(レ・スタンツェ)までは徒歩約3分。こんなところに!という閑静な住宅街の中に、今年9月にオープン(内外観撮り忘れる)。今回を機としなければ、知らないままだったと思われ。下戸でもMAINのようなイベントはまこと有り難し。





+飲食のメモ。
昨年は行列ができていて入店を諦めた[Clinton St. Baking Company(クリントン ストリート ベイキング カンパニー)] を予約し、昨年も一緒にMAINを巡ったSさんとディナー。

マンスリーベネディクト4周目メニューの「ノルディックベネディクト」(¥1,900+税)、「チーズバーガー」(¥1,600+税)、謎のネーミング「アーノルドパーマー」なるソフトドリンク(アイスティー+レモネード|¥650+税)ほかをオーダー。
じっくり火を通したオニオン甘し。おいしゅうございました。ごちそうさまでした。

クリントン ストリート ベイキング カンパニー(Clinton St. Baking Company)
http://clintonstreetbaking.co.jp/

増上寺 宝物《台徳院殿霊廟模型》

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芝の増上寺宝物展示室で公開中の「台徳院殿霊廟模型」を観に行く。
入場料700円で、「生誕200年記念 狩野一信の五百羅漢図展」も見ることができる。ガラスケースの中に収められた模型がフロアの中心に据え置かれ、四方を一信の羅漢図が囲んでいる。
驚いたのが、受付でチケットと一緒に渡されたこの入場特典。「大本山 増上寺 徳川将軍家旧御霊屋 絵葉書」。第2展示室内でループ上映中の映像資料にも写っていた、1945年空襲で焼失する前のモノクロ写真の絵葉書10枚セットと、絵葉書の通番と連動させた、明治34年に発行の「境内全景」が付いてくる。超おトク。

《台徳院殿》は徳川秀忠公の霊廟であり、日光の《東照宮》に比類する絢爛豪華さを誇ったらしい。旧国宝にも指定されていた。当時の写真や、かつて広大だった境内図、そして今年になって英国王室から"里帰り"した巨大模型によって、在りし日の姿を想起するしかない。下の絵図の左上・1番が現存する《霊廟 惣門》、さらに左奥に焼失した《奥の院宝塔》があった。
模型は1920年にロンドンで開催された日英博覧会出展のために制作され、高村光雲らが監修者として関わった。学生が片手間につくったのではなく、当時の宮大工や職人の技が結集された入魂の縮尺模型。場内撮影禁止はいいとして、願わくばガラスケース無しか、映り込みのない仕様のガラス越しに見たかった。

下の画は宝物展示室を出たところの画。
石組みかと思いきや、溝を掘り込んで、組んでいるかのように見せた意匠であった。
この日は(先月〈Any Tokyo 2015〉が開催された)光摂殿の上階にある、大広間の天井絵も無料公開中(春と秋の年2階公開される)
小倉遊亀を筆頭に120名の日本画家が筆をとり、平成9年(1997年)から制作に3年をかけたもの。
会場で配布された「天井絵一覧」のナンバリングがまさかの伏せ図で、照合に難儀する。

増上寺 facebook
https://www.facebook.com/zojoji/




+飲食のメモ。
増上寺境内では11月28日、29日の2日間、「ミャンマー祭」を開催中。ワンコイン(¥500)でミャンマー各地の郷土料理を味わえる屋台などがズラリ。
周囲で飛び交う異国の言葉、異国語訛りの売り子の呼び声、独特の活気をBGMに、宝珠をいただいた瓦屋根を眺めながらの立ち食い。なんとも不思議な光景であった。

人生初「シャンそば」(@早稲田 ノング インレイ)と、その隣で「グリーンカレー」(@大森 アジアンフード メッタ)を食す。

どちらも美味しゅうございました。なんたって安いし、山盛りではないかられもこれも食べたくなる。腹ペコで行くべし。ごちそうさまでした。

ミャンマー祭
http://myanmarfestival.org/

丹下健三《旧電通本社ビル》@築地1丁目

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銀座1丁目にある森岡書店で本日まで開催のミヤマケイさんの個展「梅より桜より椿」を観に、東銀座駅から歩いて向かう途中、丹下健三が設計、1967年に竣工した《旧電通本社ビル(電通テック本社ビル)》が目に入る。

このビルの前を通りがかったのは、かれこれ9年も前になるが、当時はオフィスとして稼働していた。今は人気なし。一帯の敷地と建物を住友不動産が取得し、今度の用途が未定なためだ(参照元:2015年1月13日『日刊建設工業新聞』記事)
これが"見納め"になるかもと思いつつ、南→東→北→西の反時計まわりに建物を一周。
《旧電通本社ビル》南西側コーナー外観 見上げ。
同ビル 南西側 エントランス付近。
同ビル 南側 石組み。
同ビル 南東側 車寄せの見通し。
同ビル 東側外観 見上げ。
同ビル 東側 石組み。建物の"ソト"まで気を配るあたりが巨匠たるゆえんか。
同ビル 北側外観
同ビル 南側
同ビル 北側 植栽まわり石組み。
同ビル 北西コーナー部分。
同ビル 北西コーナー外観 見上げ。
同ビル 西側外観 見上げ。
同 西側の一部。
同ビル 西側の植栽まわりとアプローチ。
繰り返すが、こういう石の使い方に時代性を強く感じる。村野藤吾設計の《旧千代田生命本社ビル》や《埼玉会館》で目にした数々のデザインが想起される。
同ビル 西側 アプローチ。
同アプローチのピンコロ。
これも1967年当時のデザインだろうか。
同ビル 西南コーナー部分と、石のオブジェ。

中央区が区内の「近代建築物調査」というページを開設している。もう少し情報が厚いと有り難いのだが。



+飲食のメモ。
ミヤケマイさん個展「梅より桜より椿 @森岡書店」を観賞後、[やなか珈琲店 東銀座店]で休憩。
夏場のアイスコーヒーがキューッと美味しくて好きなのだが、冬季限定の「ウィンナーコーヒー」もかなり美味しい。
ミヤマケイさんにいただいた作品掲載誌で資生堂『花椿 11月号』を読みながら、ごちそうさまでした。

やなか珈琲 facebook https://www.facebook.com/Yanakacoffee

「Marimekko Holiday pop-up shop」@代官山T-SITE GARDEN GALLERY

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代官山T-SITEGARDEN GALLERY(ガーデンギャラリー)に5日間限定でオープンしたポップアップショップ「Marimekko Holiday pop-up shop」へ。

クリスマスを前に、2015年秋冬コレクション、人気の定番商品、ショップ限定アイテムなどを販売。期間は12月2日17時から12月6日17時まで。


本稿テキストは、PRを担当したデイリープレスから届いたDMより引用。
会場構成は建築家でインテリアデザイナーのPUDDLE/加藤匡毅氏。Marimekko(マリメッコ)のデザインチームと共に、今年のAWシーズンのコレクションテーマである"Mindscape -都市の中の自然-"を表現したとのこと。薄い合板を円筒状にして並べた上に、ガラス天板などを載せた什器。スタイリングはインテリアスタイリストの作原文子氏。
Marimekko Hpliday pop-up shop」は12月6日(日)まで。最終日は17時閉場。

なお、作原氏は同ギャラリーにて今月12日から「mountain morning“WHITE”」を開催予定。




+飲食のメモ。
ガーデンギャラリーの向かいにある [IVY PLACE(アイビープレイス)]にて休憩。
前回はガッツリとランチを堪能。今回は念願のクラシックバターミルクパンケーキ(¥1,300)と、ブレンドコーヒー(¥600)をいただく。
オプションのトッピングメニューのほか、メープルシロップまたはハチミツが選べる。左は結局、全部使い切ってしまったメープルシロップでの画。 ブンレドコーヒーのマグは大きめ。ちょうど良いタイミングでおかわりを所望するかを訊ねてきてくれるのがウレシイ。

このあいだ、パスタランチを食いらげた後に、この三段重ねのパンケーキを二人でシェアとはいえ追加オーダーしていた猛者女子が隣のテーブルに居ましたっけ。

美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

インスタレーション「Airy Walk」@六本木ヒルズ ウェストウォーク

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六本木ヒルズ ウェストウォークで先月から始まっている「Roppongi Hills Artelligent Christmas 2015/六本木ヒルズ クリスマス2015」のひとつ、期間限定インスタレーション "Airy Walk"を観に行く。

空間デザイン:川島範久+佐藤桂火 / ARTENVARCH(アーテンバーク)
テクニカルディレクション:LUFTZUG
サウンドデザイン:WHITELIGHT
クリエィティブディレクション:亀田和彦 / シナプティックデザインズ
テキスタイルデザイン:安東陽子
協賛:パナソニック株式会社


会場でARTENVARCHのお二人と安東さんにお目にかかり、いろいろと話を聞けた。

ウェストウォークの空間を彩るのは、この作品のために一流クリエイターが集結した特別クリスマスインスタレーションです。渓谷にかかった雲。宙を舞う雪。森のように。鍾乳洞のように。空気のように空を歩く、動くインスタレーションがウェストウォーク上空に出現します(同X"masイベント公式ページより)

六本木通り・日比谷駅側から上がって、館内ウェスウォーク(2階)に入ってすぐ目にするのが上と下の画。音と光の演出による複合的な動的なインスタレーションなので、ぜひ会場に足を運んでいただきたい。
オブジェは"Moving Tree"と名付けられているが、空間ともどもデザインした川島範久+佐藤桂火 / ARTENVARCHによれば、特に○○とは限定しておらず、見る側の主観、その人の自由な発想に任せたいとのこと。
ゆったりとした運きを繰り返すこの"Moving Tree"と、織りなす影が、水盤、ガラスウォールなど様々な場に映り込みながら、全長約120メートルのウェストウォークの奥へと続いていく。その数、計14個。
リボン状のテキスタイルからなる円錐形の"Moving Tree"が、頂点部分に取り付けられたワイヤーにより形を変化させる。リングの直径は3メートル、円錐の高さは最大時で約4メートルとなり、最大で8メートルの上下移動に。クラゲのようであり、ツリーのようであり、時に白い雲のようであり。見上げて歓声をあげていた小さな子どもは「あさがお!」と指差していた。
「見るフロアや時間帯によっても見え方が違ってきます。例えば、日中の自然光の下では"Moving Tree"本体の色は白い。17時からカラフルなライティングが始まり、30分間はランダムにプログラミングされているので、同じ色にはならない。このウェストウォークは、観光客やショッピングで訪れる人以外にも、通勤コースとしても利用されています。毎日通っても見飽きない、そんな空間にしたいと考えました」(川島、佐藤両氏談)
前述のエントランス付近にはまとまって4つあったが、そこから先は間隔をあえて空けている。カーブしているウェストウォークを進んでいくと、奥にチラリと見える配置だ。後ろを振り返っても同様(上の画)。そんな思わせぶりな"Moving Tree"をひぃふぅみぃと6つ数えた突き当たりの大空間に、8つの"Moving Tree"が密集している。
此処に来る前、館外の66プラザには毎年好例のXmasツリーが飾られ、周囲を囲んだ人々がさかんに写真を撮っていた。本会場でも同様の光景がみられたが、川島範久+佐藤桂火 / ARTENVARCHがやろうとしたのは、そのような受動的な「オブジェではなく(註.動的で主体的な)経験をつくる」ということ。
固定されたカタチを持たず常に変化し続けることでオブジェ的でありながら同時に環境の一部となるインスタレーションである。
さまざまな見方をうながし、奥へ奥へと動いていきたくなってしまう気持ちにさせる仕掛けが、空間全体としてクリスマスのウェストウォークを照らし出し、都市で歩き回ることの楽しさを演出する(ARTENVARCH公式サイト〜WORKページのテキストより一部を引用)
17時から23時までの30分ごとに、約1分間の"特別演出"もあり。各個にプログラミングされてランダムに動いていた14の"Moving Tree"の動きが一斉に揃う。

ARTENVARCHがyoutubeに公開した動画「AiryWalk 151129 1」(注.BGM付き、2もアリ)

テキスタイルデザインは安東陽子氏。「このイルミネーションは、上から見下ろすこともできるが、下から見上げることが多いので、見る人の視点と、対象物との関係を考慮して、パターンの大きさや素材をデザインしました」


フロアを1つ上がってウェストウォーク3階からの眺め。
さらに上がってウェストウォーク4階からの見下ろし。吹き抜けの高さは約24メートル。
同4階のブリッジ上から、壁面上でアヤしくうつり変わる影。
川島範久+佐藤桂火 / ARTENVARCHは、今春のミラノサローネに出展したAGC/旭硝子会場の「GLACIER FORMATION」、吉祥寺駅北口前広場で先月3日から始まっているイベント「kichijoji aqua illmination 2015」のインスタレーション、そして今回の「Airy Walk」と、それぞれ異なる3つの空間デザインを担当している。
インスタレーション「Airy Walk」は六本木ヒルズ ウェストウォークにて、12月25日まで。

「Roppongi Hills Artelligent Christmas 2015/六本木ヒルズ クリスマス2015」
www.roppongihills.com/events/2015/11/christmas/




+飲食のメモ。
Roppongi Hills Artelligent Christmas 2015/六本木ヒルズ クリスマス2015」の会期中、大屋根プラザでは今年で9回めとなった「クリスマスマーケット 2015」を開催中。ドイツのクリスマスマーケットを再現、ソーセージ、スープ、プレッツェル、ザワークラウト、ドイツビール、ホットワイン、シュトーレンなどいろいろ味わえる。
各屋台には行列ができ、下戸の身には野外は特に冷えるため、今回は館内へ。
なお、上の画の右上にチラと写っている緑色の光が、インスタレーション「Airy Walk」。

地下の[モロコバー]と迷ったが、「AiryWalk」をあちらこちらから眺めようとフロアを移動中、こんなカフェが4階にあったのかと初めて知った[イー・エー・グラン六本木]で一息。カウンター席も含めて店内席数56、椅子がゆったりで落ち着ける。

X'masイベントを観た後である。「鴨と無花果のサンドイッチ」と「カフェラテ」をセットでオーダー(消費税込¥860)
サンドは温めてから出してくれた。ほか、パスタやケーキメニューもあり。
ラテはバリスタが1杯ずつ淹れているそうで、なるほど、美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

e.a.gran(イー・エー・グラン)
www.pscoop.jp/eag/

ihrmk《はなれのはなれ》オープンハウス

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井原正揮氏とパートナーである佳代氏による建築ユニット、ihrmkが手掛けた《はなれのはなれ》を昨日見学。
築35年のRC造4階建てビルの1階部分、元は車庫と設備室として使われていた一角をコンバージョンした。

立地は愛宕神社交差点付近、愛宕下通り沿い。ビル遠景をおさめようとカメラを構えると、南側に《愛宕グリーンヒルズMORIタワー》が、北側には《虎ノ門ヒルズ》がそれぞれ背景として映り込む。西側には愛宕神社の杜が鎮座まします。
長らく使われていなかった実家の車庫を、ギャラリーやイベントなど多目的に使える空間兼事務所として改修する計画が立ち上がり、その途中で、井原夫妻に第一子が誕生、近所に引っ越してくることに。《はなれのはなれ》という作品名は、実家のはなれ(自宅)のはなれ(当作品)という意味。
前面道路からセットバックした、ビルに向かって左側が《はなれのはなれ》。敷地は防火地域に属するため、《はなれのはなれ》の出入口は、延焼のおそれのある部分を避けるようにして内側にセットバックさせて計画した。これにより、木製サッシの3連引き込み戸を設けることが可能に。
界隈は内外の観光客が多数往来するため、カフェと間違えられることも多々あるそうだ。

駐車場が元々持つ、粗い仕上げと抜けを持つ空間の中に、家具的な設えをそっと挿入 することで、家族の小さな居場所を都市の隙間につくることを目指しました。
シンプルなキッチンを持つリビング・ダイニングは、事務所やギャラリーとしても機 能する、フレキシブルな空間です。


向かって左・外壁側に、トイレ、収納ボックス、書棚、奥にはミニキッチンを一列に配している。棚板や面材、テーブルの面材は全て同じ合板で統一。テーブルの脚はIKEAで購入したもの。
向かって右側(写真には写っていない)、既存の躯体壁側は、2つ開いていた窓もろとも合板で覆い、後日にピクチャーレールを取り付けて、作品パネルなどを吊り下げられるようにする。今後は各種イベントも開催予定とのこと。
周囲のランドマーク的な建築、緑、大きな銀杏の木も借景に取り込んだ、《はなれのはなれ》である。

ihrmk
http://ihrmk.com/




+飲食のメモ。
以下・前フリは私事含む。10年ほど前に神谷町界隈に通勤していたことがあり、愛宕神社に行ったことがある筈なのだが、このシブい「愛戸隧道(あたごずいどう)」なる、23区内唯一の山岳トンネル(参照元:西新橋通信記事)を通った記憶がナイ。

このトンネルを挟んで、前述・東側の愛宕下通り沿いに《はなれのはなれ》が、西側の桜田門通り沿いに岡埜榮泉があり、こちらは何度か重宝した。その手前の角地に、店名を[ソーホーズ・ベーカリー]といって何度かお世話になったブーランジェリー & パティスリー(現住所:虎ノ門3-20-6)の姉妹店[3206 cafe](:虎ノ門3-11-12)を発見。立ち寄る。
店内にイートインスペースもあったが、時間の都合でテイクアウト。スティック状の「マロンケーキ」(¥300)と「デビルズサンド」(¥400)を購入(移動中に鞄の中で上の画のような有様に)。たっぷり半熟ゆで卵+タルタルソース+クリームチーズなんて、帰宅予定の21時過ぎに食べたらエラいこと(=高カロリー摂取)になると解っていながら、抗えず。賞味期限厳守を呪文のように唱えつつ完食。
おいしゅうございました。ごちそうさまでした。

3206 Boulangerie-Patisserie
http://3206.jp/

皆川明+安藤雅信展「森のさえずり」+「百草展」@MITATE+ル・ベイン

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西麻布のギャラリー ル・ベイン、およびショップ&ギャラリーMITATEにて、安藤雅信・安藤明子・百草オリジナル「百草展」、皆川明+安藤雅信展「森のさえずり」が始まった(左の画は皆川さんの手によるもの)
会期は共に12月11日から12月24日まで。開催前夜のオープニングにおじゃまする。

多治見のギャルリ百草(ももぐさ)を拠点に活動する陶作家の安藤雅信氏の器に、ミナ ペルホネンの皆川氏が紋様を描く、皆川明+安藤雅信展「森のさえずり」 @ショップ&ギャラリーMITATE
多治見のギャルリ百草(ももぐさ)を拠点に活動する陶作家の安藤雅信氏の器に、ミナ ペルホネンの皆川氏が紋様を描く、皆川明+安藤雅信展「森のさえずり」 @ショップ&ギャラリーMITATE
安藤雅信氏の茶器や食器、安藤夫人の明子氏の布や衣類などの展示。会期中は特別販売もあり。
なお、2004年11月にオープンしたギャラリー ル・ベイン、ショップ & ギャラリーMITATEは、本展をもって閉場となる(注.リラインスのショールーム le bain、ならびに1階の櫻井焙茶研究所は、25日以降、年明けも通常通り営業/同社12月11日発表の告知より)
これまで見学した展覧会、聴講した講演会は数知れず。いつか終わりはおとずれるものだが、残念。パーティの冒頭、ディレクターの山田節子氏が述べておられた通り、「終わりは始まり」である。



+飲食のメモ。
[souen 櫻井焙茶研究所]さん心づくしの料理をいただく。
煎れていただいたお茶も、とっても美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

mountain morning "WHITE" @代官山T-SITE GARDEN GALLERY

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インテリアスタイリストの作原文子氏が主催するプロジェクト「mountain morning "WHITE"」が、12月12日から代官山T-SITE GARDEN GALLERY で開催される。前夜のオープニングイベントは、開始早々に来場者でいっぱいに。

mountain morning」は、作原氏が公私ともに親交のある20名のフォトグラファーと共に、"山の朝"をテーマにしたポストカードセットを製作した5年前のプロジェクトから始まっている。
 「mountain morning」単独としては3回めの開催となる今回は、37名のフォトグラファーが参加。ポストカード以外にも、各メーカーやショップ、作家らともコラボレーションして製作したオリジナルアイテムも並び、限定販売もアリ。
今回の予告プレゼンテーションとなる〈mountain morning〉が、10月にマルニ木工のショールーム[マルニ東京]で開催され、同時に先行予約が始まったのが、同社のアイコンともいえるアームチェア「HIROSHIMA」の座面に、ペンドルトン(PENDLETON)のテキスタイルを張ったマウンテンモーニングエディション。このほどビーチ素材のカラーバリエーションも含めた全14種類がお目見え。限定100脚のエクスクルシーヴモデルも作原氏の「mountain morning」が手掛けたもの。
この限定モデルは、今回の「mountain morning "WHITE"」のサテライト会場となる、東日本橋の [マルニ東京]でも購入可(こちらの会期は12月23日まで)
会場全体のスタイリングはもちろん作原氏。
"アート、インテリア、ファッション、フードなど、あらゆるジャンルを包括してリアリティのある暮らしのアイデアを提案する"「mountain morning "WHITE」。様々な分野の人々が出会うきっかけとなる、クリエイティブコミュミティの場となることも目指している。

mountain morning "WHITE" INSTAKKATION by Fumiko SAKUHARA」会期は12月12日から20日まで。会期中無休。オープンは11-20時(最終日は19時まで)。入場無料。

mountain morning(マウンテンモーニング)公式 facebook
https://www.facebook.com/mountainmorning.jp



+飲食のメモ。
会期前夜に開催されたオープニングパーティは大盛況。
彩りも美しくおいしいパーティメニュー各種、鹿児島の焼酎など、フードもドリンクも恐縮するくらいの充実ぶり。用意されたBGMをバックに歓談の輪が生まれ、盛り上がる。
山角や」さんは握るそばから人々が手を伸ばし、胃袋に吸い込まれる。10月のマルニ木工での展示会に続く出店
会場で販売しているメイド・イン・ドイツの鉄製プライパンで焼いたソーセージをはさんだホットドッグもふるまわれた(注.上記デリバリーはオープニングイベント限定)

デリバリー専門の[AMAZING COFFEE] は会期中も出店営業するとのこと(営業時間は不定期。販売予定価格:1杯350円、ドリップの場合は400円)
あれこれと美味しくいただきました。ありがとうございます。ごちそうさまでした。



+飲食のメモ2。
オープニングパーティ開始2時間半前に、この2か月で3回めとなる[IVY PLACE(アイビープレイス)]にて、平日ランチでは最も廉価な本日のスープランチをいただく。食後にコーヒーかエスプレッソが付いて、消費税込1,100円ナリ。

カレー風味のかぼちゃのスープ。美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

強風のこの日、テラス席にはシートがかかっていた。

IVY PLACE(アイビープレイス)
www.tysons.jp/ivyplace/

廣部剛司建築研究所オープンハウス《Gray ravine》

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廣部剛司建築研究所が設計した住宅《Gray ravine(グレー・ラヴィーン)》を過日に見学。

所在地:東京都内
木造 地上2階建て
敷地面積:79.40平米(24坪)
建築面積:47.15平米(14.3坪)
延床面積:87.46平米(26.5坪)
構造設計:エスフォルム/大内 彰
施工:山菱工務店

道路に接した西側の外観。傾斜屋根の低いほうが北側。両サイドの南北の壁にみられる窓も小さいサイズで、ベランダもない。都内の住宅密集地という立地で閉じた住まいのようにも見えるが、内部は予想以上に広く、明るかった。
外部のアプローチから、300角のグレーのタイルが貼られ、ドアを開けたところで靴を脱ぎ履きする空間の境い目としての僅かに段差はあるものの、タイル土間がそのまま真っすぐ内部空間に連続し、広がりをみせる。
蹴込み板なしの階段は、廣部氏がこの空間にあわせてデザインしたもの。玄関から奥にある中庭(坪庭)までの見通しを妨げず、光と風を通し、壁面に美しい影も落とす。上の写真は12月上旬の14時頃。直射ではなく、南東の角に設けられた中庭の壁をバウンドした光が入ってくる。
この吹き抜け空間が作品名の由来となっているのだが、仔細は後述。
内部の壁は珪藻土吹き付けによるもので、色は明るいグレー。外壁のアクリル樹脂塗装に比べて一段明るいグレーの色調となっている。

玄関の段差前で靴を脱ぎ、数歩進むと、向かって左側、ゆるやかなカーブを描いた壁の向こうに、床レベルを360ミリ下げたリビング・ダイニングの空間が見えてくる。
例えば宅配業者の訪問を受けたとき、玄関先で応対する相手には、リビング・ダイニング、キッチンが並んだ右側のプライベート空間までは見えない。ほんの数歩の距離で変わってくる視界、見え方について、廣部氏はかなり考え抜いて設計したとのこと。
袖壁の向こう側がキッチン。ウォーターサーバーを設置する部分だけは目隠しとして変形させ、頭上部分は半円状にくり抜いてダイニングとの"境"とした。
キッチンは米びつの引き出しも備えた造作。ゆえに換気フードの出っ張りもなく、フラットな仕上がり。
LDK空間の隅に設置された空調機は、ガラリ付きのボックスに格納(各居室共通で見られたデザイン)。横に延長させた下端の板は飾り棚に。
ダイニングとリビングそれぞれにはアクアレイヤー式床暖房を敷設してある。その下、ベタうちの基礎は多角形状だが、段差部分の曲線はスチールで仕上げた。床レベルを下げたのは、厳しい北側斜線のもとで階高を確保するためだが、縁側のような、また床の上に座れば机にもなる、住まい手の自由度に任された空間となった。
LDK側の壁の片側は、階段室の床面とほぼ同じ高さで横長のベンチが造作されている。上の画の右側・リビング側のベンチはテレビ台として、階段室との昇降を助けるステップの対面のベンチは、これから置かれるダイニングテーブルの椅子も兼ねる。ベンチの足下は収納スペースで、テレビ配線などをスッキリと格納。開閉扉の面材はオーディオスピーカーで使われている黒いネット素材。内覧会時には、廣部氏が持ち込んだスピーカー付きiPodがこの中に据え置かれ、廣部氏選曲によるジャズが流れていた。
キッチン寄りのベンチに腰掛けて、階段室および中庭の眺め(時間帯は14時前)。座る位置を左側にずらすと、坪庭と階段室との境にある黒い窓フレームが手前の壁に隠れる。外(坪庭)と内(階段室)の境が消えて、まるでひとつながりの空間のように見える。内外の壁の塗料はアクリル樹脂と珪藻土と異なるが、中庭の壁は同じグレーに見えるよう、色調をあわせている。
FIXガラスが嵌ったフレーム越しに、中庭(坪庭)の眺め。植えられたばかりのヤマボウシの向こうにたつ壁は、この家の南側の外壁にあたる。中庭は雨風が入るため、内部に湿気がこもって植物の生長を妨げないよう、東南の一角にサッシ窓が設けられている。格子扉を1枚介して設けられたこの窓は、網入りガラスの防火仕様で、敷地の防火および耐火基準をクリアしている。これにより、中庭に接したガラス窓の網入りが不要となり、クリアーな視界を実現させた。下の写真(浴室からの中庭、ヤマボウシの見上げ)も同様の意匠を示す。
冬の晴天下、13時頃の見上げ。青空が四角く切りとられた。住まい手は今後、都内でこのような"湯悦"を満喫する。
浴室、トイレ、洗面は1室空間。1階の床は全て濃いグレーの300角タイルで統一。
浴室側からの眺め。向かって右側の壁を挟んで階段室(グレーの峡谷)がある。
さて、作品名の《Gray ravine》について。会場で配布されたテキストのなかで廣部氏は、アメリカはコロラド州にある峡谷「メサ・ヴァーデ」を訪れたときの回想からスタートして、以下のように述べている。

(略)
この住宅に設けられた坪庭とそれに続く階段室は、厳しい敷地条件の中で地球からの情報を受け取るために試行錯誤の末、導き出したもの。ギリギリの寸法関係を調整するためにも有効であった曲面壁が外部からの光をバウンドさせ、グレーの壁面に反射されながら柔らかく落ちてくる。東西に抜けてつくられた階段室は、日の出から日没まで、太陽の動きを敏感に映してくれる。その空間に、各居室が「外部に開くように」面している。その構成を考えていたとき、脳裏に浮かんでいたのが「メサ・ヴェーデ」だった。だからグレーの峡谷という意味の「Gray ravine(グレー・ラヴィーン)」と名付けることにした。 (略)

階段下からの見上げ。天井部にはファンを設置。向かって右側、LDK側の壁がカーブを描いているのがよくわかる。階段を上がった突き当たりの空間は納戸だが、家事室としても使う予定で、北欧製のペンダント照明が取り付けられる。
階段を上がって左側の書庫・書斎。中庭に向いて造作デスクが備え付けられている。施主夫妻は蔵書が多く、要望のひとつであった。
天井のグレイチング越しに、ロフトの左右にも設けられた書棚が見える。廣部氏オリジナルデザインのハシゴは、足の運びのコツさえつかめば昇りやすい。
書庫・書斎のロフト。南面の小窓から差し込む光がスポットライトのよう。この小窓はロフトの反対側にもアリ。
ロフト内、西側からの見返り。"Gray ravine"(階段室)に面した開口部がみえる。
ロフトの開口部から、階下の見下ろし。
書庫・書斎の隣はトイレルーム。この1室と、後述する主寝室のみ、全体にモノトーンな内部空間の色調に対して、アクセントとなる色が加味されている。
北西の角の子ども部屋は、いずれは分割して二人で使うことを想定。
子ども部屋の奥から、東側の眺め(この曲面形状の壁が、1階・2階の空間に奥行きと広がりを与えている)。カーブを描いた低い書棚が続く奥の部屋が主寝室。向かって左側の手前にあるクローゼットとの間仕切り上部は、屋根の勾配に準じた三角形のFIXガラスが嵌っており、空間双方の光を透過させる。
2階 主寝室。1面だけ壁の色はパープル。陽だまり付近に取り付けられているのは、遠目にはシャワー設備のように錯覚したが、施主が持ち込んだアンティークの照明スタンド。
主審室の窓を開けての階下・中庭の見下ろし。浴室のバスタブが視認できる。
主審室の間仕切り引き戸は、本棚の間にあけられた細い隙間を利用して開閉。
主寝室と子ども部屋の間にあるクローゼットの奥からの眺め。本棚上の開口を通して、階段室、さらに向こう側の書庫・書斎の棚までが見通せる。
クローゼット前の室内開口部からの階段室、書庫・書斎側の見上げ。天井にファンが付いているが、まるで異国の街中に居るかのような錯覚を覚えないでもない。

「温熱環境にも気を配って設計していますが、例えばルイス・バラガンの建築のように、外からは"平凡"そうに見えても、内部に入れば豊かな空間が広がっている、そんな意外性をもった住宅にしたいと考えました」(廣部氏談)

敷地面積24坪というのは、廣部剛司建築研究所がこれまで手掛けてきた住宅作品のなかでも規模の小さい部類に属する。しかしながら、狭さを感じさせず、冬でも明るく、暖かな住まいであった。これが建築家によるデザインの力、建築の魅力なのだと思う。

プレイ・ジュエリー ウェア・アーキテクチャー「建築を通してジュエリーを考える」@ (PLACE) by method

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10月10日から12月27日まで東京都庭園美術館で開催中の、コンテンポラリー・ジュエリー界の巨匠の大回顧展「オットー・クンツリ展」関連イベントが、新宿、渋谷、青山、恵比寿など都内13箇所で展開中。

プログラムディレクター:スーザン・ピーチ(アーティスト、SCHMUCK2 代表)
企画制作:SCHMUCK2(schmuck2.de)、秋山真樹子
協力:method inc.

同展サテライト・プログラム「プレイ・ジュエリー」のテーマや会期はそれぞれNIESSING×名和晃平「COMULUS」など終了したものもあり)。そのひとつ、此処 (PLACE) by methodで12日から始まった展示は、永山祐子建築設計中村竜治建築設計事務所、それぞれの代表を務める2氏によるコラボレーション。永山、中村の両氏ら関係者が来場した11日夜のオープニング時に会場を見学。

プレイ・ジュエリー ウェア・アーキテクチャー「建築を通してジュエリーを考える」は、SCHMUCK2 PROGRAM として、11月に座談会(敬称略 : 中村竜治/司会、長坂常、中山英之、永山祐子)と対話(アンネ・シューレン×中村竜二)が終了、最後を飾る本展は1月30日まで開催される。
会場では、永山祐子氏は光による現象的な作品を、中村竜治氏は物理的な作品を発表(分担は自然に決まったとのこと)
3つの白い楕円形の立体が中村氏の作品。長さ10mのカーボンパイプの直棒を丸めてつくった直径3.2mの円形リングを、会場内に人力で楕円形にしならせ、床と天井に挟まるように設置した。
入口側にある楕円は、梁下と床の2面(2点)に接しているのみ。固定金具などは一切なく、しなる棒がもとに戻ろうとする反発力を利用して自立させている。
会場中央の楕円の接点は天井と床。
フレームの太さは6mm。 大勢のゲストが来場したオープニング時は、フレームを踏まないように注意との表示(ヒビが入るとリング全体が壊れて崩れてしまう)。かなりの反発力があるため、人力でグググとしならせながらの設営の際は、力加減に気をつけながら慎重に作業した。緊張感がそのまま作品の魅力のひとつに。
展示では、建築のための装飾と人のための装飾の中間的な存在を考えてみた。(略) ネックレスが人の形に合わせて変形し優雅な曲線を即興で生み出すように、3つあるリングはそれぞれ、このギャラリーの凹凸した天井高をこの場で読み取り、それに応じた楕円を空中に描き出し空間をつくる。(中村竜治氏が用意した会場配布物のテキストより一部を抜粋して転載)

この楕円は、"円をモチーフにした空間を測る物差しのようなもの"であり、"空間の天井高さを訪れた人に意識させる"ものとしても機能する。
対する永山祐子氏は、《LUIS VUITTON京都大丸》のファサードや《豊島横尾館》のエントランスと内部にみられるような、"たとえそれがなくとも建築は機能として成立している。でも、それがあることで建築も新しい見え方、意味、コミュニケーションが生まれる"ような装飾を、中村氏とのコラボ会場に施した。
丸、三角、四角にマスキングされた光は黄色と赤の2種類。舞台用の照明による投射。
光はほんのりと壁を染めてから、徐々に濃くなり、再び消えてゆく。
「光というよりは、塗ったようにみえる現象を目指した装飾」とのこと。作品に近付いて、上下左右に角度を変えて目を凝らすと、光があたる壁面に、万華鏡のような紋様が描かれているのがわかる。
描いたのは、アーティストの松下 徹氏。場内掲示によれば、"ステンシル(切り型)をつかったスプレー転写の新作 "とのこと。
下の画、松下氏が手にしているのがステンシル。いわば作品の元となる型紙。白いケント紙に鉛筆で大まかな下絵を描いてから、残す面と取る部分をフリーハンドのカッターで切り分けたもの。ひじょうに細かく、まるでレース編みのよう。作業は即興に近いという。
"切り絵"の制作が完了したら、型紙を壁に付着、今回はその上からグロスのスプレーを吹き付けている。シンメトリーを意識しながら、1つのピースでひとつの世界をつくり上げていく。

3つのうちひとつの作品はビスマス結晶をモチーフに制作。植物の葉脈など、自然界のフラクタル、自己相似的なかたちに惹かれるという松下氏。永山祐子建築設計の事務所の柱も同じ手法で装飾したほか、福島県で昨年開催された「アラフドアートアニュアル2014」では雪の結晶のようなグラフィティー作品を発表している(そのほかの作品は松下徹公式サイト参照)
(PLACE) by methodを会場とした「オットー・クンツリ展」サテライト・プログラム展、プレイ・ジュエリー ウェア・アーキテクチャー「建築を通してジュエリーを考える」の会期は12月12日から2016年1月30日まで。日曜公休、12月26日〜1月3日も年末年始休。開廊は12-19時。入場無料。




+飲食のメモ。
渋谷駅から渋谷2丁目交差点を目指して坂を上がっていく途中、Bosch(ボッシュ)社の1階にカフェ[café 1886 at Bosch]ができていた 〈前回、(PLACE) by method に「CRAZY KIOSK」を観に行った時はなかった〉
聞けば、厨房機器類は扱っていない同社だが、新たな試みとして今年9月10日にオープンしたとのこと(今年8月26日発表同社プレスリリース。席数85、床面積167.53平米とかなりゆったりめ。内装デザインは窪田建築都市研究所
平日と土曜は22時まで、日曜祝日は20時までの営業(金曜夜の上記オープニングレセプション帰りは食事のラストオーダー:21時に間に合う)。こだわりサンドイッチや、ハワイのTORIBA COFFEEのメニューも気になったが、胃袋疲労気味でカモミールをオーダー。ガラスの蓋付きでサーブされる。
あったまりました。ごちそうさまでした。
店名はBosch社創業年に由来。上の画に写っているのは、創業者であるロバート・ボッシュ氏の生涯と同社の歴史を描いた漫画の店内閲覧用。総ページ342Pと読み応えあり(同社サイト内に用意された電子ブックでも読める)

café 1886 at Bosch(カフェ 1886 アット ボッシュ)
www.bosch-cafe.jp/

「空間を色で着せ替えよう!展」2nd "草原オフィス" @CS デザインセンター

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東日本橋にある中川ケミカルのショールーム CSデザインセンターにて、「空間を色で着せ替えよう!展」の第二弾が始まっている。
同社のカッティングシートの新色にフォーカスして、同じ会場で3つの空間に"着せ替える"企画展。3展とも空間デザインをイガラシデザインスタジオの五十嵐久枝氏、照明デザインをワイ・ツー・ライティングデザインの山下裕子氏が一貫して担当し、初回はカフェ、続いてオフィス、最後にキッズルームに"着せ替え"る。第一弾の「問屋街カフェ」が10月末に終了した空間はガラリと雰囲気が変わり、「sogen office(註.草原オフィス)」となっている。

五十嵐氏がイメージした本展における"草原"は、芝生やサバンナのような丈の短い草木ではなく、水辺に生えているような長いもの。前回の「カフェ」の装飾では多彩に色が使われていたが、今回はグリーン系の新色が中心となっている。ひとくちに"グリーン系"といっても、極めて多彩かつ微細。原研哉氏監修ならでは。
そんな新色の特長を象徴しているのが、会場入口正面にある受付カウンターの前板の装飾だ。1色に思えるが、実際はミスティミントとセルロイドの2色が左右に使われている。
同センターのスタッフが働いている実際のオフィスがある一角は、透明なパーテーションの上から白いIROMIZUを全面に貼り、さらに長草の絵柄をカッティング貼りした。秋の月夜をイメージしたライティングとのこと。
長草の影と二重になってみえるのは、パーテーションの厚みを利用した貼り方によるもの。濃い色のシートを廊下側の表面に、淡い影となるシートが裏面に貼られている。草葉の向こうにぼんやり透けて見えているのは、オフィスのデスクに置かれたパソコン画面の光。幻想的かつプライバシーも護れるデザイン。ざわざわと動いているような視覚効果も出ている。
パーテーションを装飾する長草の丈は、左右の外側にいくほど長くなる。色がグリーンから白くなるグラデーションは、季節の移り変わりを表現している。
全体を俯瞰したときも、一枚の葉に注目してみたときも、あくまで自然な感じにみえるよう、五十嵐氏をはじめイガラシデザインスタジオのスタッフはデータの作成に苦労したそうだ。描画作業に行き詰まると、事務所の近くでたまたま売っていたというススキの鉢を見て、先端の曲がり具合を確認したという。
人の背丈ほどある"草原"のパーテーションは、内部にも計6枚たてられている。
長草や草木の向こう側をノマド的なオフィス空間として使う、というのが今回の「sogen office」のコンセプト。
細くて長いシートの長草にあわせて、五十嵐氏がデザインしたテーブルとチェアのセット。卓と座面、脚の部分は塗装ではなく、シートの新色を貼って装飾したもの。
パーテーションパネルを2枚挟んで、テーブル+ベンチに人がひとり。互いの存在がうまい具合に見え隠れする、ちょうど良い距離感が空間的にデザインされているのが、今回の"草原オフィス"である。実際のオフィスにここまで大量に草木を茂らせることは難しいが、シートならば表現として可能。会議室など視線を適度に遮る仕切りに転用できる。
前回の「問屋街カフェ」では、ペールトーンをボーダー状に貼り、見た目にはガラスと判らないテーブルを3連にして据え置いていたが、今回はガラスとシートの透明感をいかしたテーブルが1つ。パーテーションにカッティング貼りされた樹木の影と木もれ日が、テーブル天板に落ちてのびている、という情景。
会場では足もとにもご注目。山下氏があてた光による美しい影が、あちらこちらに落ちている。同様に、五十嵐氏のオーダーで山下氏が制作した"ホタル"もお見逃しなく。
企画展「空間を色で着せ替えよう!展」2nd OFFICE:sogen office の会期は11月16日から2016年1月15日まで。土日曜祝日公休、年末年始(12月30日~2016年1月4日)も休み。開廊は10:30-18:30。入場無料。

CSデザインセンター
http://nakagawa.co.jp/showroom/




+飲食のメモ。
新規開拓。『商店建築 11月号』のカフェ特集に掲載されたカフェ [わなびばKITCHEN333] が会場から徒歩数分の距離。2階にある呉服屋が運営していおり、開店は今年1月。
なお、店名の数字は東日本橋3-3-3を示しているが、"和の心をもって、縁を絆に育み、ゆとりを産む第3の居場所の創造"という、店のコンセプトにも由来するようだ。奥には小さな子供連れでもゆったり過ごせる和室などあり、ママさん来店率高し(店内は広いこともあり、小さい子たちが奥の部屋で遊び回っていても気にならない)
フレーク、十酷シリアル、ゆであずき、抹茶・豆腐アイスなどが盛られた「わなキチパフェ」消費税込756円+「堀口珈琲(ドリップのスペシャリティと機械式で値段が違う)」432円=合計1,188円ナリ。カフェメニューは14-16時ラストオーダー。
おいしゅうございました。ごちそうさまでした。

わなびばKITCHEN333
http://wa-kitchen333.jp/

「杉本博司 趣味と芸術 − 味占郷/今昔三部作」@千葉市美術館

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千葉市美術館で23日まで開催されている、同館20周年記念展「杉本博司 趣味と芸術-味占郷/今昔三部作」を観に行く。
大きく8つの展示室からなる会場は2フロアに分かれ、受付カウンターがある8階が、《海景》、《劇場》、《ジオラマ》の写真シリーズによる「杉本博司 今昔三部作」、7階が作家の審美眼としつらえが絶妙にかけあわされた「杉本博司 趣味と芸術ー味占郷」の展示となっている。なお、場内は規定内での撮影可、SNS掲出も可。本稿は19日に開催された学芸員トーク、フライヤー、出展リストに拠る。

千葉市美術館は、現代美術と日本の近世絵画・版画の収集と展示を活動の柱としている。杉本氏は、19年前の1996年1-2月に開催された同館開館記念展第二弾「Tranquility ー静謐」の招待作家のひとり。出展された《海景》はそのまま同館に収蔵されているが、本展でみられる16点のゼラチン・シルバー・プリントは、119.4×149.2cmという大判サイズ。全てニューヨークにある杉本氏のスタジオから貸し出されたもの。
1980年から90年代にかけて撮影された《海景》のモノクロ写真5点が並ぶ展示室1。会場構成にも注力することで知られる杉本氏(参考:10+1web 青木淳氏との対談/2005年9月収録)は、本展のために曲面の壁をたてこみ、水平線が一直線になるように作品を配置した。 グレーの額は鉛製。
上の画・右から、「カリブ海、ジャマイカ」(1980, Neg.301)、「日本海、隠岐」(1987, Neg.310)、「ボーデン湖、ユトビル」(1993, Neg.389)
90年代以降、湖や夜の海も《海景》シリーズに加わっている。下の画・右側の作品は、水面と空が共に白い世界の「スペリオル湖、カスケード川」(1995, Neg.570)。左の奥:《劇場》シリーズ「アバロン・シアター、カタリーナ島」(1993, Neg.251)
3つの写真シリーズが制作された初期の作品から、近年の発表、または最新作が一堂に会する展示構成。本展のタイトル「今昔三部作」の由来でもある。《海景》、《劇場》、《ジオラマ》三部作の展示は、国内では2005年に森美術館で開催された「杉本博司 時間の終わり」以来、大規模個展は原美術館「杉本博司 ハダカから被服へ」以来3年振り(千葉市美術館プレスリリース.PDFより)。大判プリントだけの「三部作」展は、今回が初(千葉市美術館発行『C'n』ニュースNo.76より)
展示室2:《劇場》シリーズの最新作「テアトロ・デイ・ロッツィ、シエナ」(2014, Neg.30.004)は本邦初公開。学芸員の指摘に拠れば、天井高のあるボックス型の劇場をとらえたためか、出展中の同シリーズ7点では唯一の縦版形。
1975年に始まった杉本氏の《劇場》シリーズは、1920-30年代にアメリカ各地に建てられ古い映画館の場内を撮影したものだが、近年ではドライブインシアターやオペラハウスも撮影対象となっている。映画を1本、無人の場内に流す間ずっとカメラを露光し、スクリーンからの光だけで、今日のセンスではキッチュ感を拭えないホール内の細部に至るまで、8×10のモノクロフィルムに焼き付ける。
《劇場》シリーズのライティングは、まるで撮影に立ち会っているかのような臨場感を覚える。3本のスポットライトは全て四角くマスキングされたもので、うち1本は各"劇場"スクリーンのサイズに合わせてピンポイントであてられている(と、帰路のメール往還でS氏にも教わる)
杉本氏の《劇場》シリーズのゼラチン・シルバー・プリント作品は、DIC川村記念美術館で2013年に開催された企画展「BLACKS ルイーズ・ニーヴェルスン | アド・ラインハート | 杉本博司」でも同館所蔵作品を観たが、例えば51×61cmという本展の半分に満たないサイズ。ライティングも本展とは違った筈で、作品から発せられる迫力がまるで違う。

学芸員トーク聴講メモ:杉本氏が使う8×10カメラのフィルムは一般的な35mmフィルムに比べて格段に大きく、引き伸ばしても粒子が荒れない代わりに、現像ムラが生じやすいという難点があり、特に《海景》シリーズでは顕著に出やすかった。この技術的問題を杉本氏が解決する以前のプリント作品はサイズが小さく、以降の大判作品は人気を集めて高騰、写真作品としては高価な域に。リーマン・ショック前までは日本の美術館が容易に手を伸ばせる市場価格ではなく、ゆえに所蔵先も少ない。
展示室3:《ジオラマ》3点の展示。奥の作品「オリンピック雨林」(2012, Neg.167)は、同シリーズの最新作。植物の生態系ジオラマを撮影したもので、近付いてよく見ると、4枚のパネルを並べて一枚にみせていることが判る。185.4×477.6cmというサイズは、出展作品中で最大(それが為、この作品のみ鉛による額装ではない)

階下の展示「杉本博司 趣味と芸術 −味占郷」は、雑誌『婦人画報(ハースト婦人画報社)で連載中の「謎の割烹 味占郷」の店主(註.明らかになったのは今夏の号である)杉本氏が用意した、開店日、ゲスト、料理などにあわせた各回の床飾りなど、もてなしの一部を再現したもの(パネルにふられた番号は場内および展示品リストのものと符合)
計26組50名のゲストのなかには、建築家の妹島和世氏(×クリスチャン・マセ駐日仏国大使「近代的 近世のうつわ)、永山祐子氏(×竹ノ内豊「寛永のさざえ」)、グラフィックデザイナーの原研哉氏(×山口智子「表具道楽」)も。
偏屈な店主(杉本氏)の口上によれば、気が向いた時にだけ開店する[味占郷(みせんきょう)]は、100年先まで予約でいっぱいだという。各回どのようなコンセプトで店主がもてなし、料理と器を用意したか、会場のパネルで確認できる(例えば、上の画・左は、終戦の日に因んだ「つわものどもが夢のあと」で供された「鉄兜すいとん」、右は中秋の名月とかけた「ゆで玉子」など)。これらの説明を頭に入れたうえで場内を巡った方が倍、楽しめる。
展示室5の奥に展示された作品は、野村萬斎×裕基親子を招いての「立居振舞」で用意された、プラチナ・パラディウム・プリントによる二曲一双屏風「月下紅白梅図」。 昨年、熱海のMOA美術館で開催された、尾形光琳300年忌記念特別展「燕子花と紅白梅」で実物展示されたもの。
左隻の手前に、梅の花と花びらが。実物ではなく、須田悦弘氏による木彫彩色作品「梅」(2014)。氏はそのほかの床飾りでも"友情出演"を果たしている(杉本氏が撮影した本展フライヤーのビジュアル:「阿古陀形兜」から"生えて"いる「夏草」も同氏の木彫彩色作品)
上の画は「秘事の茶事」(中谷美紀×千 宗屋)での床飾り。堀口捨己の短歌の紙本墨書の軸(個人蔵)に、置物は14世紀初期にイタリアはトスカーナ地方で出土したキリスト胸像小田原文化財団蔵)。洋の東西、古今を問わない構成の妙が続く。
展示室5-No.8「東西東西」(ゲスト:豊竹咲甫大夫×増田いずみ)の床飾りの一部。室町時代の根来経箱に、古墳時代の古代ガラス玉が収められた「瑠璃の浄土」小田原文化財団蔵, 2005)
前述「立居振舞」の回で使われた料理の器は、ルーシー・リーの磁器(上の画、右)
昭和時代の"ノベルティグッズ"「電球形白磁向付」は前述「東西東西」にて、妹島氏がゲストの回では尾形乾山の器「色絵椿文花形向付」で料理が饗された。
展示室6にはムラノ硝子の平茶碗4点が並ぶ。
展示室7のフロア中央のしつらえは、法隆寺に伝来する天平時代の「古銅 大升」 に、須田作品の木彫彩色「泰山木:花」という取り合わせ。
ピエール=アレクシィ・デュマ氏を迎えた回では、ゲストがエルメスの青磁器(上の画・手前)を持ち込んだ。大林組会長の大林剛郎氏も同様に「志野風 ぐいのみ」を持参。共に展示中。
展示室7-No.13「ささやかな音色」のゲストはバイオリニストとピアニストで、中秋の名月に因んだ2点での床飾り。パリ天文台が1902年11月13日に撮影した"蒸気の海"の月面写真を表装した軸物(小田原文化財団蔵)
展示室7-No.14「文人墨客」(森 佳子×大林剛郎)の置物。平安時代の大経筒(益田鈍翁旧蔵、現・個人蔵)に、須田作品の「朝顔」(2002, 千葉市美術館蔵)
置物のひとつとして、杉本博司作品「海景五輪塔」が2点出展されている。こちらは前述・原研哉氏がゲストの回の置物で、南北朝時代の根来方形四足台に、2003年にスペリオル湖イーグル川で撮影された"海景"を、光学硝子製の水輪のなかに封じ込めている(2011/光学硝子:2010, 小田原文化財団蔵)。もうひとつの「海景五輪塔」は展示室8、後述。
前述・デュマ氏を招いた回の床飾り「西方からの遣い物」の軸は、レンブラント・ファン・レインの天使来迎図『羊飼たちへの告知』(エッチング,1634)を、仏教の来迎図に見立てて軸装。置物は江戸時代初期の織部燭台(共に小田原文化財団蔵)
しつらえのバリエーションは幅広い。前述「遠い記憶」では、昭和20年に投下された焼夷弾を花入れにして、須田氏の木彫彩色作品「屁糞蔓 掃溜菊」を差した置物。軸は南北朝時代の紙本墨書。
展示室8全景。右手前はロンドンギャラリー蔵の「色絵もみじ文鉢」(ロバート・キャンベル氏×束芋氏を招いた回「本家取り」における器。料理は中秋の名月に因んだ月見うどん)
展示室8-No.22「海賊の皿」の床飾り再現。「平家納経」の軸に、前述と同様の「海景五輪塔」の置物(バルト海リューゲン,2011/光学硝子:2011,白黒フィルム:1996)
映画「硫黄島からの手紙」に出演した中村獅童氏とその妻を招いた回では、彼の地で戦死した栗林司令官がその手に触れたかもsれない「硫黄島地図保管用鞄」を置物に、中に入っていた地図を表装した軸(展示室8-No.24「時代という嵐」)
前述「本歌取り」のしつらえ。鎌倉時代の古今和歌書(大江千里 つき見れば)の軸と、置物はマンハッタン計画硝子玉(1942年)
マンハッタン計画は判るとして、ガラス玉って? という疑問をネット上で検索したところ、アートニュースサイト[bitecho]の記事が答えてくれた。[Internet Museum]の会場レポートも例によって動画付きで詳しい。 
最後のしつらえ(展示室8-No.26)は、吉村作治氏と木村佳乃氏を招いた「文明の終わり」。軸は紀元前1400年頃の『死者の書』断片の表装、置物は紀元前664-342年「青銅製猫の棺」(共に小田原文化財団蔵)。 
なお、連載「謎の割烹 味占郷」は、本展でもみられる11篇が書籍『趣味と芸術 謎の割烹 味占郷』としてまとめられ、ハースト婦人画報社から今年10月に刊行されている。

千葉市美術館開館20周年記念展「杉本博司 趣味と芸術-味占郷/今昔三部作」の会期は12月23日まで(休館日:11月2日、12月7日)。開館は10-18時(金・土曜は20時まで、入場受付は閉館の30分前まで)。

千葉市美術館
www.ccma-net.jp/



会場の《千葉市美術館》は、千葉市中央区役所との複合施設として建てられたもので、設計は大谷幸夫(1924-2013)が率いた(株)大谷研究室、施工は清水建設実績紹介アーカイブより)。美術館がオープンしたのは1995年だが、竣工は1994年。
11階まであるこの建物の最大の特徴は、1-2階部分に、1927年(昭和2)に建てられた《旧川崎銀行千葉支店》を内包していること(上の画、左奥に花崗岩の外壁と円柱をもつ建物の一角が写っている)
実例は平泉の国宝《中尊寺金色堂》でもみられるが、古来からある建物の保存工法で、鞘堂(さやどう)または覆堂(ふくどう)、覆屋(おおいや)などという。現在はズバリなネーミングの「さや堂ホール」として、展覧会やコンサートなどの会場として有料で貸し出されている(この日は「黒展」を開催中)
各所見どころ満載。建物の歴史、内外観の様式については、「さや堂ホール」のページに解説あり。
館内1階に置かれていた《千葉市美術館・中央区役所》の模型。




+飲食のメモ。
館内11階にある[レストランかぼちゃわいん] で先ずはランチ(11-15時)
魚、肉、パスタ、カレーなど6種類あるランチメニューのなかから、最もお安い930円(消費税込み)のEランチをオーダー。ランチ時のドリンクセットは別途310円となる。
失礼ながら、このテのメニューでよくあるインスタントっぽい温野菜系のカップスープではなく、ちゃんとコーンクリームがセットで付いてくる。おおお。
本日のEランチ「鶏肉の小悪魔焼き」、豆板醤風味に合うライスとのセット。白いご飯がススム進む。 美味しゅうございました。ごちそうさまでした。
北を向いたカウンター席からの眺望。右手・北北東方面には筑波山がみえた。
下の画は14時からの学芸員トーク聴講後。西に面したカウンター席にて。逆光の先に遠く富士山、閲覧用雑誌も眺めながらの休憩(なお、カフェの営業は17時まで。金・土曜のみ以降、20時までディナータイム。両日以外は10名以上での予約営業となる)
本日のケーキセット:「塩クリームチーズケーキ」にコーヒー(または紅茶のセット)で消費税込み720円。一口食べると、食道下の胃袋ではなく、観賞+聴講で疲弊した脳にダイレクトに糖分が上がり、染み渡った。
美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

かぼちゃわいん 美術館店
www.ccma-net.jp/facilities_04.html
www.kabocha-wine.com/bjtkan.html

《明治屋京橋ビル》ウインターイルミネーション

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京橋2丁目《明治屋京橋ビル》のウインターイルミネーションが今月7日から始まっている。期間は2月21日まで(同社12月7日配信ニュースリリースより)

X'masイルミを除いて、Y2 Lighting Design(ワイ・ツー・ライティングデザイン)代表の山下裕子氏によるライトアップ。

明治屋京橋ビル》は1933年(昭和8)竣工、設計は曾禰中條建築事務所。中央区の有形文化財に指定されている。一昨年から改装工事に入り、耐震補強などを経て、今年9月にリニューアルオープン(同社8月31日配信ニュースリリースより)。設計:U.A建築研究室・清水建設設計共同企業体、施工:清水建設。
今月の『新建築 12月号』にもあわせて掲載されているが、一帯では「京橋二丁目西地区第一種市街地再開発事業」が進行中(事業計画.PDF背後の西側では日建設計による超高層が建設中で、手前の歴史的建造物が地上8階、最髙高さが約36メートルであるのに対し、再開発棟と呼ばれる超高層は、地上32階で最髙高さが約170メートルにもなる。
中央通り沿い、北東側からの見上げ。周囲にはこのようにライトアップされているビルがないので、この一角だけが遠目にも目立って美しい。




+未来の飲食メモ。
明治屋京橋ビル》は地下鉄東京メトロ京橋駅と直結している。日本橋側改札を出て、地上7番出口に出ようと階段を昇っていく途中の地下に、洋食の名店[明治屋 モルチェ] があった(現在は休業中)。2016年秋に前述・再開発計画が竣工する際、地下2階に[レストランモルチェ]が開店予定とのこと。再開が待たれる。

「村上隆の五百羅漢図展」@森美術館

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六本木ヒルズにある《森美術館》で開催中の「村上隆の五百羅漢図展」を観る。
《円窓》シリーズより(2015,170×144.7cm|Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co.,Ltd. All Right Reserves)

場内はマナー遵守の撮影、SNS上の共有も可。スマホに限って動画もOKという場内撮影規定は初めて。
何故に村上隆氏が五百羅漢を? 理由については後述。
最初の展示室:ギャラリーI。
向かって右側:《円窓》のシリーズ6点、左側:《宇宙の深層部の森に蠢く生命の図》(2015 240×3,045cm)
上と下の画・手前の立体:《宇宙の産声》(2005 金箔,FRP)

《南無八幡第菩薩》《真っ白シロスケ》《君は空洞、僕も空洞》(3点とも2015)
《君は空洞、僕も空洞》(アクリル,カンバス,アルミニウム・フレームにマウント)の部分。遠目には白い地に見えるのだが、寄ってみると、表面は立体的な無数のガイコツで埋め尽くされている。
《達磨大師》(2007 アクリル,プラチナ箔,カンバス,板にマウント)に限らず、作品に寄ってみると、何やら漫画的な人物が描き込まれている作品が多い。
ホール2《大仏 オーヴァルシルバー》(2011 銀)
さて、場内の解説パネルに拠れば、この後の展示室に登場する「五百羅漢図」の大作は、2009年から2011年にかけて『芸樹新潮』誌上に連載された「ニッポン 絵合わせ」がきっかけで制作された。日本美術史家の辻惟雄氏が若冲や蕭白といった絵師に関するエッセイを披露、対する村上氏が新作を制作するかたちで進行。そのひとつ、十九番の回のお題が(前後期で来年3月まで《増上寺》で公開中の)狩野一信画の五百羅漢図であった。計21回の"勝負"の内容はパネルで確認できる(上の画・左の作品は、絵合わせの十番:井上有一「貧」へのオマージュ、《人、『貧』すると己を『貧』とは評せずに『ヒンヒン』と喘ぐしか無し》
ギャラリー3《五百羅漢図 [白虎]》(2012 アクリル,カンバス,板にマウント 302×2,500cm)
前述・『芸術新潮』誌上の"絵合わせ"に関連するモチーフが散見できる。
《五百羅漢図 [青竜]》(2012 アクリル,カンバス,板にマウント 302×2,500cm)
ギャラリー4《五百羅漢図 [玄武]》(2012 アクリル,カンバス,板にマウント 302×2,500cm)
上と下の画:《五百羅漢図 [朱雀]》(2012 アクリル,カンバス,板にマウント 302×2,500cm)
これらの大作がどのように制作されたのか、youtubeで公開されているメイキング映像でも明らかだが、ギャラリー3と4と間にある展示室でも、過程や各種資料が公開されている。
中世の終わりに日本画壇を席巻した絵師集団・狩野派の制作システムを、最新のツールを使って現代に蘇らせた。
デジタル加工とはいえ、人の手がつくり出すもの。指示書の走り書きは生々しい。


古典からの題材だけでなく、TVアニメ「ヤッターマン」に登場するドクロベエ、宮崎駿、水木しげるなど、近年のジャパン・カルチャーからもモチーフは多数。「村上隆の五百羅漢展」の会期は2016年3月6日まで。

森美術館「村上隆の五百羅漢展」
www.mori.art.museum/contents/tm500/




+飲食メモ。
六本木ヒルズ内大屋根プラザでは、25日の21時まで「クリスマスマーケット2015」を開催中。ドイツ大使館などの協賛で、骨付きソーセージが豪快にインしたスープ「アイントプフ」(消費税込み¥600)など、ドイツ料理やクリスマスグッズを販売する大小の屋台11軒が並ぶ。

あったかいスープ、美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

「六本木ヒルズ クリスマスマーケット2015」
www.roppongihills.com/christmas/2015/

「中川政七商店 表参道店」オープン

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中川政七商店の路面店が神宮前5丁目にオープン。店舗設計を担当した長坂常氏スキーマ建築計画ら関係者が出席し、1月13日の開店を前に披露会が催された。

中川政七商店 表参道店
住所:渋谷区神宮前5-43-7 1F
営業時間:11〜19時(無休)
www.yu-nakagawa.co.jp/


敷地は国連大学の裏手、青山の喧噪からは離れた住宅街。表参道駅からがやや近いが、明治神宮駅からもアクセス可。どちらも細い道がくねった突き当たりのような場所にある。

株式会社中川政七商店は1716年(享保元年)の創業、手績み手織りの奈良晒(ならざらし)の商いに始まり、現在ではこれら生活雑貨の企画・製造・卸・小売のほか、ブランドコンサルも手掛ける。共通のコンセプトは「日本の工芸を元気にする!」(詳細:中川政七商店 創業三百周年記念事業発表 記者会見
同社が全国展開する「遊 中川」「粋更kisara」「中川政七商店」などの自社ブランド、日本各地のパートナーブランドが集まる「大日本市」の商品も含めて約1,000アイテムを取り揃える。
店舗面積は43坪。何か実験的な試みもできるような場所として、動的可変な空間を長坂氏がデザイン。木とアクリルによる什器は同じモデュールで設計され、素材の組み合わせや棚板の位置を変えることで、様々な変化をつけられる。
本稿では判りにくいが、建物は南東側を旧都立青山病院の跡地である緑地に接しており、日中の店内は、ほぼ全面ガラス張りの緑地側から差し込む光に恵まれている。日が暮れると天井に配されたレール可動式のスポット照明が灯くものの、商業店舗としては抑えめ(同店の営業時間は11-19時)。什器の内側にも照明は見当たらない。長坂氏は「できるだけ自然光だけで商品を見せられるようにした」と語る。
「今回は空間への施しは殆どなし、家具(註.什器)でみせる。アクリルという透明な素材を木と同列で扱うことで、同じモデュールで均等になりがちなバランスを何となく崩すように」、「ぐるぐると店内を回遊してもらえるように配した」と長坂氏が説明した什器には、シンクなどが併設したミニキッチンも(上の画・左奥、パーティ用フィンガーフードを準備中)
オープニングパーティでは、白金台に今月オープンした、奈良県のコンセプト施設「ときのもり」の2階に入ったレストラン[CIEL ET SOL(シエル エ ソル)]がフードとドリンクを提供。
小紋柄の麻を貼ったメガネケースなどの小物類。表参道店では、現在は奈良にある「遊 中川本店」でしか行なっていない同ブランドの麻生地のオリジナルテキスタイル(下の画・奥)の切り売りに加え、「2&9」のくつしたと「motta」のハンカチへの刺繍サービスも表参道店限定で取り扱う。
店内には同社の創業三百周年を記念して制作されたオリジナル商品も並ぶ。糸井重里氏が会長を務める日本モノポリー協会監修、柿木原政広氏デザインによる「日本工芸板モノポリーZIPANGU」は5,000個限定。こちらの表参道店と、13日から17日まで東京ミッドタウン アトリウムで開催される「大日本市博覧会 東京博覧会」での先行販売となる。
海洋堂とコラボした「日本全国まめ郷土玩具蒐集」のガチャガチャ(カプセルフィギュア)も。
第八弾まで続き、ノーマルセットを集めると、47都道府県コンプリートとなる(中川政七商店 2015年9月リリース.pdf
レジ脇に置かれた、信楽の素焼きのオブジェは非売品。奈良を代表する聖獣・鹿に背に、今年の干支でもある猿がのっかっている。制作はステファニー・クエール氏(Stephanie Quayle)

プレスビューの冒頭、中川政七商店代表取締役 第十三代 中川淳氏が挨拶。店舗と2階にある東京事務所の披露と共に、新ブランド「花園樹斎(かえんじゅさい)」もデビューとなった。
花園樹斎のコンセプトは「"お持ち帰り"したい、日本の園芸」。中川政七商店がプロデュースする日本各地の工芸と、植物監修を務めるプラントハンターの西畠清順氏そら植物園がセレクトした植物をかけわせることで、現代のライフスタイルにあわせて、西洋とは価値観を異にする日本の園芸文化を今いちど見直し、季節ごとに植物を愛でるといった楽しみを味わってもらうことを目指す。ふさわしいブランド名として、江戸時代に隆盛した園芸文化を支えた、鉢物師や庭師などの職人たちを束ねていた植木商の役職名を冠した。
西畠氏が手にしているのは、中川政七商店がプロデュースする長崎県波佐見焼(製作:有限会社マルヒロの植木鉢に、西畠氏がセレクトしたカンノンチクをあわせたもの。
葉にみられる黄色い筋は、先天性のものではなく、生長の過程で葉が弱って変色した部分なのだが、西畠氏いわく、日本で培われてきた園芸センスからみれば、これらは珍品として愛でられる個性であるそうな。カンノンチクには番付(格付け)があり、横綱級ともなれば数百万円の値がつくと聞かされた時、取り囲んだプレスは総じて感嘆混じりの驚きの反応を示す。
店内の棚に並んだ梅の鉢植えも、開花した状態で売られているのが至極当然、という目でつい眺めてしまうが、西畠氏によれば、1月12日夜の披露にあわせて開花させるためには少なからずの人的労力がかかっている。
表参道店が入っているビル《表参道 ARTWORKS》は4階建てで、2階に中川政七商店の東京事務所が入居した(3,4階は別のスタジオ)。オフィスなので通常は非公開だが、この晩のプレスツアーでは見学と撮影がゆるされた。
事務所の内装は、1階と同じく、スキーマ建築計画の長坂常氏が担当。
緑地に面した東南側はデッキ付き。店舗同様に昼間は陽が燦々でかなり明るいとのこと。水野学氏がデザインした創業三百周年記念ポスターが貼られた反対側の壁は、ホワイトボード塗装となっている。
テーブルの主な素材は、長坂氏が手掛けた《ブルーボトルコーヒー 清澄白河 ロースタリー&カフェ》の内装でも見られたLSL合板。四方に脚は配さず、中央の台形部分で天板を支える。長坂氏いわく「なんとなく埴輪っぽく、かわいらしい感じを出してみた」。
各グループごと、大小5つのテーブルの表面には丸穴があけられ、西畠氏がみつくろった植物がひょろりと飛び出て、枝葉を広げる。
大きな打合せテーブルはもうひとつ、オフィスとエレベーターホールの間に、これも長坂氏がデザインした〈FLAT TABLE〉が置かれている。 事前のヒアリングでは社員のウケは今ひとつだったという色だが、納めてみればしっくりきて評判は上々とのこと。
長坂作品ではお馴染みの〈FLAT TABLE〉。天板の材はパイン材。表面に「うづくり」という加工を施してから、エポキシ樹脂を流し込んで成形する。「うづくり」による微妙な凹凸がそのまま奥行き感のある表情が浮かび上がる。
2階のエレベーターホール前の壁に掛けられたプレートは、新潟県燕市で創業二百周年を迎える玉川堂から贈られた、鎚起銅器によるもの。前述・三百周年記念商品のひとつとして、高岡市の能作を加えた3社で製作した「六角形 徳利・猪口」も50セット限定で販売、同商品にあわせた奈良の純米吟醸酒も。
三百周年記念商品は上記以外にも「新郷土玩具」なども展開。全国の取り扱いショップでの販売に先駆けて、中川政七商店 表参道店と、"工芸と遊ぶ五日間"と題して13日から東京ミッドタウン アトリウムを会場に開催される「大日本市 東京博覧会」でも先行販売される。

中川政七商店 公式サイト
www.yu-nakagawa.co.jp/




+飲食メモ。
「中川政七商店 表参道店」へのアクセスは、表参道駅からの場合、青山通りを渋谷方面へ進み、国連大学の手前、無印良品の1号店である[Found MUJI AOYAMA]の角を右折して、道なりに北上するとよい。未だかな?と不安を覚える辺りで左折すると目の前に現われる。
その手前の青山五丁目交差点に面した[KUA `AINA 青山本店] にて、プレスビュー前に軽く腹ごしらえ。昨秋のショールームイベント「MAIN」を見学した際、店頭の看板をみて以来ずっと気になっていたパンケーキを食す。
一番プレーンな「メープルホイップパンケーキ」は、食べやすいボリュームで、ドリンクとセットで消費税込み609円とリーズナボー(この界隈で同じ品をオーダーすると倍近い値段となる場合が多い)。メープルシロップ、好みの分かれるココナッツミルクはお好みで。
美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

KUA `AINA(クアアイナ)青山本店
www.kua-aina.com/shop/27.html

「大日本市博覧会」@東京ミッドタウン アトリウム

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東京ミッドタウン ガレリア アトリウムにて、中川政七商店主催による「大日本市 東京博覧会」が13日から始まった。会期は17日までの5日間。
大日本市博覧会」とは、1716年(享保元年)創業奈良の老舗である株式会社中川政七商店の創業三百周年記念事業のひとつ(同社2015年11月リリース.pdf。同社が掲げる「日本の工芸を元気にする!」というスローガンのもと、日本各地域の工芸を「買える」「学べる」「体験できる」期間限定イベント。東京会場を皮切りに、各地を巡回予定。

来場者を迎えるのは、昨年11月に同社が行なった記者会見で披露された、同社の創業三百周年を記念するオブジェ「新旧の鹿」。向かって左が「新」、右が「旧」という位置づけで、"温故知新"をテーマに、新旧の対比という図。

「新」の制作は、彫刻家の名和晃平氏がディレクターを務める「SANDWITCH(サンドイッチ)」。「旧」の鹿をスキャンしたデータをもとに、鉄骨とミクストメディアを素材に造形された。
対する「旧」の鹿の大元のモデルは、京都《細見美術館》所蔵の「金銅春日神鹿御正体」。本体は一刀彫、装飾として象牙べっ甲細工、鞍は漆芸鞍螺、中川政七商店創業以来の手績み手織り麻など、奈良の伝統工芸の技の数々が散りばめられた逸品。オブジェの脇に設置されたモニターで、制作過程のダイジェスト映像もみることができる。
新旧の鹿」の後ろにたてられている金箔の屏風は、同社が松岡正剛氏が代表を務める編集工学研究所と共に「大日本市博覧会」のために制作した「日本工芸クロニクル屏風」。制作の経緯は2か月前の記者会見、さらには場内に流れている松岡氏との対談映像(および場内配布物)にて、中川政七商店第十三代が述べているが、三百周年を迎えるにあたり、まとめた社史をパネル展示するのではなく、昔からあるもの、工芸の世界をきちんと今の時代に伝えたいと、屏風絵というかたちでまとめた。日本の工芸史をビジネスモデルという切り口で読み解く構成で、大きな変革期を八つに区切り、各時代を代表する工芸品も併せて展示している。
屏風絵は石器時代から始まり、十三代中川社長いわく「自分たちの手でつくり、自分たちで使っていた」石器(奈良県出土品)も見せたあと、一気に12世紀の平泉に飛ぶ。地方の豪族のオーダーで、漆器「秀衡椀」(上の画)などの工芸品が職人によってつくられるようになり、貿易で莫大な富を築いた奥州藤原氏が栄華を極めた時代にズーム。
さらに16世紀には、千利休という"目利き"ーー今で云うプロデューサーが登場。日用品ではなく、茶の湯のためだけに「黒楽」などの茶器がつくられ、観賞と羨望の対象に。
18世紀・江戸時代には、問屋という流通業が登場。各地の工芸品が都市で流通するようになり、「産地」という概念が生まれた。明治維新後は殖産興業がおこり、ガラス問屋に代わって官営会社が「江戸切り子」を生産するようになった。
上の画はデザイナーの奥山清行氏のプロデュースで生まれた山形鋳物。屏風絵では現代を「デザイナーモデルの時代」と位置づける。
最後の曲面は、中川政七商店が未来の工芸のビジネスモデルとして掲げる「産業観光モデル」のイメージを提示。同時に、今の世は作り手と使い手の距離が離れてしまったと暗に嘆く。再び近づけるための仕掛けとして、産業と観光を融合させた施設を開設、軌道にのれば、当地を訪れた旅行者や地元の人々が、奈良晒による麻の産着を購入し、子どもに着せ、地元の寺社に参る、そんな人々の暮らしのなかに工芸が自然なかたちで溶け込んだ未来を描く。
会場では、日本の工芸の復興にかける中川政七商店十三代と、編集工学研究所松岡所長の対談映像も上映されている。

「工芸クロニクル屏風」
監修:編集工学研究所(日本の未来を将来につなぐ研究所)
屏風絵制作:善養寺ススム
屏風製作:片岡屏風店


屏風絵を読み解くだけでも知的好奇心が満たされるが、やはり「買える工芸」も楽しみたい。
地方土産の工芸品の定番として思い浮かぶのが、会津の「赤べこ」や北海道の「木彫りの熊」だろう。「今から百年後に残す郷土玩具」をコンセプトに、江戸時代の奈良名物だった鹿張子を現代風にアレンジ、誕生したのが下の画の新郷土玩具「鹿コロコロ」。
新郷土玩具はそのほか、兵庫「麦わらこけし」(上の画、下の棚)、福岡「にわか明太だるま」などもあり。
同じく創業三百周年記念として発売される「日本工芸版モノポリー」は5,000個限定で、2月17日より発売開始。本会場および神宮前5丁目にオープンした「中川政七商店 表参道店」にて先行販売中。
鹿を模した付属品のプレイヤー駒を使うもよし、場内に特設されたガチャガチャ「日本全国まめ郷土玩具」のフィギュアを使うのもまた一興。
このほか会場内には、ブランドコンサルも手掛ける中川政七商店がプロデュースした工芸品、日本各地のパートナーブランドが集まる「大日本市」や、自社ブランドである「遊 中川」「粋更kisara」「中川政七商店」などの商品が勢揃い。
キャッシャー台の前板に貼られているのは、水野学氏がデザインした三百周年記念ポスター。
「大日本市博覧会」の展示設計は、丸の内にある「中川政七商店 東京本店」など幾つかのショップデザインを手掛けている grafが担当した。
17日で終了する「大日本市 東京博覧会」の後、5月に岩手、9月に長崎、10月に新潟、本社・本店がある奈良へは11月に巡回が決まっており、什器は分解して、各会場のキャパにあわせて再び組み立てられるように工夫されている。
棚板も可変式。
前述のオブジェ「新旧の鹿」の対面にも物販コーナーあり。プラントハンターの西畠清順氏そら植物園とコラボした新ブランド「花園樹斎(かえんじゅさい)」がデビュー。
コンセプトは「"お持ち帰り"したい、日本の園芸」。日本各地の工芸と、西畠氏が世界中を旅して集めた植物を季節に応じてとりあわせて紹介することで、江戸時代に隆盛した園芸文化を現代に再構築する。
2カ所の出入口に吊り下げられているのはエアプランツ。このほかカンノンチク、サボテンなどの多肉植物。今の時期は季節植物として梅の鉢植えも。
花園樹斎」では折々の季節感を大切にするとともに、いわゆる西洋の価値観では不遇となるが、日本古来の園芸文化では珍品とされてきた植物にもスポットをあて、植物を愛でる目、まさに温故知新といえる、ものの見方を提示する(オープン前日に開催された「中川政七商店 表参道店」のプレスビューの場で西畠氏が述べていたが、氏が生業としていることと、日本各地に埋もれてきた工芸に新たな光をあて、世に広めようとする中川政七商店の姿勢には共通点があり、目指しているところは同じ。そして生み出された工芸品、植物にはストーリーが背景にある。さらには奇しくも、女性が苗を植えている姿を象形化したのが工芸の「藝」の字であるそうな)
藍と城の鉢は、長崎の波佐見焼き。購入すると、桐の箱に入れてくれる。持ち帰りの手間や贈答品として利用してもらえるように配慮されている。
このほか軍手、新潟県燕市の銅製水差し、天然木と鉄による飾り棚もあわせて販売。
"工芸と遊ぶ五日間"と題した「大日本市 東京博覧会」は、東京ミッドタウン ガレリア アトリウムにて1月17日まで。入場無料。「体験できる工芸」として、会期中はトークイベントやワークショップも開催される(別会場カンファレンスにて、有料)

中川政七商店 公式サイト
www.yu-nakagawa.co.jp/




今回は未食の飲食メモ。
会場斜め向かいのショップ「茅乃舎(かやのや)」では、中川政七商店創業の地・奈良県産の素材を使ったすまし汁セットを、会期中に限り一日20食提供。

博覧会プレスツアー中に特製の「極みだし」を試飲。「うあ、おいっしー」と思わず声が洩れる。ごちそうさまでした。

i+(アイプラス)ブランドローンチイベント@代官山T-SITE GARDEN GALLERY

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(株)インターオフィス(株)イトーキがコラボレーションして誕生した家具ブランド「i+(アイプラス)」のブランドローンチイベントが、代官山T-SITEGARDEN GALLERY(ガーデンギャラリー)にて、2日間の会期で始まった。
ブランド概要は昨年11月に発表され、既に公式サイトもオープン。2015年グッドデザイン賞のベスト100にも選定されている(参照:イトーキ プレスリリース。本日20日より3アイテム4点が発売開始となった。

i+(アイプラス)」のデザインとディレクションを務めたのは寺田尚樹氏(インターオフィスのデザイン本部取締役本部長でもある)
「日本のオフィス空間では、せっかくお金をかけてハイセンスなオフィスファニチャーを導入しても、周辺アイテムのデザインがつり合っていない。種類はあってもどれも似たり寄ったり、選択の幅がとても狭いという現状に一石を投じ、オフィス空間をより洗練されたものにシフトさせたい」(会場にて、寺田氏談)
価格帯は従来品に比べて2倍から2.5倍と高価だが、寺田氏は「今までにない高級感とデザインで、絶対に求められているラインナップ」と自信を見せる。直径19.1mm、高品質クロームメッキ仕上げのスチールパイプを一筆書きのようにデザインした今回のアイテムは、寺田氏が考えた「金管楽器のようなファニチャー」というコピーがぴったり。ブランドに関した「i」は、協業した2社の頭文字であり、individual、identity、independent、そしてI=私など、さまざまに置き換えられる。それら「i」に新しい価値を「+」するのが「i+(アイプラス)」である。

開発から約1年という短期間で、今日から発売される第一弾は、001ホワイトボード(W1610とW860の2タイプあり)、002テレフォンスタンド、003コートスタンドの3アイテム。今後はパーティション、サイドスタックテーブル、フロアランプなどが加わる予定。
会場の左奥:インターオフィスで取り扱う海外ブランドのオフィスファニチャーを配した空間展示。Vitra社のチェアにあつらえたかのよう。それもその筈、同じ径のパイプとのこと。
受話器が取りやすいように天板の高さを設定したテレフォンスタンド。黒い樹脂製エンドキャップがついた1本の脚パイプのなかには、電話線が収納できる(上の画:ケーブルの先端がチラと出ているのが視認できるだろうか)
ホワイトボード(上の画・左側、ほぼ真横からみたところ)のパネルは1枚を下で曲げて両面使用可。足もとは左右の片側だけにキャスターが付き、反対側に用意されたパイプの把手を掴み、浮かせて押せばスムーズに動かせる。
片側の脚で固定できるのでストッパー機能はないが、高精度のボールベアリングを内臓したキャスター(なんという格好良さ!)。ローラースケートに代表されるインラインスケートで使われている車輪を採用した。寺田氏がデザインした「i+」のロゴ入り。
今回のブランドローンチ(註.新規ブランドお披露目の意)では、インターオフィスやイトーキのショールームを敢えて会場とせず、フレッシュなブランドデビューにふさわしい地を選んだ。また、前述のようなオフィス空間を想定した展示のみならず、住宅などそのほかの空間でもフレキシブルに使えるものとして捉え、アイテムの特長を生かした企画展も併せて開催。展示コラボレーターは寺田氏を除く以下の4名(敬称略)
山崎和彦(Smile Experience Design Studio/千葉工業大学デザイン科学科教授)
展示パネル代わりのホワイトボードには、出展者の最近の仕事や日頃の思考などがマジックペンで手書きされている。
安東陽子(テキスタイルデザイナー)
クロームメッキ処理のパイプのみで構成されたコートスタンドには、1本のパイプを曲げて成形したハンガー2本が付属する。安東氏はこのハンガーに、本展のために制作したワンピース、コサージュ、帽子の3点を掛けて展示。
テキスタイルの素材は異なる2点だが、それぞれが見る角度や光のあたり具合で、色が青とピンクの玉虫色に変化する。。W860のホワイトボードにサンプル掲示を含めての解説がある(上の画・奥に写っているのは、主に建築空間で安東氏が手掛けた作品に関する展示)
赤松佳珠子氏(CAt パートナー)はコートスタンドに建築作品の写真パネルを吊るした。
W1610のホワイトボードに手書きされているのは、CAt(シーラカンスアソシエイツ東京)が設計した《宇土市立宇土小学校》の平面図の一部。手前のテレフォンスタンドに設置されたプロジェクターから、同事務所が調査・作成した室内の空気対流の様子がマッピングされている。もう一枚のボードは、宮城県で進行中のプロジェクトに関する展示。
ホワイトボードにはマグネット脱着式のシンプルなペントレイが付く。出展者が手にしたであろうペンとイレーザーにロゴが入っているのは、寺田氏らしい遊びゴコロ。
岡安 泉(照明デザイナー)
右側・手前:コートハンガーの中に照明器具を取り付けた参考商品。
余談:マグネットは出展者それぞれが用意。岡安氏のは黄色いヒヨコちゃん(隣の赤松氏の《宇土小学校》の池にも貸し出されていた)
会期最終日21日19時より、寺田氏と展示コラボレーター4名によるトークイベントも開催予定。白いママのホワイトボードを使っての"板書トーク"。各氏の最新PJの状況や、今回の「i+」についても鼎談。入場、トーク聴講は共に無料で予約も不要。開場時間は11-21時。

i+(アイプラス)公式サイト
www.iplus-furniture.jp/ 




+飲食のメモ。
ガーデンギャラリー訪問の前後は、向かいの [IVY PLACE(アイビープレイス)]を利用すること、今日で4回連続(あとはカレーランチを食せばだいたいコンプリート)。ランチL.Oは16時。
サラダとパンは、ほかのスープランチサンドイッチランチにも付いてくる。
今週のパスタランチ(消費税込み¥1,500)は「真鯛、トレビスのアーリオ・オーリオ スパゲティーニ」。
シメはエスプレッソでスキッと飲み干す。
今回も美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

IVY PLACE(アイビープレイス)
www.tysons.jp/ivyplace/

中村竜治会場構成による銀座「資生堂ギャラリー」特別展

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銀座8丁目《東京銀座資生堂ビル》地下の「資生堂ギャラリー」で開催中の特別展を見学。会場構成はが担当。

同展は、2016年に資生堂のシンボル「花椿マーク」が世に出て100年の節目を迎えるにあたっての開催。同ビル、銀座花椿通りを挟んだ「SHISEIDO THE GINZA」、7丁目の《資生堂銀座ビル》でも、「BEAUTY CROSSING GINZA 銀座+ラ・モード+資生堂」と題してさまざまな展示を開催中(同社1月8日発信リリース。1階のウィンドー2面と、本展の会場構成を中村竜治建築設計事務所が担当している。

ギャラリー会場では、銀座の街を彩ってきた、過去100年間それぞれのメークやモードを、当時の商品や広告などの資料と共に紹介。中村氏が立体的にコラージュを施している。注記.場内は一部のポスターを除いて撮影およびSNS掲載可
「展示物は、透明なカバーが必要な大小様々な平面や立体であったため、カバーを展示台としても利用し、それらを積み上げながらその中に展示物を置いて行くという方法をとりました。これにより、平面も立体もいっしょくたにオーバラップしながら、上から下までを関連を持った一つのまとまりとして見ることができる立体的なコラージュとなっています。年代などによってカテゴライズされた9つある山は、ショーウィンドーやビルの連なりとして、銀座を空間的にも感じられるようになっています。」(中村竜治建築設計事務所提供テキスト)
資料の展示以外にも、3人の作家が特別出展。上の画・奥の壁の作品は、写真家の勝又公仁彦氏による「Panning od Days,3 days in 2 monthes,2015」。 会場配布物から引くと、"明治期に描かれた銀座の錦絵と同視点から現在の銀座を撮り下ろし"、"異なる3日間のイメージを一画面に重ねた三連画として構成"したもの。
1924年当時の包装紙(デザイン:資生堂意匠部 矢部 孝)や、資生堂といえば八角形の容器、という着色福原粉白粉七種(七色粉白粉)など、貴重な資料の数々が、アクリル製ケースの中に展示されている。積み重ね(コラージュ)は4個ないし3個。
黄色い地にオレンジの文字、木工用ボンドのようなフォルムの日焼け止め、懐かしい。一気にン十年前の海辺に記憶が飛んだ。
その下の白いバッグは、1964年の東京五輪で制作、化粧品を入れて選手に寄贈したもので、言われてみれば、大工道具入れに似ている。
中村竜治建築設計事務所に確認したところ、アクリルの厚さは、下から順に8mm、6mm、5mm、3mm。"コラージュ・タワー"は会場内に計9つ、ケースは34個あるのだが、同じ"箱"は2つとなく、全て異なるサイズとのこと。
「設営は、平面に展示品を置き、底のついていないアクリルの箱をその上から被せるという作業の繰り返しでした。展示品の設置は資生堂さんのご担当と恊働で進め、展示品の正面の向きが一定にならないように、段ごとに位置を変えています」(同事務所 若木さん談)
アクリルケースと設営の精度も見事だが、iPadを使った画像資料の見せ方、電源コードの処理も、中村竜治氏らしい美しさ。
母親か祖母の古い化粧鏡台あたりに潜んでいそうな化粧品を目にして、デジャブを覚える人は男女を問わず多かろう。展示の三面鏡台は昭和初期のもので、資生堂がオリジナルでつくった店頭ディプレイ用。
会場では、高いビルばかりとなった現在の中央通りとは全く景観を異にする、62年前・昭和28年の街並も、木村荘八著『銀座界隈』の別冊アルバム(1954年発行)で確認できる。資生堂ビルをはじめ、和光、木村屋、教文館、京橋のたもとの交番まで写っていて、1〜8丁目の両側のビルを眺めて行くと楽しい。
上の画では(場内撮影規定により)見切れているが、昔のキャンペーンポスターの展示も。日本流行色協会による"今年の流行色予想"は、60年になって始まった。
ロバート・モンゴメリー作品と、銀座7,8丁目界隈を撮影した勝又氏の写真作品など。
今回の記念イベントでインスパイアしているモンゴメリー「BEAUTY IS EMPHATHY 2015」は、7丁目の《資生堂銀座ビル》にて会期中、展示されている。
床に光の文字が映り込む、モンゴメリー作品とその前の"コラージュ・タワー"は、地上1階から地下のギャラリー会場に降りていく階段アプローチの途上で、眼下に最初に視界に入ってくるので、何だろうかとワクワクする。
資生堂ギャラリーでの展示は1月28日まで(月曜定休)。開廊は平日11-19時、日曜・祝日は11-18時。入場無料。

資生堂ギャラリー
www.shiseidogroup.jp/gallery/



+飲食のメモ。
館内のサロン・ド・カフェ、あるいはレストランで食すべきところなのだが、老舗つながりで、中央通りを渡った右斜め向かいのビル地階にある、長崎料理[銀座 吉宗 銀座本店]にて昼食(1F路面の[銀座カフェーパウリスタ]もかなりの老舗。前述の街並写真で往時の外観を確認し忘れたが)
ランチは単品からセットまでメニューが豊富で、迷う。長崎ちゃんぽんの並盛(消費税込¥980)を食べる気満々で入店したのだが、メニュー表を閉じた時には「茶碗蒸しと細麺皿うどん小」のセット(¥1,550)をオーダー。蒸しずしにも後ろ髪。
9種類の具材が入ったボリューミーな茶碗蒸し、美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

銀座 吉宗(よっそう)公式サイト
www.ginza-yossou.jp/

セシーズ・イシイ7 「PASAR SHINJO」オープニングイベント

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川崎市中原区内で開催されたイベント「新城 暮らしのパサール」へ。

会場は築25年の賃貸共同住宅「セシーズ・イシイ7」1階共有部分。暗く閉鎖的な空間の刷新を依頼されたブルースタジオがバリューアップ、まちの広場「PASAR SHINJO(パサール新城)」として1月24日にオープン、地元住民へのお披露イベントである。

事業主:株式会社セシーズイシイプロパティーズ
企画・設計監理:株式会社ブルースタジオ


最寄り駅はJR南武線武蔵新城。北口を出て徒歩1-2分という至近。
「新城北口はってん会」商店街を入り、路地を左に入ったところにある。
下の写真で改修前の状態がわかるが、以前は室外機が置かれ、ごみ集積所もあった一角。駅前という場所柄どうしても安易な空き缶投棄などもあって見苦しかったが、それらを敷地内の別の場所に移し、明るいアプローチを整備した。
改修前の共有部の写真6点。なお今回は2階以上の住居部分はいじっていない。
オーナーはこの地域で代々不動産業を営む石井氏(ブルースタジオのプレスリリースから引用すると、氏は"駅周辺に先代から受け継いだ18棟・370 戸の賃貸共同住宅を所有し、地元に根ざした不動産事業を展開"している。貸主である(株)南荘石井事務所と連名の事務所公式FBによれば、セシーズ・イシイシリーズのなかでも最も大きい物件がこの建物。
イベント出展中の地場野菜直売所と雑貨店の背面にあるので見えないが、共同住宅の玄関口だった部分をスケルトンの状態に戻し、物件オーナー直営のカフェ[新城テラス]が入る。この日は上の画・左隅の共有エントランスで搗かれた餅がせっせと運ばれ、あんころ餅ときなこ餅の生産場に。
改修のきっかけは、近隣にファミリー向け分譲マンションが建ち、新しい住民が街に増えてきたことがひとつ。自社物件ではないながらも、この地に長らく住んでいたオーナーの石井氏としては、街に親しんで、古い住民たちとも交流して欲しいという想いがある。だが「場所」がない。そこで、自社の《セシーズ・イシイ7》の一部を改修し、新旧の住民が交流できる、街に対して開かれた"広場"とすることに。単身者ばかりの《セシーズ・イシイ7》の住民にとっても、人と街に接する機会になればいいと、"大家さん"は願っている。
オープニングイベントにはオーナーの声掛けで、アクセサリー雑貨やフレンチ総菜など15の店が集まり、軒を並べた。地元で人気というパン教室「Baking Studio sucre a la neige(ベーキングスタジオ シュクレ・ア・ラ・ネイジュ)」のスタジオが、上の画・右奥の一角で一足早い1月18日に移転オープンしており、この日は販売も(店名は"雪のお砂糖"という意味らしいが、うっすら砂糖をまぶした焼きたてふわふわのミニ山食¥200、ごちそうさまでした)
企画・設計管理を担当したブルースタジオがつくり上げたのは、商店街から連続した路地裏のような半公共空間。
ブルースタジオが昨夏に手掛けた《ホシノタニ団地》でも、オープン時に同様のイベントが開催されているが、同社専務取締役の大島氏いわく、「僕らが本当にやりたかったのはこういうこと。ハードではなくソフト、状況をデザインすることをいつも心掛けている」。
以前は資材置き場だった北側棟の1階部分。テナント貸し出しも想定しているが、しばらくはこのままでイベント空間としてフレキシブルに使う見込み。
以前は塩ビ波板が掛けられていた空間は見晴らしよく、古びた鉄柵扉も撤去されて広々。足もとを地元の子どもたちがワークショップでつくったモザイクタイル装飾が彩る。
住民用駐輪場入口は上の画の奥に移動(通常は施錠される)

本稿の写真はどれも、来場者が居なくなった一瞬の隙をついて撮ったものだが、おじいちゃんおばあちゃんから小さな子、ベビーカーを押したファミリーまで、13時過ぎの「パサール新城」は大盛況。用意されたベンチに座るのもスキをみてようやく。11時のオープン時はもっと人いきれの状態だったそうで、イベントの浸透ぶり=オーナーの人脈の広さがうかがえる。
上記パン教室の作ではなく路面店で入るカフェのメニュー候補と思われる、ハムとチーズのフォカッチャサンド(¥300)と、コーンスープ(¥100)で腹と身体を暖める。
さらにグアテマラコーヒー(¥300)のドリップを待つ間に、
建物の北側の裏手にあるというパン屋から、出来たての特製「黒くろゴマきなこパン」(¥100)が到着。お昼ご飯抜きで行ってヨカッタ。

南荘石井事務所 / セシーズイシイ facebook
https://www.facebook.com/seses.ishii/





+飲食のメモ。
前掲・特製きなこパンの製造元へ。[OLIVE CROWN(オリーブクラウン)]のおいしいパンは、"安心安全な素材を選んで粉からつくっている"こと。
「例えばおいしい食べ物など素敵な何かにそこで出逢った時、この街にまた来てもいいかな、住んでみてもいいかな、という気になってくれるかもしれない」と、マルシェ系イベントに期待する効果を関係者が挙げていたが、さもありなん。
パンドミーとブランチショコラをテイクアウト。
美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

OLIVE CROWN(オリーブクラウン)
http://olivecrown.tokyo/
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